フィアット「600e」に試乗! EVとしての完成度は? 走りに個性は?
マイナビニュース / 2024年9月25日 17時0分
走行モードはエコ/ノーマル/スポーツの3種類。どのモードを選んでも、街乗りなどでゆったり走行する際にはメーター内に「ECO」という表示が出て、省燃費運転になっていることを教えてくれる。
高速道路を含め、日常的にはエコモードでの走行で不足はないだろう。スポーツモードを選ぶと発進などで出足の加速がより強くなるが、不用意にアクセルペダルを踏み込むと、やや飛び出し加減の発進になる。ノーマルモードはその中間的な位置づけだが、エコモードで不足がないので、あえて選ぶ理由は見つけにくい。
走りはいたって快適。シフトスイッチの「D」と同じボタンで切り替えられる「B」にすると、EVならではの回生を利用した減速感覚を積極的に利用できる。停止まではできないのでワンペダル操作とまではいえないが、速度調節を含め、信号で停止する直前までアクセルペダルの踏み込みや戻し加減で運転できる。これはEVならではの利点だ。減速時にバッテリーを充電できるだけでなく、ペダルの踏み替え回数を減らして楽に運転できるようになる。一方、Dのままで運転すればエンジン搭載のオートマチック車と変わりなく走らせられる。
当然ながら走行中は静粛性が高い。高速道路の合流などでは、頑張らなくても流れに乗れる加速感があって安心感が高い。このあたりもEVならではだ。
個性的な走りは楽しめる?
一方で、走りに独自性があるかと言われると、ちょっと答えるのが難しい。500eは走って楽しいEVだった。さすがは500、エンジン車でもEVでもチンクエチェントらしい愉快な走りだなと感じた覚えがある。そんな感覚的独自性が、600eではあまり伝わってこなかった。
もちろん、何かに不足があったわけでも、不具合があったわけでもない。ただ、あえて600eを選びたくなる個性、主張を走行感覚からは感じにくかったのだ。
EVとしての仕上がりに問題はない。総電力量54kWhのバッテリーを搭載しており、一充電走行距離は493km(WLTCモード)と十分だ。「CHAdeMO」規格の急速充電に対応しているので、日本国内での利用にも懸念はない。
いわゆるBセグメントのクロスオーバー車を選ぶなかで、600eはエンジン車から乗り換えても不安材料の少ないEVに仕上がっている。オシャレなEVを所有する喜びを含めて、EV初心者にとっても価値ある存在だといえるだろう。
御堀直嗣 みほりなおつぐ 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。 この著者の記事一覧はこちら
(御堀直嗣)
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