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佐野正弘のケータイ業界情報局 第144回 「コミケ」でのネットワーク対策に見えた、NTTドコモの通信品質改善に向けた次の一手

マイナビニュース / 2025年1月21日 18時30分

ですがここ最近、海外の通信機器ベンダーを中心に、より小型化されたMassive MIMO対応アンテナが登場。そこで、NTTドコモも調達先を海外ベンダーに広げるなどしてMassive MIMO対応アンテナの導入を進め、5Gの通信品質向上を図ろうとしています。

なかでも、そのMassive MIMO対応アンテナが積極的に用いられているのがイベントの通信品質対策であり、すでに関西では京都競馬場などで活用された実績があります。ビルなどの基地局に常設するにはビルオーナーの許可を得る必要があるため時間がかかってしまいますが、臨時のイベント対策用途ならば設置場所の融通が利きやすいことが、早期導入が進みやすい理由といえるでしょう。

それゆえ、今回のコミックマーケット105においても、設置した可搬型基地局2台と、移動基地局車3台のうち2台にMassive MIMO対応アンテナを導入。4Gの増強に加え、Massive MIMOで5Gの増強を図ることで、同時に通信できる容量を増やし、品質向上へとつなげていました。

そして、もう1つが「5G SA」です。5Gの運用方法は大きく分けて、4Gのネットワークに5Gの基地局を設置して高速大容量通信を実現するノンスタンドアローン(NSA)運用と、5G専用の機器でネットワークを構築し、5Gの性能をフルに発揮できるスタンドアローン(SA)運用の2つがあるのですが、日本では現在のところ大半の5GエリアがNSA運用となっています。

そしてNSA運用のネットワークは、5Gといっても必ず4Gのネットワークに接続する必要があるため、4Gの通信品質にも影響を与えてしまうのに対し、SA運用のネットワークは4Gとは独立しているので4Gに影響を与えません。そこでNTTドコモは、コミックマーケット105での通信品質対策にあたり、このSA運用の5Gネットワークを大幅に強化したのです。

実際同社は、移動基地局車や可搬型基地局などの臨時施設だけでなく、恒久的に設置されている会場内の基地局も含めて5GのSA化を進め、コミケ会場内の全エリアでSA運用の5Gネットワークを使えるようにしています。SAに対応するスマートフォン利用者にはそちらに接続してもらうことで、その分混雑しやすい4Gの負担を減らして通信品質向上を図る策に打って出たわけです。

これら一連の施策を見るに、NTTドコモは2025年以降、Massive MIMOに対応するアンテナを増やして5Gの通信容量を増やすとともに、5GのSAに対応するエリアを広げることで4Gにかかっている負担を減らし、通信品質の改善を図ってくるのではないかと考えられます。とりわけ5GのSA化は、実は2022年に携帯3社が開始しているものの、各社とも一向に対応エリアの拡大が進んでいないだけに、他社を出し抜くうえでもNTTドコモが5GのSA化をどこまで進められるかという点が、1つの勝負どころとなってくるのではないでしょうか。

佐野正弘 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。 この著者の記事一覧はこちら
(佐野正弘)



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