PJ モートン『Watch The Sun』インタビュー／Interview with JP Morton about “Watch The Sun”

NeoL / 2023年2月3日 17時0分

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2022年12月にはドーム来日公演を敢行、世界を代表するポップ・バンドとしての圧倒的な存在感を示したマルーン5。そのキーボーディストとして、流麗かつ甘美な旋律を響かせているのが、PJモートンだ。彼はバンド活動だけでなく、ソロとしても精力的に活動し、グラミーにも多数ノミネートされている実力派。2022年にリリースされた最新アルバム『Watch The Sun』においても、まもなく開催される第65回グラミー賞で３部門にノミネートされるなど、高評価を得ている。スティーヴィー・ワンダーをはじめ豪華ミュージシャンが多数参加し、自身のルーツであるゴルペルやソウル、地元ニューオーリンズへの思いが滲んだ、とても丁寧でオーガニックな作品だ。

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━━マルーン5に正式加入して、10年以上が経過しました。

PJ「とても特別な時間を過ごさせてもらっている。当初は、活動に新たな刺激が生まれると思い加入して、1、2年したら終わるものだと思っていたけど、気づいたら10年以上が経過していた。今ではメンバー全員と家族のように濃密な関係を築くことができたよ」

━━また、バンドと並行してソロでも活動。そこに違いや共通点はありますか？

PJ「バンドとソロは全く別の活動。マルーン5ではポップスを追求しているけれど、ソロではR&Bがベース。どちらも自分の音楽クリエーションにおいて欠かせない要素でありながらも、別々な方向性を持っているから、うまく両立できているのだと思う。ひとつのプロジェクトに集中して、それが終わったらもうひとつに頭を切り替える。そういうことを繰り返していくことが、共に新しい刺激を与えてくれるしね。また、バンドではメンバーの一員で音を支える立場だけど、ソロでは自分がすべての責任を持ってディレクションをしなくてはいけない。そこの違いも大きいね」

━━では、2022年にリリースされた最新アルバム『Watch The Sun』は、どういうタイミングで作られたものですか？

PJ「このアルバムに取り掛かる前は、マルーン5のツアーでとにかく忙しかった。でも、パンデミックの影響で突然キャンセルになり、家に帰ることになったんだ。そこで、音作りに没頭し始めたところ、突然パソコンが壊れてしまって。ゼロの状態に戻ってしまった。そこで、私は休憩を取ることにして、もう一度じっくり音楽に向きあおうと思ったんだ。自分が音楽を通じて何を伝え、表現しなくてはいけないのかを。そこで、自分にはたくさん伝えたいことがあることを再確認できた。現代は、心を痛めるようなトピックがたくさんある。そんな状況でも、多くの人に＜太陽＞のようなポジティヴを与えるものを表現すべきなんだって。また、自分自身にも陽があたるような感覚、エネルギーを授けてくれるものを作りたかったし」

━━収録曲の“Biggest Mistake”は、パソコンが壊れた瞬間の話？

PJ「アハハ（笑）。それはいい質問だ。確かに、あれは大きなミステイクだったね！」

━━（笑）アルバムは、そういう気分を落ち込ませる出来事を乗り越え、自分にとっての「ベターな場所」を見つけるまでの心の旅を表現しているような内容ですね。

PJ「出来上がった楽曲をまとめていくうちに、“The Better Benediction”を到着地にして、旅のような気分にさせるアルバムを作りたくなったんだ。この楽曲は、自分が幼い頃から通っていた教会からインスパイアされて完成させたものなんだけど、そこから帰る瞬間はとても幸福な気持ちにさせる。あの感覚を表現したかった。アルバムは、人生で起こった悩みや人間関係のあれこれを乗り越え、最後には光に満ち溢れたものにしたかったんだ」

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━━サウンドに関しては、ひとつひとつの音を丁寧に鳴らした、とてもオーガニックな雰囲気が漂うものに。

PJ「今回は、〈Studio In The Country〉というスタジオで、バンドメンバーを呼んで、セッションをしながら完成させたもの。ひとりひとりが、楽曲にじっくり向きあい、その楽曲が意図するものを汲み取りながら、制作していった。結果、ヴォーカルがなくても、思いが伝わる、サウンドだけでも聞き手に語りかける力のある楽曲ばかりが揃ったと思う」

━━〈Studio In The Country〉は米ルイジアナ州にあり、スティーヴィー・ワンダーもレコーディングをしたことがある伝説的スタジオですよね。

PJ「これは規制が残るなかでの制作で、マスクなしでもセッションできる広い空間が必要だったから、ここが思い浮かんだ。また、日常から離れピースな気分になれるし。それは、今回の音作りにおいて必要不可欠なものだと思ったから」

━━また、アルバムには多彩なゲストが参加しています。

PJ「サウンドの土台が完成し、そこからどう進化させて完成に導くか考えていくうちに、声をかけた方々だね。本当はスタジオに呼んで、セッションをしたかったんだけど、なかなかそういう訳にはいかず。ネットでやり取りしながら完成させた、でも、しっかりコミュニケートできたと思う」

━━スティーヴィーとNasとの共演曲にもありますが、“Be Like Water”（水のように）滑らかな進行に？

PJ「確かにスムースなものだったけど、実はこの楽曲は難航したんだ。先にNasに話を持ちかけたんだけど、彼は自分のアルバムに取り掛かっていたから、なかなか時間が作れなかった。その間に、私はスティーヴィーの楽曲に参加することになり、その勢いにのって、自分の楽曲にも参加してくれないか打診したところ快諾いただいたんだ。それで出来上がったものをNasに送ったら、即レスが届いて。『ずっとスティーヴィーと共演するのが夢だった』っていう。それからすぐに完成したものなんだ。素晴らしい才能を持つふたりを、自分の楽曲を通じて引き合わせることができて、とても光栄だったよ」

━━またタイトル曲の“Watch The Sun”はレゲエ調の楽曲で、アルバムの中でも異彩を放っています。

PJ「この楽曲でフィーチャリングしているクロニックス（Chronixx）とは、2017年のグラミーで意気投合して、今回ようやく共演が実現した。最初に自分がフックを送って、そこから向こうもアイデアを返してくれるという作業をネットで繰り返しながら完成させた曲。でも、とても自然なヴァイブが生まれていると思うよ」

━━ソウルやR&Bとは異なる音楽性を垣間見せる作品であると同時に、ラストの“The Better Benediction”ではゴスペル・クワイアを取り入れ、自身のルーツである音楽、そして故郷ニューオーリンズへの思いを感じさせる仕上がりに。

PJ「実はレゲエの曲はこれまでも発表しているんだけどね。“The Better Benediction”は自分のルーツを辿った楽曲であることは、間違いない。父親に連れられて行った教会で知った音楽、そしてオーガニックな環境のアメリカ南部ならではの音も表現して、自分のホームを表現したかったんだ」

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━━このアルバム制作を通じて、何か新しい音楽的発見はありましたか？

PJ「今まで私はストーリーテラーのような役割で音楽を発信していこうと思っていた。自分の経験もエッセンスになっているが、他の誰かの物語を代弁しているような感覚。でも、今回は自分の経験や思いが軸になっている。弱さを含めて、本当の自分がここにあるんだ。そのことによって、ゴスペルやレゲエなど好きな音楽の要素をすべて取り入れることができたし、スティーヴィーをはじめジル・スコットやエル・デバージ、ジョジョなど、影響を受けたミュージシャンにも参加してもらって、これまでの音楽人生の道のり、旅を表現することができたと思う。自分にしか作ることができないアルバムになったよ」

━━そんなアルバムは2023年開催の第65回グラミー賞で「最優秀R&Bアルバム」など３部門でノミネートされています。

PJ「グラミーにノミネートされるというのは、ミュージシャンとしてとても光栄なことだ。自分がやるべきことをやって、それを評価いただいたという証なのだから」

━━当日はステージで受賞スピーチされるのを楽しみにしています。

PJ「私もだよ！できたらいいね」

━━今回のグラミーで会いたい人はいますか？

PJ「ありがたいことに、たいていのミュージシャンに会っているけど、著名な方々が一堂に会する機会はここしかないからね。行くたびに新鮮だし、興奮する」

━━2023年の予定は？

PJ「ドキュメンタリー・フィルムを製作しようと思っている。あと、アニメのサントラの話もあったりするんだ。もちろん、次のアルバムの制作にも取り掛かりたいと思っているよ」

━━2018年以降、ソロでの来日公演は実現されていませんが。

PJ「もちろんツアーもしたい。この間までツアーをしていたんだけど、残念ながら日本には行けなかったからね。とても素晴らしいオーディエンスばかりなので、ぜひ実現させたい」

━━最後に日本のリスナーへメッセージを。

PJ「みなさんのことが大好きです。今度ソロで来日した際には、素晴らしい思い出を一緒に作ることができたらと思う。楽しみにしていてください」

photography Yosuke Torii（https://www.instagram.com/hurry/）
text Takahisa Matsunaga

PJ Morton
『Watch The Sun』
EMPIRE
https://music.empi.re/watchthesun

PROFILE
1981年米ニューオーリンズ生まれ。05年に初のスタジオ・アルバムを発表後、10年よりマルーン5のツアーメンバーとして活動し、12年に正式加入。13年にはメジャー初アルバムをリリースした。21年発表のアルバム『Gospel According To PJ』で第63回グラミーの最優秀ゴスペル・アルバム賞を獲得している。

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―You are here on tour with Maroon 5. You have been in the band for 10 to twelve years, what does it mean to you to play in Maroon 5?

PJ Morton ：It’s very special to me. It came to me at a point that I was looking for something new and it was so fresh. When I joined I never knew it would be one year, two years and now it's twelve years. The guys became my family and now I have toured the world. So it’s really special and I am very grateful to be part of it.

―With your solo career, you are celebrating your tenth anniversary next year since your major debut. Do you think your solo career and maroon 5 resonate? Is there synergy? Or could they be completely different things?

PJ Morton ：Yes, it is completely different. It makes me appreciate the other. One is pop music and one is soul and R&B music but I love them all. I have been influenced but I like that they are separate now. It allows me to be inspired and sometimes take a break and give myself enough time to get inspired by something else. Even the roles I have in both I enjoy. On one I am leading pushing everything and on the other, I get to be in the background and play a team role. It keeps me inspired by being different.

―With the song, how did it come about? At what point were you with your life and what was the motivation behind this recent album?

PJ Morton ：Before ‘Watch the Sun’ I was just in a world that was moving so fast and I’ve done three albums in three years. We had the Grammys going and all these things happening so I was really busy. Maroon 5 was in South America and the pandemic started to happen so I went home for the first time in a long time. Initially, I started to work on more music on my laptop and my computer crashed so I took a step back. When I started to work on ‘Watch the Sun’, it was a place of “Alright I am breathing so let me see what I exactly want to say and if I don’t have anything to say I won’t say anything”. I had a lot to say and ultimately, I wanted to inspire people. Originally when I called it ‘Watch the Sun’ was because it seemed like a dark time. I feel like the sun sets and rises every single day no matter what so even though it was dark if we watch the sun the darkness won’t last forever. I was at a point where I was feeling down and I wanted to encourage myself and others with the thing I was using to encourage myself.

―The second song is called “Biggest Mistake”. Could this be related to when your computer crashed?

PJ Morton ：It’s not but that is a big mistake. (laughter)

ーThe whole trajectory of the album feels like a journey from a dark place to a brighter place. Was that the intention?

PJ Morton ：Yes, eventually. When I wrote all the songs I wanted to make sure it was a journey and I did want to end it with a “Better Benediction.” Growing up at church as a preacher’s kid, we always ended church with the benediction. It was almost like a blessing before you leave. I wanted it to end on that good note and take you through the things I’ve gone through. Trouble in a relationship, trouble in life, all these things and letting you know that it’s going to be better.

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―We felt that the sounds were very organic and mindful. How was your sound making it different this time?

PJ Morton ：I am happy that this is coming through because we went away and we were together, ‘In the Country’, in a peaceful place from everybody and everything. We got to take our time and be intentional about what we play. I knew where I wanted spaces to be. I focused on the music first before any lyrics, before I said any words I wanted to make sure the music spoke to me. I think the sound of it was very important to me. Of course my band, but the sounds of the keyboards and the synths, I wanted it to be synth heavy. All of those things were very intentional.

―Why did you decide to record at the studio “In the Country”? Stevie Wonder also used this studio previously.

PJ Morton ：Well, it was still in the middle of the pandemic and lockdown. So it was the first sign of open freedom. We even had to have masks on at that time so it was just me and my friends in an open space. Even though we were in lockdown, I knew that I needed to get away from everything to hear my thoughts. It was one of the best decisions I’ve made and I had so much space and time to hear what I wanted to say clearly.

―For this album, there are various guest musicians involved, like Stevie Wonder, Nas, and Jill Scott. How did you select them?

PJ Morton ：After I did the songs, I got them from different places. Stevie Wonder, El DeBarge, Alex Isley, and JoJo, I recorded them in LA, California. I went to Stevie Studio to record his. El DeBarge, Alex and Jojo I used another studio in LA. Wale did him separately in his home. Chronixx was in Jamaica and recorded his there, we had to do zoom. We had those challenges, it was that time but thankfully I was able to be in a room with Stevie. Nas did him on his own. The way I communicated it, everybody was able to understand what I was trying to capture. I wanted to be with everybody but the people that weren’t with me, really understood the vision.

―The song by Stevie Wonder and Nas, “Be Like Water” can describe how well the recording went.

PJ Morton ：Yes, it was pretty smooth. Initially, I wasn’t going to bother Stevie. I wasn’t going to ask him. I asked Nas first but he was busy working on his album, Magic, so he didn’t get to it. Stevie asked me to come to LA for his album, so after I did a song on his album, I just decided to ask him to be on mine. So Stevie ended recording first and I sent it back to Nas with Stevie on it. His team was saying that it was always his dream to work with Stevie and it was my dream for both of them. So it just worked out that way and it all came together. I don’t know if anybody imagined Nas and Stevie on the same song together. I feel honoured that I was able to bring those together.

―So it’s a testament to the strength of the song.

PJ Morton ：I think so, I think so.

―In the title track, “Watch the Sun”, Chronixx was recorded in Jamaica. It has a reggae vibe to it and it was quite interesting.

PJ Morton ：First, it wasn’t the title of the album. I had the song first. Chronixx and I met in 2017, when my album, ‘Gumbo’ was nominated for Grammy. We were big fans of each other and since then we’ve been trying to figure out ways to collaborate. I sent him the track very early on and all I had was just the hook on it. It didn’t have any verse or anything yet. We sat with it for a while and that was a good thing about ‘Watch The Sun’. I had time, I didn’t have to be in a rush. So, we sat with it and I wrote my verse and he wrote his verse after. We are big fans of each other so it was a natural organic collaboration.

―The “The Better Benediction” you mentioned before goes well with your origins with gospel and New Orleans groove. All of this has been put together and developed into this new form of music.

PJ Morton ：I don’t think ‘Watch the Sun’ was a new side of me. In the past, I’ve done four different reggae songs or versions. I’ve always felt a strong connection to reggae music and “The Better Benediction” is my route for sure. That’s why I grew up listening to gospel music like that at my dad’s church. I wanted it to feel organic like that. I wanted it to feel like where we were, ‘In the Country’, down south where we feel good. Organic instruments, just piano guitar and drums, you know. It felt like that. I wanted it to feel like home, I wanted it to feel warm and I think we accomplished that.

―After finishing this album, do you think you discovered something new? Whether it is about your routes, your inspiration or New Orleans.

PJ Morton ：Yea, I think that I was the most vulnerable on this album. I am a storyteller and a lot of times it’s a little of my story and a lot of other people’s stories. This time is a lot of my story. That was something new I brought to the table. I think that this was my strongest as a producer because I was able to bring together everything I learned through the years into one. All the things I like I was able to put together into an album. The gospel, the soul, the reggae all these different things, all the artists that influenced me and have been apart of the journey. El DeBarge and the DeBarge family and Stevie, Jill Scott and my friends who has success with JoJo and bringing her back here. Alex Isley and the legacy of the Isley brothers, her being a version of what that is. I think I brought all of this together. I think it speaks to me who I am more than any of my albums.

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―You are nominated again for the Grammys.

PJ Morton ：Yes, three more nominations.

―What are your thoughts on winning so many Grammy Awards? How does it feel?

PJ Morton ：It’s amazing. It’s a dream come true. When I was a kid this was my dream that I would have nominations and win awards. For it to be a reality it’s just amazing. It makes me feel like I am doing what I am supposed to do. It confirms and affirms that for me. I feel blessed and it humbles me.

―Is there anything you look forward to Grammy? Is there anyone you would like to meet?

PJ Morton ：I’ve kind of already met everybody. The beautiful thing about the Grammys is that you get to see everybody in one place. All the stars and the musicians you look up to are in one place and it never gets old because it’s very rare. It’s one of those times when you will see Beyonce, Stevie and Niki Minaj, you see everybody and they are all there. That never gets old.

―What is the plan for 2023 for you?

PJ Morton ：We are looking to work on a documentary. That’s the big plan for 2023. I am working on a couple of music for films, two animated movies and some other things that I am excited about. I don’t think I am working on another album for 2023, but loads of other music. I’m still watching the sun.

―Any plans to perform here solo?

PJ Morton ：Yes, we will be doing tours. The plan was to get back to Asia three years ago. That was amazing, my first Asian tour solo. I can’t wait to get back. The fans were amazing and the appreciation is so great so I can’t wait. We don’t have it booked but it’s the plan.

―Any message for the Japanese listeners?

PJ Morton ：I want them to know that I love them and can’t wait to get back to Japan to do my own thing. On this “Watch the Such” tour we did over sixty shows in Europe, Australia, and America, and we did do Indonesia. I can’t wait to bring it here. I know we are going to have an amazing time.

photography Yosuke Torii（https://www.instagram.com/hurry/）
text Takahisa Matsunaga