農研機構など、リンゴの蜜の入りやすさを予測するDNAマーカーの開発に成功
マイナビニュース / 2024年9月20日 12時55分
続いて、デリシャスに由来するMdSWEET12a(以後、「MdSWEET12a-D」と表記)が蜜入りを誘導する遺伝子であると考えられた推定されたため、それを検出するDNAマーカーが開発された。そして、MdSWEET12a-Dの有無と蜜入りの関係について、158品種・系統を用いての調査が行われた。その結果、MdSWEET12a-Dを持つと判定された36個体のうちの32個体(89%)は、岩手県盛岡市での調査期間中(平均8年間)に基準以上の蜜が観察され、持たないと判定された122個体のうち94個体(77%)は基準に達する蜜が観察されなかったとした。このDNAマーカーにより、デリシャスから蜜入りの特性を受け継いだ個体を一定の精度で識別できることが考えられるとした。
今回の研究成果により、今後、幼苗段階で、日持ち性など、さまざまなDNAマーカーと併用して育種実生を早期選抜することで、収穫後早期の消費に適した蜜の入りやすい品種や長期保存に適した蜜の入らない品種など、リンゴの周年供給の拡大に資する品種が、効率的に開発できるようになるとする。
また候補遺伝子の詳細な解析により、蜜入りのメカニズムをさらに詳しく解明することで、栽培環境に左右されず、安定的に蜜が入る品種を計画的に作出できる可能性もあるという。一方、リンゴと同じバラ科果樹であるニホンナシやモモにおいては、果実の蜜入りは「蜜症」と呼ばれ、果実品質を低下させる生理障害として生産現場で問題視されている。特にニホンナシの蜜症は、ソルビトール蓄積に誘発されるリンゴの蜜入りと類似の生理障害と考えられており、「豊水」など、発生しやすい品種があることもわかっているが、遺伝的な原因は不明だった。今回の研究で得られた情報をもとに、蜜入りのメカニズムを解明することで、これらの蜜症の解決にもつながることが期待されるとしている。
(波留久泉)
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