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カレー沢薫の時流漂流 第337回 お手軽ミームな「〇〇構文」の使い方

マイナビニュース / 2025年2月3日 14時15分

まず9割構文を使うなら、経験がない上に、それに対して全く知識がないことについて言及すべきである。

ハゲの人に「ハゲの9割は甘え」と言われたら、本人がそう言っているんだからそうかもしれない、と思ってしまう。

これも当事者が言うことによりハゲは甘えというデマが広まってしまうという意味で批難は避けられないだろうが、「少なくとも俺は甘えたからハゲた」と己の実体験を元に語られると「それでも9割は言いすぎ、どちらかというとお前は1割側」としかいえなくなる。

そうではなく、自身にその経験がなく、周囲に当事者もおらず、知識もないのに「うつの9割は甘え」などの適当なことを言うことで、9割構文は真価を発揮するのである。

「〇〇は甘え」という言い回しは昔からあるのだが、断言を避け1割の例外という逃げ道を用意しているところも小賢しくてポイントが高い。
○ね、簡単でしょ? と言いながら油絵を描く感じで

最近SNSで、この構文を用いた「地方暮らしは車がないと生活できないは9割甘え・自転車があればなんとかなる」という意見が注目を集めた。

見たところ地方暮らしの9割を怒らせることに成功していたので、9割構文としてかなり完成度が高い。

この文章の秀逸な点は頑張ればできなくもない、ギリギリのラインに打ち込んできているという点である。これが「呼吸しないと生きていけないは9割は甘え」だったら無視されるだけなのだ。

確かに田舎でも場所によっては車を持たず、自転車で生活することはできなくもない。しかしそこには凄まじい苦労と不便が存在する。

その苦労を「甘え」と表現し、がんばればできなくもないという事実から「がんばらない奴が悪い」という方向へ持っていく手腕は見事という他ない。

しかし、この発言が田舎暮らしの実態を知らない都会者が適当に言ったことならまだましであり、真の害悪になりかねないのは、本当に頑張って自転車で生活している田舎の民が言っている場合だ。

それができていること自体はすごいのだが、それを普通のことのように言われると、また現状を知らない人間から「できている奴がいないのに何故お前はできないのか」と言われてしまう。

結局苦労は人ぞれぞれであり、それを理解できるのは本人だけだ。

わからないことには口を出さない、そして他人の「辛い」という話に対し、「俺はツラくないけどね」と、突然自分の話を始めるという行為は慎んでいかなければならない。
(カレー沢薫)



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