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吉川明日論の半導体放談 第316回 前代未聞、x86命令セットで協業するAMDとIntel

マイナビニュース / 2024年10月18日 18時28分

AMD/Intelの両社マイクロプロセッサーというハード製品では、今まで通り異なったマイクロアーキテクチャーで独自製品を開発し熾烈な技術競争を継続する。
命令セットの差別化で熾烈な競争を続けた両社

かつて両社は命令セットの差別化でも競争を繰り広げた。Intelは第5世代プロセッサー“Pentium”のバージョンアップでMMX拡張命令を追加した。56個からなる拡張命令には当時拡大しつつあったマルチメディア環境でのPC性能向上を狙ったSIMD(Single Instruction Multiple Data)型拡張命令が含まれていた。IntelはAMDに対し「MMX拡張命令の使用権利はなし」という立場をとり、AMDを相手取って訴訟戦略に出たが、AMDは浮動小数点演算も扱えるSIMD拡張命令セット“3DNow!”をK6-2プロセッサに実装しこれに対抗した。

また、Intelは企業系システムへの進出を本格化させるために32ビットのx86命令セットとはまったく異なる64ビット・マイクロプロセッサーの命令セットアーキテクチャー“IA-64(Intel Architecture 64)”を実装したItaniumプロセッサー・ファミリーを推進し、AMDの同分野への進出を阻もうとしたが、AMDは従来の32ビットベースのx86命令セットに64ビットの拡張を施したAMD64を開発し、K8コアのOpteronプロセッサーに実装し、これに対抗した。

HPと協業して独自の64ビットコンピューティングを推進しようとしたIntelだが、32ビットのソフトウェア資産を重要視した業界はAMD64を支持し、結局IntelはAMD64に対応せざるを得なくなるという経緯があった。

多様化するマイクロプロセッサー市場での変化

AMD/Intel両社の今回の動きの背景にあるのが、多様化する市場の状況である。多くの命令セット・アーキテクチャーが生まれては消えていった歴史の中で、x86をベースとしたマイクロプロセッサー製品群は絶えず進化を続け、PCやサーバーといった現代の情報社会インフラの基礎を支えている。AMDとIntelの熾烈な競争の結果生まれた付加価値の高い技術がこれを裏付けてきたと言える。しかし、進化し続ける現代のコンピューティングはx86以外の命令セットによる技術基盤の拡大も加速している。省電力化が要求される携帯電話のプロセッサーとして進化を続けたArmは、マルチコア化で性能を上げながらサーバー市場にも食い込んできている。

オープン・アーキテクチャーとしての長い歴史を受け継ぐRISC-Vも、AI時代のプロセッサーの中心技術として採用実績が増えてきている。

市場の要求に常に応えていく柔軟さが各アーキテクチャーの未来を決定する事は明らかなようだ。

吉川明日論 よしかわあすろん 1956年生まれ。いくつかの仕事を経た後、1986年AMD(Advanced Micro Devices)日本支社入社。マーケティング、営業の仕事を経験。AMDでの経験は24年。その後も半導体業界で勤務したが、2016年に還暦を機に引退を決意し、一線から退いた。 この著者の記事一覧はこちら
(吉川明日論)



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