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テレビ解説者・木村隆志のヨミトキ 第80回 夜の再放送は「ニーズ」か「やりすぎ」か…大谷翔平出場のワールドシリーズ中継をめぐるテレビの思惑と課題

マイナビニュース / 2024年10月29日 6時0分

さらに、ここにきて報道・情報番組での扱いについても人々の不満が目立っている。

日本テレビが『ZIP!』の放送時間を延長し、他局にはない“8時またぎ”の編成を採用した23年春あたりから、大谷選手をめぐる報道・情報番組での扱いが局を超えて過熱。『ZIP!』は朝ドラや民放の情報番組に対抗するために“8時またぎ”で大谷選手の映像を放送し続け、他局もその扱いを増やしていった。

大谷選手が打者に専念する今年は、ほぼ全試合出場し、個人もチームも好成績。その扱いがさらに増えたことで、ジワジワと大谷選手に対するネガティブな声も目立ち始めていた。最近では生放送の情報番組を中断してまで大谷選手の打席速報や試合経過を伝える演出も多々見られるが、このあたりは「やりすぎ」と言われても仕方がないだろう。

それがポストシーズンに入った10月に加速。現在、X(Twitter)の検索窓に「大谷」と入れると、予測検索ワードには称賛ばかりではなく、「ハラスメント」「うんざり」「うざい」「もう見たくない」「お腹いっぱい」「嫌い」「調子のりすぎ」「テレビ消す」「負けろ」などの辛辣なフレーズが表示される。

大谷選手は日々努力を重ね、懸命にプレーしているだけで、非はないのは明白。「テレビだけではなくメディア全体がバランスを欠いた過剰な扱いを続けることで大谷選手に負担をかけている」ことを業界全体で考えなければいけない時期に入ったのではないか。

これまでも大谷選手に関するネガティブな声はあったが、本人が想像を超える活躍で抑えてきた感がある。言わばメディアは大谷選手の活躍に助けられるような形で批判を免れてきたのだが、それもそろそろ限界に近づいているのかもしれない。

日米の野球界にとっても試合を扱ってもらうことは大歓迎だが、大谷選手ばかりフィーチャーすることや、それが個人を苦しめることは望んでいないだろう。実際、第2戦で活躍したのは山本選手だが、翌日の情報番組でその扱いは少なく、大谷選手ばかりフィーチャーされていた。「そのほうが毎分視聴率を獲れるから」という理由があったとしても、もはや視聴者に見透かされ、受け入れてもらうことは難しい。

バランスを欠いたビジネスを続けると目の前の数字は多少取れたとしても、それ以上のアンチを生み、長期的には顧客を失っていく。こういう視野の狭い選択からメディア不信は広がっていくのかもしれない。

木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。 この著者の記事一覧はこちら
(木村隆志)



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