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中小企業デットファイナンスの新潮流 第35回 当座貸越(2)

マイナビニュース / 2024年11月22日 8時0分

当座貸越の審査は通常の融資よりも厳しいのですが、一方で、創業間もないスタートアップが当座貸越の契約をした事例を耳にします。ポイントになるのは、契約書に含まれる減額・中止・解約条項の存在です。2期連続赤字で一般的に要注意先以下の格付けになるスタートアップは、貸出時に計上しなければならない貸倒引当金繰入により、金融機関から見て融資するだけで費用が増えて赤字になる取引先です。元本返済が進めば貸倒引当金戻入により利益が計上されていきます。スタートアップが資金ショートを起こさない期間を見極めた上で当座貸越を短期契約として締結し、貸倒引当金戻入が期を跨がないようにコントロールして、いざとなれば減額・中止・解約の権利を発動してリスクを回避するという、金融機関側が利益を出すための戦術が見て取れます。

バブル崩壊後の貸し剝がしは、短期継続融資を更新しない手法によって実行されました。当座貸越を活用した短期継続融資は、期中の元本返済がなく資金繰りが計算しやすいメリットがある一方で、返済原資が少ない企業は継続可能か不透明になるデメリットがあります。運転資金の融資は短期と長期を混ぜて調達する考え方が現代的だと考えます。

当座貸越に関する説明は以上です。次回はコンプライアンスチェックについて取り上げます。

→前回連載「東大発ベンチャー現役CFOが教えるデットファイナンス入門」はこちら

千保理 せんぼただし ロンドン日本人学校中学部、東京学芸大学教育学部附属高等学校、東京大学経済学部経済学科を経て、東京大学大学院経済学研究科修士課程企業・市場専攻修了。専門は企業金融(コーポレート・ファイナンス)。生命保険会社のシステム子会社にて勤務した後、東京大学発IT系ベンチャー企業にCFOとして参画し、2022年に独立。未上場企業の融資による資金調達を得意としており、会計ソフトウェア会社やベンチャーキャピタルが主催する起業家向けの財務経理セミナーの講師を務めている。著書(共著)に千保理・滝琢磨・辻岡将基『~事業拡大・設備投資・運転資金の着実な調達~ベンチャー企業が融資を受けるための法務と実務』(第一法規、2019)がある。 この著者の記事一覧はこちら
(千保理)



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