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知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第181回 NTT法見直しの議論が大きな節目、廃止見送りの公算高まる

マイナビニュース / 2024年11月11日 13時29分

しかしながらメタル回線を縮退した後の不採算地域におけるエリア整備に関しては、光回線に加えモバイル回線を活用した固定電話サービスを活用しての整備も認める形となった。これはNTTが最も維持コスト負担が少ないと試算していた案でもある。

それゆえNTTの代表取締役社長である島田明氏は、2024年11月7日の決算説明会でこの点に言及。現在のメタル回線ではユニバーサルサービス基金からの補填があってもNTT東西で560億円もの赤字が生じているというが、今回の案が採用されれば、基金からの補填があれば収支が均衡し、大幅に改善するとの認識を示している。

またモバイル網による固定電話をユニバーサルサービスに追加したことで、NTT以外の事業者も連携してエリアをカバーできるようになった。そこで従来NTT東西に対して「あまねく提供」を求めてきたユニバーサルサービスの責務も、他にサービスを提供できる事業者がいない地域に限って最終的な責務を負う「最終保障」責務へと緩和。一連の内容が反映されればメタル回線縮退後のNTT東西にかかる負担はかなり軽くなると考えられ、NTTに有利な内容で議論が帰結したといえよう。
廃止が目されていたNTT法はむしろ強化の方向へ

一方で、NTTに不利な内容となったのが、残りの公正競争、そして経済安全保障に関するワーキンググループである。これら2つの議論をしていたワーキンググループの報告書を見ると、現状維持、あるいはむしろ規制を強化すべきという結論が出されているようだ。

実際公正競争ワーキンググループの報告書によると、NTTが電信電話公社(電電公社)から継承した設備を持ち、固定回線で独占的なシェアを持つことから、電気通信事業法による「行為規制」とNTT法による「構造規制」で必要な措置を講じることが適当とされている。これは従来通りNTT法を維持して規制を続けることを意味しており、NTT法廃止に強く反対してきた競合側の主張がくみ取られたことが分かる。

加えて“特別な資産”とされるNTT東西が持つ線路敷設基盤などは、国の通信インフラを支える重要な存在と評価。その譲渡や処分などには認可が必要とするなど、むしろ規制を強化すべきとの見解が述べられている部分もいくつか見られる。こうした点も、やはりNTT側ではなく競合側の主張が受け入れられたと見るべきだろう。

また経済安全保障ワーキンググループの報告書を見ると、外国人の議決権保有割合が3分の1以上になることを禁止するとNTT法で定められている外資総量規制に関して、国のインフラを支える公共性の役割が高いことなどから「維持することが適当」とされている。一方でNTT側が主張していた外為法での代替については「国籍要件を採用するNTT法の外資総量規制の代替は困難」とされ、受け入れられなかったようだ。

無論、これら報告書はあくまでワーキンググループ内での議論の結果打ち出されたものであり、これでNTT法に関する議論が終結した訳ではない。NTT法に関する議論は現在も続いており、2024年10月29日に実施された通信政策特別委員会では一連の報告書を受け、NTTとその競合となるKDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの3社によるヒアリングが実施されている。

とはいえ総務省での議論の末に打ち出された報告書が、今後の議論に非常に大きな影響を与えることは確かだ。加えていうならば、今回のNTT法見直しを打ち出した自由民主党が先の衆議院選挙で大幅に議席を減らしており、見直しを主導してきた議員が落選したり、いわゆる“裏金問題”で存在感を失ったりしている。そうしたことを考えると、これまでNTT優位で進んできたNTT法の議論が大きな曲がり角を迎えていることは間違いない。
(佐野正弘)



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