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カレー沢薫の時流漂流 第336回 コンビニから「本」が消える日

マイナビニュース / 2025年1月27日 16時17分

一昔前であれば漫画雑誌が休刊するたびに「漫画はオワコン」と言われていたし、今回のコンビニ販売がなくなるかもしれないという話も同じ捉えられ方をしていただろう。

しかし、現在はいくら雑誌が休刊し、紙の本の部数が同人誌レベルになっていると聞いても、漫画という文化自体が斜陽という感想は抱かれなくなってきている。

雑誌や紙の本が少なくなっているのは、漫画のシェアが電子に移っただけであり、むしろ完全に電子移行したことにより、漫画業界自体の業績は上がっていると思われる。

これは、完全に予想であり、出版社の内情など知らないが、本ばかり売っているはずのK社の社員休憩所が改装され、ドリンクサーバーがヌタバになっていたのを見るに、景気は絶対に悪くないはずだ。

出版各社が、これで餓死者はでないのかというレベルで漫画を大量無料公開するのも、この撒き餌で獲物を集めて莫大な利益を出すという必勝パターンを確立したからだろう。

少なくとも我が村の個人紳士服店が13年閉店セールをやっているような、ヤケクソとはワケが違うはずだ。

つまり、ビデオは絶滅しつつあるが「録画」という行為が消えたわけではないのと同じで、媒体が変わっただけということだ。
○紙は、電車の網棚に捨てるものではなくなった

しかし、紙の本が時代遅れで無価値なものになったというわけではない。

確かに流通数の激減は免れない。だがそれゆえに文字通り「コンビニ感覚」ではなく、紙の本はコレクターズアイテムとして残っていくのではないかとも目されている。

私がバキSAGAの内容を知っていながら「手元に置いておきたい」と感じたように、内容を知るだけなら電子で十分だが「好きなものを所有している」という感覚は電子では満たされず、未だに「本は紙で揃えたい」という人は一定数存在するし、作家も「紙で出したい」と思っている人は多い。

そういう人のために、紙の本はコレクション品として、少部数の代わりに単価を上げて残っていくのではないかとも言われている。

しかし単行本はともかく、紙の雑誌はいよいよ終わりのようにも思える。しかし紙の雑誌の需要も完全に消えたというわけではない。

コロナが全盛の時、某漫画ゴラクから「ゴラクもついに電子化しました」と連絡が来て、逆にあの規模の週刊誌が電子化してなかったのか、と驚愕したが、ゴラク読者は紙派が多く、何よりラーメン屋や風俗待合所に置く雑誌としての需要が高いのだ。

確かにああいう場所の備え付け雑誌を電子化というわけにはなかなかいかない。

ラーメンの電子化、風俗の電子化が行われるまで、まだ紙の雑誌は必要とされそうである。
(カレー沢薫)



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