「バリオン音響振動」には未知のピークシフトが存在する、阪大などが宇宙論的シミュレーションから発見
マイナビニュース / 2024年10月7日 13時42分
研究チームによると、宇宙論的な大きな体積をそれぞれカバーする1000個の高速シミュレーションが実行され、それを平均化して統計的誤差を抑えたことで、中性水素分布からBAOのピーク位置のシフトが検出されたという。これは線形理論の計算結果に対する微小(数%)な負のシフトで、ライマンアルファの森を生じるガス雲が、銀河間空間の比較的密度が低い領域に存在することと関連しているという。また、今回のBAOシフトの検出については研究チームでは、「ボイド」(宇宙の大規模構造における銀河や銀河団が少ない、もしくはほぼ存在しないような空洞の宙域)に関連した先行研究における知見に基づいたものとしている。
BAOは宇宙論にとって基礎的な測定であり、バイアスのない測定を行うためには、潜在的な系統的効果を理解し、考慮することが不可欠とされる。そのため、BAOの理論的理解を深めることは、大規模銀河サーベイのデータを精確に解析するために重要とされるが、これまでライマンアルファの森におけるBAOは、この微妙な効果を考慮せずに解析されてきたという。しかし観測データの精度が上がったことで、現在はこの効果をより正確に扱う必要が出てきたと研究チームでは説明しており、今回の成果によって、今後はさらに精確な宇宙論パラメータを測定することが可能になるとしている。
なお、研究チームでは今後、今回発見したBAOシフトをさまざまなシナリオのもとでさらに特徴づけ、BAOからシフトを除去し、BAOピークの幅を縮める枠組みを開発する予定だとするほか、現在は全天をカバーする何百もの大規模なライマンアルファの森の模擬カタログを作成しているという。これらの新たに同定された効果を組み込んだ模擬カタログは、次世代の大規模観測プロジェクトの標準となることが期待されるとしているほか、今回の成果により、宇宙の大規模構造の進化に関する理解が深まり、ダークマターやダークエネルギーなどに関する宇宙論パラメータをより精確に導出することが可能になるとしている。
(波留久泉)
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