1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

広島大、ダークマターを観測するための「遠方誘導崩壊反射法」を発案

マイナビニュース / 2024年10月2日 6時32分

問題は、DMが観測者に対し、どの程度静止した状況を実現しているかとなるが、DMの速度上限は、天の川銀河に拘束されていることから光速の1/1000未満と見積もられるという。地球の重力はDMに対しては重力レンズとして働き、秒速220kmの入射速度を想定すると、その焦点距離は地球中心から約100万km程度となる。その密度凝縮の効果は、焦点位置では10億倍程度かつ、おおよそ100万kmの距離にわたって少なくとも1000万倍程度の凝縮効果が維持されるという。例えば地球表面を頭皮に見立てると、DMの毛髪の様な構造が現れることとなり、もし観測衛星を毛根に置き、誘導電磁波を毛先に向けて打ち出した場合、DM崩壊からの信号収量は密度増大に比例し、毛髪長の4乗に比例することとなり、光子とDMの結合が重力結合並みに弱い場合ですら感度を持てる超高感度探索が原理的には実現できるとする。

ただし実際にはDMは四方八方から地球に入射するため、あまり密度増大は期待できないという。それに対して、最近見つかった天の川銀河に重力的に捕捉された、白鳥座の方向にある太陽質量の100億倍程度の矮小楕円銀河から、太陽系のある方向に向かって星々が天の川銀河に流れ込んできている現象である「白鳥座S1ストリーム」のような遠方のDM源がある場合には、DMは地球レンズにほぼ平行入射するため毛髪形成が起こるとする。この場合、たとえ伝播軸方向にDMがさまざまな速度を持っていたとしても、衛星を姿勢制御して毛髪方向に向けることができれば、常に毛髪全体を光の網で捉えられることになるという。これは、遠方からのDMストリームに対しても同様に、DM源と地球レンズの中心を結ぶ線上に毛髪が「必ず」生じていることになるとする。

これらを踏まえると、DMを豊富に含む遠方銀河に対して、どの方向から飛来するかによらず、地球自体が全天的な望遠鏡レンズとして働くことが期待できることとなり、これが惑星重力レンズDM望遠鏡構想となり、今回の研究はこの同構想を実現するための礎となると研究チームでは説明している。

なお、研究チームによれば、これまで地球や木星などの惑星により、DMの毛髪構造が現れることまでは予言されていたが、毛髪を検知する具体的な方法論は提唱されていなかったとのことで、今回の研究成果は、新たな観測手法の導入により、惑星重力レンズ効果によるDM観測という新たな天文学構想を展開する可能性を切り拓くものとなるとしている。
(波留久泉)



この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください