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知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第183回 総務省が最大6カ月の「お試し割」を解禁、楽天モバイルとMVNOに与える影響は

マイナビニュース / 2024年12月12日 18時33分

そもそもお試し割に類する施策を提案したのは楽天モバイルであり、同社が先のWGの第53回会合において、新規参入事業者への規制緩和を求めたことから議論が始まっている。現状、楽天モバイルを含む携帯4社は全て、スマートフォン値引き規制などが定められた電気通信事業法第27条の3の規律対象となっているが、楽天モバイルとそれ以外の3社のシェアには非常に大きな差がある。

にもかかわらず、楽天モバイルも他の3社と同じ規制が適用されてしまうことから、シェア10%以上の事業者のみを対象とし、シェアが小さい現状の楽天モバイルは対象外すべきと要求した訳だ。楽天モバイルは規律対象外となってもスマートフォンの大幅値引きはしないとする一方、自社回線サービスの月額料金を6カ月間無償で提供、あるいは全額ポイントバックするなど、同社のサービスを“お試し”できる施策を実現した意図訴えたのである。

その後議論の末、総務省では規律対象の事業者を見直すこと自体は見送った一方で、楽天モバイルの意見を一部取り入れる形で、先の形でお試し割を認めることをガイドラインの改正によって盛り込んだのである。それゆえ今後、楽天モバイルに限らず規律対象の携帯4社全てがお試し割を実施できることとなる。
中・低価格帯と相性がよくMVNOは苦戦か

ただお試し割の期間が6カ月に限定されていることを考えると、いわゆる金融・決済とセットになった“ポイ活”系のプランに注力する携帯各社のメインブランドでは活用しづらい。恩恵をフルに受けるためには他に銀行口座やクレジットカードなど、携帯電話回線以外にも契約が必要なものが多く、都度それらの契約をするにはかなりの手間と労力がかかってしまうからだ。

それゆえお試し割を積極活用するのは楽天モバイルと、携帯3社のサブブランドや低価格の料金プランとなることが予想されるのだが、そこで注目されるのは、1つに中・低価格帯での値下げ競争が一層拡大する可能性だ。

2024年にNTTドコモが「ahamo」の通信量を30GBに増量を図って以降、他社がこれに追随し中価格帯の実質的な値下げが進んだ。そこに親和性が高いお試し割が加わることで、中・低価格帯での獲得競争が一層激化しさらなる料金引き下げが起きる可能性があるだろう。

もちろん値下げは消費者にとって喜ばしいことなのだが、さまざまなモノの値上げが進む中にあって、携帯電話料金だけは政治主導で値下げが進む一方であり、それが携帯各社の業績を悪化させる要因にもなっている。そして業績悪化はインフラ投資の低下、ひいては2023年にNTTドコモが生じさせたような、著しい通信品質の低下などにもつながってくるだけに、過度な値下げ競争は懸念される所でもある。

そしてもう1つはMVNOへの影響だ。企業体力の大きい携帯4社がお試し割の競争を加速させ、中・低価格帯での競争が強まると、同じく中・低価格帯に強みを持つ一方で、企業体力が弱く、対抗する値引き原資を確保できないMVNOの競争力を低下させることにもつながってくる。

それだけに、先のガイドライン改正に際してはMVNO関連の事業者や団体から、お試し割への懸念や問題点を指摘する声がいくつか挙がっていた。携帯大手3社による市場寡占を解消したい総務省にとって、お試し割は楽天モバイルのシェア向上が見込める一方、MVNOのシェアが低下する諸刃の剣となりかねないだけに、解禁後MVNOにどのような影響を与えるかは大いに関心を呼ぶところだろう。
(佐野正弘)



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