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岡山大、宇宙インフレーション検証衛星の測定誤差最小化手法を発見

マイナビニュース / 2025年1月9日 16時47分

それがインフレーション終了後も宇宙が拡大を続けたことで徐々に冷えていき、およそ38万年が経って十分に冷えると、水素やヘリウムなどのビッグバンで誕生した原子核が電子を捉え、物質が誕生(中性化)したことで、光が直進できるようになる「宇宙の晴れ上がり」イベントが発生した。この時の最初に直進し出した光は、現在ではマイクロ波にまで波長が引き延ばされており、宇宙の全方位において観測されることから、“宇宙マイクロ波背景放射”と呼ばれているのである。

CMBの偏光度合いの精密観測によるインフレーションの検証は、現在の宇宙物理学において、最も重要な研究課題の1つに挙げられている。現在の電磁波を用いた観測手段ではCMBまでが限度のため、その前のビッグバンやインフレーションの時代を観測することは不可能だ。しかし、CMBの偏光度合いの精密観測であれば、光学観測でありながらインフレーションの検証が可能となる。しかしそれには、従来よりも1桁以上も優れた精度を有する測定が求められ、容易なことではない。超高感度な検出器群を開発するのはもちろんのことだが、観測装置の性能の不定性に由来する「系統誤差」も大きく抑制する必要があるからだ。そこで研究チームは今回、系統誤差が最大限抑制される観測手法の最適解を求めたという。

その最適解を見つけるためには、広大な多次元パラメータ空間を探索する必要があったとする。そこで今回の研究では、まず衛星のスキャン観測を高速にシミュレートするJulia言語で書かれた高速シミュレータ「Falcons」を独自に開発(高瀬大学院生が自身のGitHubで公開中)。同ソフトウェアとスーパーコンピュータを駆使することで、その最適解を見つけることに成功した。

具体的に発見されたのは、人工衛星の姿勢を制御する4つのパラメータ空間において、偏光観測の誤差を最小化するための、あらゆる天域においてほぼ一様な偏光方向観測を達成する全天観測手法だ。また、系統誤差抑制を確認するため、偏光の回転対称性(スピン量)が2であることが着目され、特定の系統誤差の影響を素早く計算できる手法も開発された。そして、発見された最適解が確かに系統誤差を抑制することも確認できたという。

今回の研究成果は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2032年度の打ち上げを目指して開発中の「LiteBIRD」など、インフレーションの検証を試みる将来のCMB偏光観測衛星実験の観測装置や姿勢制御に重要な設計指針を与えるとしている。
(波留久泉)



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