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筑波大など、睡眠の量と質を一定に制御するための仕組みを発見

マイナビニュース / 2024年10月1日 6時25分

SYNCit-Kは、化学的誘導によるタンパク質の二量体化を応用したもので、酵素「Karilin7」をスパインに集積させることで、シナプス増強・スパイン増大を引き起こす。まずはシナプス結合の強度の影響を調べるため、SYNCit-Kをマウス個体に導入し、前頭葉の興奮性神経細胞のシナプスが増強させられた。すると睡眠の量が増え、睡眠の深さを示す脳波である「デルタパワー」(ノンレム睡眠中の脳波で見られる1~4Hzのゆっくりした脳波であるデルタ波の強度のこと)が増強されることが見出された。同値が高いほど、脳がしっかりと休んでいること(深い睡眠)を意味する。

また、増強されたシナプス強度が、その後の睡眠によって元に戻ることが確認された。さらに、シナプス増強に必須な酵素「CaMKII」を阻害すると、断眠によるデルタパワーの上昇が消失したという。

そして、大脳皮質の神経細胞集団の活動を記述する数理モデル「EINモデル」が開発され、シナプス強度の変化が神経細胞集団の活動のリズムに与える影響が検討された。その結果、シナプス結合を強めると神経細胞が睡眠様の発火パターンを示し、脳波のデルタパワーが上昇することが明らかにされた。これらの予測は、培養神経細胞やマウスの実験結果とも一致したとする。

今回の研究成果は、シナプス強度が睡眠の恒常性調節において重要な役割を果たしていることを明確に示しており、同強度を標的として睡眠の質を制御することで、睡眠障害や不眠症などの治療薬開発の新たなアプローチとなる可能性があるという。さらに、治療薬にとどまらず、ブレインマシーンインタフェースといった、睡眠の質を向上させるための新しい技術開発や、個人ごとの睡眠パターンに基づいた個別化医療の進展にもつながることが考えられるとした。さらに、今回の研究で開発されたSYNCit-Kのような分子ツールやEINモデルなどの数理モデルの応用を拡張することで、より詳細な脳機能解明や、睡眠の計算論の理解につながることも期待されるとしている。
(波留久泉)



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