生命の循環を追う。小林万里子「背負うなら太陽だけでいい」
NeoL / 2020年10月21日 17時0分
熱と水 , 2018-2020, 300.0 × 500.0cm
CADAN 有楽町は7月のオープン以来、メンバーギャラリーお披露目のグループ展を4回にわたって開催。11 月からは、ギャラリーが1軒ずつ企画展を発表していく。トップバッターは、天王洲に拠点を持つ KOTARO NUKAGA による小林万里子「背負うなら太陽だけでいい」。3m x 5m の大型作品「熱と水」の他、立体8点を含めた新作を中心に 23 点を発表。
小林万里子は織る、染める、編む、刺す、といったテキスタイル技法を用い多様な素材を組み合わ せていく方法で、世界に存在する様々な結びつきを表現してきた。「生命の循環」というのが制 作における一貫した大きなテーマとなっている。《熱と水》では、山をモチーフに自然界の生態系のサイクルを描く。太陽や雨、土、空気という 身近にありながら、生きていくために不可欠な「熱と水」という大きな存在、そしてそれをエネルギーに生死の連鎖を繰り返す動植物、そしてそれを見ている私たち人間の内面にも、そのエネルギーと循環のサイクルがつながっていること、さらにその自然を人間が富のために開拓してきた事実をも思い起こさせる。
また、展覧会タイトルでもある《背負うなら太陽だけでいい》はロバをモチーフにした作品。人の荷物を背負って生きるロバの過酷な一生とともに、自ら背負えない重荷をロバに背負わせてまで、人は何をどこまで運ぼうとしているのか、人間の生き様や本当に大切にすべきことについて考えさせられる。熱や 水、空気が循環する自然という大きな存在の中に生きていながら、普段はそれらを全く意識することなく、目の前にある自分の荷物だけを見て生きている人間たち。荷物を下 ろしたロバの背中に輝く太陽が、自然の中のあらゆるものとのつながりとともに、本質的に大切なことを象徴している。
作品の持つ鮮やかさや質感のみならず、めぐる 生命そして自然と人間との多層的な関わりは、小林がひとつひとつの素材を丁寧に選んで扱い、自らの手によってそれぞれの関係性を紡ぐことによって表現されている。それは、ばらばらに断絶されたもの同士のつながりを少しずつでも取り戻していくような行為でも。作品そのものが持つ魅力とそこに込められた思いを、作家の手の痕跡とともに感じてほしい。
背負うなら太陽だけでいい , 2020, 17.0×20.0×40.0cm
toki toki , 2019 , Cotton, linen and wool on canvas 45.5 × 38.0 cm
思考は風に乗る ,2020 , Cotton, linen and wool 39.0 × 24.0 cm
小林万里子 「背負うなら太陽だけでいい」by KOTARO NUKAGA
会期:2020 年 11 月 3 日(火・祝)- 11 月 22 日(日)
時間:火~金 11 :00 - 19 :00 土、日、祝 11 :00 - 17 :00※定休日:月(祝日の場合は翌平日)、11 月 15 日(日)
会場:CADAN 有楽町 東京都千代田区有楽町 1-10-1 有楽町ビル 1F
電話番号:070-6464-1438
営業時間:火〜金 11 時-19 時/土、日、祝 11 時-17 時 定休日:月(祝日の場合は翌平日)、11 月 15 日
Website: https://cadan.org/cadan-yurakucho/
アーティストトーク supported by CVJ
2020年11月13日(金) 18:30-19:00
出演:小林万里子、深井厚志(一般財団法人カルチャー・ヴィジョン・ジャパン)
参加無料 予約優先(15名)*Peatixにてご予約ください。
*適度な距離を保ってお立ちいただいたままでのトークとなります。スペースに余裕がありましたら当日参加も可能です。
小林万里子 Mariko Kobayashi
1987 年 大阪府(日本)生まれ 織る、染める、編む、刺す、といったテキスタイル技法を用い多様な素材を組み合わせ ていく方法で、世界に存在する様々な結びつきを表現する。人と動物を分ける境界線と しての肉体が土へと還る長い時間や、死してから他の生き物として命が再生する道のり を描くといったように、我々が「人」として生きる「今」という時間を繙きながら制作 を行う。重層的に織りなされる色や形によって現れる混沌のイメージの中から、生命の 本質的な姿を描き出すことを試みている。
多摩美術大学テキスタイルデザイン専攻、2012 年同大学院修了。
主な個展に「All of the world」(2019 年、s+arts gallery、東京 ) 、「青にめざめ、赤 にねむる」(2018 年、Art for Thought、東京 )、「循環の森」(2018 年、FEI ART MUSEUM、神奈川)、グループ展には「FIBER&FACES 12+1 ー変容する繊維ー Metamorphosis」(2019 年、アーツ千代田3331、東京 )、「六本木アートナイト 2015(WS)」「ストリートミュージアム 2015」(ともに 2015 年、Tokyo Midtown プ ラザ B1、東京)、「New beat in 香港」(2012 年、香港理工大学、香港)などがある。
関連記事のまとめはこちら
https://www.neol.jp/art-2/
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