原爆投下の搭乗員と被爆者、双方の苦悩から発信する非戦のメッセージ 証言者減少の中で「伝えていく」広島テレビの使命感
マイナビニュース / 2024年10月13日 6時0分
○「いったい、何人の日本人を殺したのだろう?」
搭乗員の遺族へのインタビューなど、アメリカでの現地取材は日本テレビ系列が協力して、NNNワシントン支局の記者が担当。その際に残された資料があるかを聞いてみると、地元の博物館に寄贈されていることが判明し、そこで今回放送する証言音声の一つを発掘した。
提供してくれたのは、「Jewish Museum of Maryland(メリーランド州ユダヤ人博物館)」。ここに、広島に原爆を投下した搭乗員の音声が残されているなど知る由もなかったが、取材を重ねてたどり着くことができたのだ。
発掘した音声や手記から搭乗員の印象に残る言葉は、副操縦士のロバート・ルイスさんがつづった「いったい、何人の日本人を殺したのだろう? 私たちは何てことをしたのだろうか」「私が100歳まで生きたとしても、この数分間が頭から消えることはないだろう」という苦悩。
一方、息子に対して「後悔していない、それはやるべき任務だった」と話していたレーダー担当のジェイコブ・ビーザーさんも、戦後に被爆者の女性と対面した後、「平和を願う世界の人々と心を一つにしよう。これが、広島と長崎で学んだことだ」と記しており、渡邊Dは「絶対に消えない傷や葛藤が彼の中にも深く残っていたことを知って、すごく心に響きました」と受け止めた。
●搭乗員を憎んで生きてきた被爆者の変化
“キノコ雲の上”にいたエノラ・ゲイの搭乗員たちとともに、今回のドキュメンタリーで主人公の一人として登場するのが、“キノコ雲の下”にいた近藤紘子さん(79)。生後8か月で被爆した彼女は、悲惨な光景を親から聞き、搭乗員を憎んで生きてきたが、10歳の時にアメリカの番組でロバート・ルイスさんと対面し、涙を流した彼の姿に「憎むのはこの人ではない。戦争そのものだ」と考えが変わった人物だ。
番組では、近藤さんが留学生らに、投下の惨状とその後の家族の物語を伝える姿を紹介しているが、渡邊Dは「大学の進学からしばらくアメリカで生活されていたというのもあって、ものすごくオープンマインドな方なんです。誰にも壁を作らず分け隔てなく接してくれる人で、私も初対面で昔からの知り合いみたいな雰囲気で驚きました」と印象を語る。
広島の平和記念公園を歩いていると、すれ違う外国人観光客に積極的に英語でコミュニケーションを取っており、「急に話しかけるので、カメラを回すのが間に合わないときもあって、本当にすごい人だと思いました」と、“語り継ぐ”バイタリティを実感した。
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