土星の環は若くない? - スペースデータが定説を覆す形成メカニズムを提案
マイナビニュース / 2024年12月23日 9時29分
スペースデータは12月17日、米国航空宇宙局(NASA)の「ボイジャー」や「カッシーニ」などの探査機による観測を経て、宇宙塵による汚れがほとんどないことがわかったことから、比較的最近(1億~4億年前)に形成されたとする仮説が主流となっていた“土星の環”について、理論とシミュレーションを用いてその仮説の間違いを示し、環が塵によって極めて汚れにくいことを突き止め、その年齢は土星の形成とほぼ時期、つまり太陽系の創生期の極めて混乱していたおよそ46億年前とする説を発表した。
同成果は、スペースデータ 最高科学責任者の兵頭龍樹博士、東京科学大学 教育研究組織 未来社会創成研究院の玄田英典教授らの研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の地球・惑星科学に関する全般を扱う学術誌「Nature Geoscience」に掲載された。
カッシーニの計測などにより、土星周辺の宇宙空間には、マイクロメートルサイズの宇宙塵が漂っていることがわかっている。その成分は有機物と岩石が混合した、水(氷)をあまり含まない岩石質の塵であることが示唆されている。しかし、これもまたカッシーニによる観測の成果だが、土星の環は95%以上が水の氷から成ることが明らかにされている。時間の経過と共に、それら氷の欠片に宇宙塵が降り積もることで、氷の欠片の表面が汚れていくと考えられているが、それに対して観測結果で非常にきれいであることがわかったことから、できてからそれほど時間が経っておらず、土星の環の年齢は1億~4億歳だと考えられていた。
1億~4億年前に、土星の衛星軌道上で氷衛星同士が衝突して大破して氷の欠片を大量に散逸させたことで環ができあがったとする仮説などもあるが、太陽系の形成と進化の理論研究からは、環が形成されるような一大イベントは、天体衝突が頻発していて、非常に混乱極まっていた約46億年前の太陽系の創生期に起こる可能性がとても高いと考えられている。つまり、これまでの理論と観測の間には大きなギャップがあったのである。そこで研究チームは今回、シミュレーションを行い、宇宙塵と土星の環の関係を包括的に解明することを目指したという。
今回の研究においては、以下の3種類のシミュレーションが実施された。
宇宙塵と土星の環の粒子の衝突
蒸発した塵の進化
ナノメートルサイズの帯電凝縮物の土星磁気圏内での軌道進化
まず、宇宙塵と土星の環の粒子が衝突するプロセスのシミュレーションが実施された。その結果、これらの衝突は非常に高速で発生し、そのエネルギーによって塵が完全に蒸発してしまうことが判明したとする。
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