MRAM活用で従来比電力効率10倍/起動時間1/10以下を実現するエッジAI半導体技術、NEDOなどが開発
マイナビニュース / 2024年10月15日 16時44分
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と東北大学、アイシンの3者は10月11日、大容量MRAMを搭載したエッジ領域向け「CMOS/スピントロニクス融合AI半導体」として、アプリケーションプロセッサなど周辺IPまで統合した実証チップを開発したこと、ならびにシステム動作シミュレーションを用いて、従来比で10倍以上となる電力効率と、10分の1以下となる起動時間の改善効果を確認したことを発表した。
同成果は、東北大 電気通信研究所(RIEC)の羽生貴弘所長/教授、同大 国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES)の遠藤哲郎センター長/教授、同・池田正二教授、同・吉川浩教授、RIECの夏井雅典 准教授らと、アイシンの共同研究チームによるもの。今回の成果は、10月15~18日に幕張メッセで開催されているデジタルイノベーションの総合展「CEATEC 2024」のNEDOブースにて展示される。
エッジ領域での情報処理が求められているが、クラウド領域とは異なり、情報処理に用いることのできる電力量や、サイズなど、利用環境におけるさまざまな制約があるため、それらに適したデバイスの実現が望まれている。
そのような状況を受けてNEDOが実施しているのが、CMOS/スピントロニクス融合技術によるAI処理半導体の設計効率化と実証、およびその応用技術に関する研究開発を目的とした「省エネAI半導体及びシステムに関する技術開発事業」であり、今回の取り組みはその一環として、東北大がCMOS/スピントロニクス融合技術を今後のエッジ向けAI半導体の基盤となる内部メモリとして有効活用すべく、MRAMを用いた自動設計環境の構築とそれに基づく「AIアクセラレータ」の開発を担当。一方のアイシンは、アプリケーションプロセッサほか、周辺IPを統合した実証チップのシステム設計を担当し、この2者の共同研究により、その実証チップの開発が進められた。
現在、小~大規模の多くのAIシステムでは、CPUを内蔵した半導体が活用されているが、そのような半導体の多くが起動用の外付けFLASHメモリ、外付けメモリ(DRAM)および内蔵メモリ(SRAM)を備える構成を標準的なものとしており、演算回路とメモリが離れた配置の「ファーメモリ・コンピューティング構造」となっていると言える。この構成の場合、FLASHメモリに格納されたデータやSRAMやDRAMに一度コピーする必要があり、小規模AIエッジシステムであっても、起動までに相応の時間がかかってしまうという課題がある。
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