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近大など、卵子に精製DNA溶液を注入することで人工細胞核の構築に成功

マイナビニュース / 2024年9月13日 19時15分

画像提供:マイナビニュース

近畿大学(近大)と大阪大学(阪大)は9月12日、精子の代わりに精製したDNA溶液を生きたマウスの卵に注入することにより「人工細胞核」を構築することに成功したことを共同で発表した。

同成果は、近大 生物理工学部/大学院 生物理工学研究科の山縣一夫教授、同・米澤直央大学院生、慶應義塾大学 医学部 電子顕微鏡研究室の信藤知子技術員、東京工業大学 科学技術創成研究院の小田春佳博士研究員(研究当時)、同・木村宏教授、阪大大学院 生命機能研究科の平岡泰招へい教授、同・原口徳子特任教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、細胞生物学に関する全般を扱う学術誌「Genes to Cells」に掲載された。

細胞核の形成に関する先行研究の多くは、カエルの卵母細胞の抽出物が用いられており、細胞が生きたままの状態で核を観察できていなかったとする。それに対して研究チームは、先行研究でマウス受精卵内にDNAビーズを導入する方法で核様構造の再構築に成功。ヌクレオソーム構造や核膜・核膜孔構造を有しているほか、これまでに核構築に関わるとされる多彩な分子も通常の核と同様に存在していることを確認していた。

しかし、核と細胞質間の物質輸送能力は実現できていなかったとする。その原因として、DNAの量や長さ、DNAの注入タイミングなど、物理化学的因子のミスマッチが考えられたとする。そこで今回の研究では、細かい条件設定のしやすい精製DNA溶液を用いて検討を行うことにしたという。

マウス卵内でDNAから人工細胞核を作製するためには、卵子細胞質中にDNAを注入する必要があることから、マイクロインジェクション技術が用いられた。DNAはDNAビーズとしてではなくDNA溶液として注入し、核様構造を形成するために必要なDNAの長さ・濃度・時間の条件が検討された。その結果、少なくとも長さ48.5kbp(キロベースペア)以上で、濃度100ng/μLであれば、卵内で拡散せず、本物の核に酷似した形態を持つ核様構造になることが確認された。また、注入されたDNAの挙動はDNAの長さや濃度により異なることも判明。さらに、天然の核に酷似した核様構造を構築するためには、DNAを注入するタイミングが重要で、卵の細胞周期のうち、分裂終期を通過する条件に注入をすればよいことも解明された。

核輸送を行う核タンパク質の中に、ヌクレオソームに結合する「RCC1」がある。つまり、注入DNAが核輸送能力を獲得するためには、注入DNA上にヒストンタンパク質が集積し、ヌクレオソームの構造を形成する必要があるという。免疫染色法により確認が行われたところ、注入DNA上にヒストンタンパク質の集積が認められたとした。

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