観る者の心を動かす一局 柵木四段がプロの意地見せ、西山女流三冠は惜敗で夢叶わず 棋士編入試験第5局
マイナビニュース / 2025年1月23日 11時30分
西山朋佳女流三冠が受験する棋士編入試験五番勝負、最終第5局は1月22日(水)に関西将棋会館で行われました。得意の三間飛車を用いて試験官の柵木幹太四段に挑んだ西山女流三冠ですが惜しくも135手で敗北。2勝3敗の負け越しとなり棋士編入の夢は叶いませんでした。
○注目の大一番
本編入試験は新四段5名と対局を行い、3勝を挙げればフリークラス編入での四段資格を得るもの。2勝2敗で迎えた西山女流三冠は勝てば合格、負ければ不合格という大一番を迎えました。多くのファンの注目を集めた対局は西山女流三冠の三間飛車に柵木四段が急戦調で挑む対抗形に。駆け引きのすえにすぐの戦いは回避され、互いに力の出る持久戦に落ち着きました。
ともに陣形を整備するなか、西山女流三冠が取った6筋の位を争点に局面が動き始めます。これに反応して自玉そばの左桂を跳ねたのが柵木四段自慢の好手。異筋とはいえ歩を取りつつ角のラインを通す攻めが受けづらく、西山女流三冠は飛車を端に逃がして辛抱する方針に。結局、へき地に追いやられた西山女流三冠の飛車が動くことは最後までありませんでした。
○それでも前を向いて
黙っていては苦戦とみた西山女流三冠は玉頭戦に目標を切り替えます。角を主軸に先手の端玉銀冠を攻め立てる様子は豪腕流勝負術の雰囲気満点ですが、この日に関しては柵木四段の指し回しが光りました。柵木四段が局後に「中終盤追い込まれて負けにしたかと感じた」という局面でも、6筋に上がった銀が左足一本で自玉の詰み筋を防いでおり逆転には至りません。
終局時刻は17時54分、最後は自玉の詰みを認めた西山女流三冠が投了。西山流の終盤術は鳴りを潜めた格好で、急戦をチラつかせて振り飛車の駒組みに制約を与えつつうまく戦機を捉えた柵木四段の快勝譜となりました。終局後のSNSには「歴史に残る熱戦」「西山さん、めちゃくちゃかっこよかった」など両者の健闘を称える声があふれました。
2勝3敗で惜しくも不合格となった西山女流三冠は、終局直後のインタビューでは真っ先に5人の試験官に対し「それぞれの考えで向き合ってくださったことについて、本当に感謝しています」と感謝の意を述べました。再挑戦について聞かれると「いったん整理してから」と保留しつつ、「活性化する女流棋界にすこしでも携わりたい」と前を向きました。
水留啓(将棋情報局)
(将棋情報局)
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