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佐野正弘のケータイ業界情報局 第140回 厳しい市況でもシャープが「AQUOS R9 Pro」でフラッグシップを継続する理由

マイナビニュース / 2024年11月26日 6時0分

市場変化で最上位モデルの投入は不定期に

こうした内容からも、AQUOS R9 proが他社のフラッグシップモデルに引けを取らない充実した内容であることは理解できます。であればなぜ、例年通りフラッグシップを夏商戦に投入しなかったのか?という点は疑問が残るところです。

シャープのユニバーサルネットワークビジネスグループ長 兼 通信事業本部長である小林繁氏は、その理由について「スーパーフラッグシップみたいな商品は(投入の適切な)タイミングがある」と話しています。最上位のフラッグシップモデルは各社の最先端技術を積極的に投入する必要があるため、ベストな部材が揃ったタイミングで提供したいというのが同社の考えのようです。

加えてフラッグシップモデルは、昨今の円安と政府によるスマートフォンの値引き規制で価格が高騰し、販売が大きく落ち込んでいます。それゆえ、フラッグシップモデルを購入するのは熱心なファンに限られてきていることから、定期的に新モデルを投入することが重要ではなくなってきている、とシャープは判断したのではないでしょうか。

一方でAQUOS senseシリーズのように、幅広い層をターゲットとしたモデルは定期的に新機種を投入した方が、それを販売する携帯電話会社や量販店の側が扱いやすいと小林氏は話します。市場環境が非常に厳しいことを鑑みて、モデルの性格に合わせて製品投入のタイミングを変えていくというのが、現在のシャープの製品投入方針のようです。

一方で小林氏は、フラッグシップモデルに関して「技術の最先端を攻めるうえで非常に重要。ああいうものが作れないと、スタンダードモデルでもハイエンドモデルでもいいものが作れない」と話します。フラッグシップモデルで培った技術を他の製品に生かせるだけでなく、自社のブランドを象徴する製品としてプロモーションの面でも重要な意味を持つことから、その重要性は変わらず開発は継続していく姿勢を見せています。

そうした姿勢が、シャープのフラッグシップが姿を消したことに不安を抱いていた人に安心感を与えたことは確かでしょう。ただそれでもなお、国内の市場環境が非常に厳しいことに変わりはなく、かといって同社の海外進出に向けた戦略も道半ばということもあり、フラッグシップモデル開発を継続することが容易ではないこともまた確か。国内市場の回復が見込めない限り、フラッグシップモデルを巡る状況は非常に不安定というのが正直なところではないでしょうか。

佐野正弘 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。 この著者の記事一覧はこちら
(佐野正弘)



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