産総研など、水素とCO2から水素キャリアのギ酸を直接合成する技術を開発
マイナビニュース / 2024年10月1日 6時51分
産業技術総合研究所(産総研)と筑波大学は9月27日、二酸化炭素(CO2)と水素から、水素キャリアとして注目されている「ギ酸」を高効率で直接合成する技術を開発したと共同で発表した。
同成果は、産総研 触媒化学融合研究センターの川波肇上級主任研究員、筑波大大学院 数理物質科学研究群 化学学位プログラムの大野聖海大学院生らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行する有機化学と無機化学に関する全般を扱う学術誌「Organometallics」に掲載された。
水素は常温・常圧下では気体であるため、より貯蔵・運搬しやすい液体の水素キャリアの開発が進められている。現在、アンモニアなども水素キャリアとして研究開発が進められているが、安定な有機液体であり、樹脂容器などを使って室温で安全に貯蔵・運搬が可能であることから、化学式HCO2Hで表されるギ酸も注目されている(日本においてギ酸は、水溶液中で90%未満の場合は、毒物および劇物取締法に規定される劇物に該当しない。また、水溶液中のギ酸が78%未満では、消防法に規定される危険物に該当しない)。
しかしギ酸は、それを脱水素反応(脱炭酸反応)により分解して水素を製造する際に、液化CO2も副生されてしまうことが大きな課題だった。ただし、その液化CO2を回収してギ酸の合成に利用できれば、CO2の排出を防ぐことが可能だとする。ギ酸は、工業的には一酸化炭素とメタノールから製造される「ギ酸塩」を酸性にすることで生成されるが、研究室レベルにおいては、CO2と水素からギ酸塩を合成する技術がすでに多数報告されている。しかし、ギ酸塩では水素製造には直接利用できないため、ギ酸に変換する際にコストや手間がかかることが次の課題となっていた。
そうした中、研究チームはギ酸を水素キャリアとして活用できるシステムを構築するため、圧縮機を使わない高圧水素連続供給法や、フロー式によるギ酸からの連続発電システムなど、ギ酸から水素を製造・利用するための技術の研究開発を進めてきた。今回の研究では、水素とCO2から直接ギ酸を合成する技術を開発することにしたという。
ギ酸から水素1kgを取り出すと、理論上22kgのCO2が副生される。つまり、ギ酸を水素キャリアとして無駄なく利用するには、水素だけでなく、CO2を確実に回収して利用する技術も必要。研究チームでは過去の研究により、ギ酸から得られた水素とCO2を分離し、高圧水素と液化CO2として回収する技術を開発済み。そこで、この回収した純度の高い液化CO2を排出せずに水素と共に利用し、ギ酸を直接合成する技術の開発が進められた。
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