XRISM、超新星残骸と超大質量ブラックホールについての2つの成果を発表
マイナビニュース / 2024年9月24日 20時32分
一般的に明るく輝くSMBHの周囲には、塵に満ちた領域の「分子トーラス」(より内側に位置する降着円盤とはまた別)が存在している。分子トーラスを含め、SMBHの周辺物質は、円盤状の構造をなしてSMBHの重力圏内を公転する。この円盤を横方向(実際には斜め上方向)から見ると、円盤の片側は常にXRISMに向かって近づき、反対側は常に遠ざかるように運動するので、それらのドップラー効果の重ね合わせによって、観測される特性X線の幅が広くなる。またSMBHの近くの(公転半径が小さい)物質ほど公転速度が大きくなることから、同速度から円盤の公転半径を求めることも可能だ。
この原理を利用して、NGC4151のSMBHの周辺構造が調べられた結果、検出された鉄の特性X線には、少なくとも3つの構造体からの放射が寄与することが突き止められた。そのうち最も幅の狭い成分が、分子トーラスの内縁部に対応し、その公転半径が約0.1光年であることが判明。また、分子トーラスよりもさらに内側には、約0.01光年(=約630天文単位)の内縁半径を持つ広輝線領域と、SMBH近傍まで続く降着円盤が存在することも確認できたとした。
分子トーラスなどの構造体の形成メカニズムは未解明だが、今回の観測により、そのメカニズムやSMBHの成長過程を知るための手がかりが得られたという。今後、XRISMによるさまざまな銀河の観測によって、SMBHが銀河全体の成長に与える影響も詳しく理解できることが期待されるとしている。
なおXRISM Collaborationでは、PV期に40天体の観測を実施。その観測成果には多くの新しい科学的な知見が含まれており、順次、成果を公表すべく準備を進めているとした。また世界中から公募した観測提案から、予備の観測提案も含めて104件を採択し、9月上旬から約1年をかけてそれらの天体を観測する予定としている。
(波留久泉)
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