1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

異なる官能基を有する半導体ポリマーで有機薄膜太陽電池のエネルギー変換効率17.4%を達成、広島大

マイナビニュース / 2024年10月18日 17時0分

画像提供:マイナビニュース

広島大学と京都大学(京大)は10月17日、材料合成の最終段階で官能基を導入する手法「Late-stage官能基化」を用いることで、効率的に異なる官能基を有する半導体ポリマーを開発することに成功。そのポリマーを「有機薄膜太陽電池」(OPV)に適用することでエネルギー変換効率を17.4%まで向上させることに成功したと発表した。

同成果は、広島大大学院 先進理工系科学研究科の尾坂格教授、同・斎藤慎彦助教(研究当時)、同・三木江翼助教、同・山中滉大大学院生、岩崎洋斗大学院生、京大大学院 工学研究科の大北英生教授、同・佐藤友揮大学院生らの研究チームによるもの。詳細は、独化学会の刊行する機関学術誌の国際版「Angewandte Chemie International Edition」に掲載された。

OPVは、塗布によりプラスチック基板上に製造でき、軽量でフレキシブルなことから建物の壁や窓、テントやビニールハウスなどにも設置可能として期待されている。同様の特徴を有するペロブスカイト太陽電池のように鉛などの重金属を必要とせず、環境に優しい点も特徴とされている。

そのOPVのエネルギー変換効率の向上のためには、電圧損失が大きいことを抑制する必要があり、そのためには材料である有機半導体のエネルギー準位を精密に制御することが重要とされ、母体となる化学構造(母骨格)の探索に加え、母骨格に置換する官能基を最適化する必要があったという。この実現には、母骨格に多様な官能基を導入した誘導体を合成してその特性をスクリーニングする必要があるが、有機半導体は複雑な化学構造を持つため、合成に多大な時間と労力を要することが開発のネックとなっていたとする。

そこで研究チームは今回、1つの合成中間体に対して種々の官能基を導入することで誘導体を効率的に合成することが可能となり、結果として材料開発を加速させられることから、Late-stage官能基化に着目することにしたという。同手法では、母骨格が複雑な分子ほど、そのメリットが大きくなるとするほか、その後の工程で反応してしまうことから合成の初期段階では導入が困難だった官能基も使用できるようになることも期待されたという。

具体的には、広島大の研究チームが以前に開発した「チエノベンゾビスチアゾール」(TBTz)を母骨格とする半導体ポリマーの誘導体の開発において、Late-stage官能基化が適用され、新たな合成ルートが考案された。OPVの変換効率向上には、半導体ポリマーの「HOMO(最高被占軌道)準位」を低下させて電圧損失を抑制することが鍵の1つとされているため、電子求引性を示すエステル基とアシル基が導入されることになった。従来のTBTzの合成法では、官能基を初期段階で導入した後、TBTzの構造を形成するという手法であったため、異なる官能基を導入する場合、一から合成をやり直す必要があったという。また合成の途中段階で、エステル基やアシル基と反応性がある試薬を用いていたため、これらの官能基導入は困難だったという。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください