出光、全固体電池の材料製造装置を大型化 ’27～28年実用化めざす

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出光興産は、2027～28年の実用化をめざして開発中の「全固体リチウムイオン二次電池」(全固体電池)の材料となる、固体電解質の大型パイロット装置の基本設計を10月に開始したと同月28日に発表。同社の千葉事業所敷地内に建設予定で、製造した材料は今後、トヨタ自動車の電気自動車(EV)で使われる。

出光では「EVの進化や資源循環型社会の構築に寄与する」として、全固体電池の必須材料である固体電解質の開発を進めている。これまで千葉県で小型実証設備として2つのプラントを稼働させ、量産技術の開発およびサンプル供給を実施してきており、小型実証設備から大型パイロット装置へと段階的に製造装置をスケールアップして事業化へつなげる計画だ。

今回、基本設計を開始した大型パイロット装置装置の生産能力は年間数百トンを予定しており、世界でもトップクラスの生産規模になるという。最終投資決定(FID)は2025年中を見込み、完工は2027年をめざす。

量産設備は同社千葉事業所(千葉・市原市)の敷地内に建設予定で、既に7月から整地工事に着手。さらに、2027年中の大型パイロット装置の完工と供給体制の強化に向け、同社のリチウム電池材料部内に「パイロット準備室」を新設した。

なお、出光は2023年10月に発表したトヨタとの協業において、2027～28年に全固体電池を搭載したEVの実用化をめざしている。出光が大型パイロット装置で製造した固体電解質を、トヨタが開発中のEV向け全固体電池で使う計画だという。

全固体電池は電解質が固体であるため、従来の液系電池と比べてイオンがより速く動ける点を特徴とする。全固体電池を搭載したEVは、急速充電時のさらなる時間短縮や、出力向上といったポテンシャルが見込まれるほか、高電圧・高温にも強いため、エネルギー密度の向上や長寿命化が期待されている。

出光が手がける固体電解質は、石油製品を製造する過程で副次的に発生する硫黄成分を原料としている。同社ではこの硫黄成分の有用性を1990年代半ばから見出し、長年にわたって培った研究力と技術力によって、固体電解質の開発に成功。固体電解質の量産化に向けた技術開発は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「グリーンイノベーション基金事業/次世代蓄電池・次世代モーターの開発」のひとつとして採択されている。

出光では、固体電解質の量産技術の開発を強力に推進し、自動車メーカーや電池メーカーなどのニーズに応えていく。さらに今後、固体電解質の原料となる硫化リチウムの製造能力強化についても、年度内決定を目標に準備中。原料から製品まで一貫したサプライチェーンの構築を進め、全固体電池の社会実装をめざしていく。
（庄司亮一）