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島津製作所と兵庫医科大、「潰瘍性大腸炎」などの病態指標の評価手法を開発

マイナビニュース / 2024年9月17日 19時36分

画像提供:マイナビニュース

兵庫医科大学と島津製作所は9月13日、「液体クロマトグラフ質量分析計」を活用し、法定色素「青色2号 インジゴカルミン」の血中濃度から、「潰瘍性大腸炎」や「過敏性腸疾患症候群」の病態の指標である「腸管粘膜透過性」を評価する手法を開発したと共同で発表した。

同成果は、兵庫医科大 消化管内科学の福井広一教授、島津製作所の共同研究チームによるもの。詳細は、9月13~14日に島津製作所本社で開催された「第49回医用マススペクトル学会」にて発表された。

潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患のことで、国内患者数は約20万人と見積もられている。また、過敏性腸疾患症候群とは、大腸や小腸に潰瘍や腫瘍などの器質的異常がないにも関わらず、下痢や便秘などの便通異常と腹痛、腹部膨満感などのおなかの症状がある疾患のことで、国内潜在患者数は人口の約10%の1200万人といわれている。

どちらの疾患も症状が重くなると、腹痛や頻便により日常生活に支障を来してしまう、厄介な疾患であるが、原因は明確ではなく、腸管バリア機能障害(細菌や毒素などの異物が体内に入ってしまうようになる状態)による腸管粘膜透過性の高まりで生じる「腸もれ」が一因と考えられている。

腸もれによって消化中の食品抗原や腸内細菌およびその生成物が体内に侵入して発症すると推測されているものの、生きた人体における粘膜透過性の定量的な評価手法はこれまでなく、疾患機構と病態解明の研究はあまり進展していなかったという。そうした中、ほぼ唯一の粘膜透過性評価法としてこれまで用いられてきたのが、糖類の内服後に尿に排泄される濃度を測定して粘膜透過性を評価する「ラクツロース・マンニトール法」。しかし、同方法では1日分の蓄尿が必要で、被験者の負担が大きく、消化管運動や食事、腎機能が測定値に影響を及ぼすことなどが問題点として挙げられており、課題の多い方法だったため、新たな評価法が求められていた。

そこで研究チームは今回、内視鏡検査で用いられたインジゴカルミンが検査後、尿中に排出されるという現象に着目し、この色素剤を用いた粘膜透過性評価法を検討することにしたという。

検査でインジゴカルミン散布後に、その血中濃度を潰瘍性大腸炎患者11名と健常者5名について、病態との関連が評価された。その結果、両グループで濃度に有意な差が見られ、同手法の有用性が示唆されたとする。なお、インジゴカルミンの血中濃度測定には、島津製作所が開発した、移動相が液体である液体クロマトグラフと質量分析計を接続した分析装置である液体クロマトグラフ質量分析計が用いられたとした。

従来の潰瘍性大腸炎や過敏性腸疾患症候群の治療では、薬の投与後の自覚症状で治療効果が計られてきた。新手法が実用化されると、患者の負担が抑えられる効率的な治療につながる可能性があるという。兵庫医科大と島津製作所は今後も、今回の手法の臨床研究を継続し、臨床的意義を確立させるとする。さらに両者は今後、今回の手法の臨床的エビデンスの取得を進め、創薬研究を支援する研究用機器の開発や臨床検査に使用できる医療機器の開発を目指すとしている。
(波留久泉)

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