1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. IT
  4. IT総合

固体酸化物燃料電池の固体電解質の空間電荷層の直接観察、東大が成功

マイナビニュース / 2024年10月22日 14時55分

「原子分解能HAADF-STEM法」によるYSZ粒界の観察と、「STEMエネルギー分散型X線分光法」によるイットリウム濃度の分析の結果、結晶の方位が異なると粒界面が異なることになり、それに伴ってイットリウム濃度が異なることが確認されたほか、tDPC法による水平方向電場観察からは、粒界から湧き出る電場が観察されたという。解析の結果、この湧き出る電場では結晶粒界の中央部が正に帯電していること、中央部周辺の空間電荷層内に負の電荷が存在していることが判明し、電場が結晶粒界の種類ごとに大きく異なり、イットリウムが多く高濃度化している2つの粒界において、空間電荷層が存在していることが確かめられたという。

一方、高濃度化していない結晶粒界では空間電荷層も小さいことも明らかにされた。結晶粒界周辺の空間電荷層の負の電荷は、イオン伝導キャリアである酸素空孔が結晶粒界の中央部の正電荷に反発し、空乏化した結果であると考えられるとしているほか、逆にジルコニウムサイトに置換したイットリウムは負に帯電しているため、結晶粒界の中央部の正電荷に引き寄せられ、結晶粒界で高濃度化したことが考えられるとしている。酸素空孔が空乏化した結晶粒界においては、伝導キャリアが不足することから、酸素イオン伝導性が低下する要因になることが推測されると研究チームでは説明している。

なお、研究チームでは今回の研究から、まったく空間電荷層のない結晶粒界が発見され、こうした結晶粒界を優先的に材料中に形成することで、イオン伝導体の性能向上につながることが考えられるとしており、今回の成果が電池材料のイオン伝導性の向上に向けた新たな制御指針の構築につながることが期待できるとしている。

また、結晶粒界の空間電荷層は、YSZに限らず、リチウムイオン電池の材料など、他のイオン伝導体でも伝導特性に影響を与えることが考えられているとのことで、今回の研究成果は、さまざまな電池材料の特性の発現機構を理解する上で、重要なブレークスルーになる可能性があるともしている。
(波留久泉)



この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください