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阪大、塗るだけで高効率スピン偏極電流を発生させる半導体高分子を開発

マイナビニュース / 2024年9月19日 6時40分

画像提供:マイナビニュース

大阪大学(阪大)は9月13日、キラルな半導体高分子「poly-(S,S)-ITD」および「poly-(R,R)-IDT」を開発し、「不斉誘起スピン偏極(CISS)効果」により電流中の電子のスピンの向きを、キラルな半導体高分子の中では最高クラスの値となる70%程度の効率(スピン偏極率)で同方向にそろえた「スピン偏極電流」を発生させる、「スピンフィルタ」としての性質を持つことを見出したと発表した。

同成果は、阪大大学院 工学研究科の大学院生のLi Shuang大学院生、同・石割文崇講師、同・佐伯昭紀教授、東京工業大学 理学院 化学系 谷口耕治 教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英国王立化学会が刊行する化学全般を扱う学術誌「Chemical Communications」に掲載された。

電子の磁石としての性質を示すスピン(自転)には向きがあり、通常の電流ではその向き(=磁石の向き)はランダムである。電子スピンの向きがそろった電流はスピン偏極電流と呼ばれ、そうでないスピン非偏極電流では実現できない特殊な性質や機能を有する。このスピン偏極電流はキラルな物理量であるため、次世代3Dディスプレイの発光素子として期待されている、左巻きと右巻きがある円偏光を発生させる円偏光有機発光ダイオードの開発などにも利用可能。さらに、キラルな分子の片方を選択的に合成する「不斉合成」にも利用可能ではないかともいわれている。

これまでの常識では、スピン偏極電流の発生には通常、レアメタルを含む強磁性体や電磁石などを用いて発生させる外部磁場が不可欠と考えられてきた。しかし近年の研究により、ホモキラルな分子や物質に、電子スピンの向きがランダムな電流を通過させると、電流の電子スピンの向きがそろうという、CISS効果が確認された。同効果は、希少元素を一切含まない有機分子を単純に回転塗布(物質を水や有機溶媒に溶解させ、その溶液を回転する基板の上に垂らすことで均一な膜を成膜する手法で、スピンコートとも)しただけの有機薄膜などにおいても観測されるため、簡便で新しいスピン偏極電流の発生方法として期待されている。

このような塗布によりCISS効果を示す物質として、固体表面上で安定な薄膜膜を形成することができるホモキラルな半導体性の「π共役高分子」が大きな可能性を有しているという。しかし、キラルな側鎖を有するπ共役高分子のCISS効果について、これまで、単純な回転塗布による薄膜はCISS効果をほとんど示さないことが報告されていた。例外的な報告として、2020年に金沢大学や名古屋大学の研究チームが、片方巻きの螺旋構造を高分子主鎖に持ち、その片末端にチオール基という金属表面に固定化可能な官能基を導入した「ポリアセチレン類」を金表面上に化学的に固定化することで、55%というスピン偏極率を達成していた。そこで研究チームは今回、高い電荷輸送特性を示す「インダセノジチオフェン(IDT)骨格」自体にキラリティを導入した「二面性キラルIDT骨格」と、それを用いたキラルな半導体高分子を開発することにしたという。

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