イアン・ディオール来日インタビュー／Interview with iann dior in Japan

NeoL / 2023年3月29日 17時0分

10代の頃にネットにアップした音源がプロデューサー集団インターネット・マネーの耳に留まり、2019年にデビューを果たしたラッパー／シンガーのイアン・ディオール。プエルトリコ出身テキサス育ちで、現在はロサンゼルスを拠点に活動する23歳は、2020年に24kGoldnとのコラボレーション「Mood」がバイラルヒットしたことをきっかけにブレイクし、翌年にはXXL FRESHMAN CLASSや米「フォーブズ」誌の30 UNDER 30に選出された。また、2022年には、トラヴィス・バーカーやマシン・ガン・ケリーら豪華アーティストやプロデューサーを迎えたセカンドアルバム『on to better things』と、K-POPグループTOMORROW X TOGETHERとコラボレーションした「Valley of Lies」を発表するなど、多彩な活動を展開している。ここでは、1月に開催されたライブイベント「GMO SONIC」のために、待望の初来日を果たした彼に話を聞いた。　

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――日本へようこそ。今回が初来日ですか？

イアン・ディオール「ありがとう、すごく興奮しているんだ。移住したいくらいだよ（笑）」

――日本のファンも、ついにライブが観られることを楽しみにしていると思います。

イアン・ディオール「とても楽しみだよ。考えただけで鳥肌が立つくらいにね。とにかくこの体験にどっぷり浸ろうと思っている」

――まずは少しバックグラウンドについてお聞かせいただきたいのですが、出身はどちらですか？

イアン・ディオール「プエルトリコ出身で、5、6歳まで住んでいた。父親が海軍に所属していたので、我が家は引っ越しが多かったんだ。プエルトリコからテキサス、フロリア、バージニア、そして再びテキサスへと移って、今はLAに住んでいる」

――音楽に興味を持ったきっかけは？子どもの頃から音楽好きだったんですか？

イアン・ディオール「どちらかというと詩が好きで、あとはただ好きなアーティストを聴いていたように思う。音楽は音楽そのものが好きだったんだ。ある時、曲の中で物語を伝えられるのだとわかって、そこからどんどん夢中になっていった」

――どんな音楽を聴いて育ったのですか？

イアン・ディオール「母親はスペイン語の音楽をよく聴いていた。マーク・アンソニーとか、彼のようなタイプのアーティストの曲をね。父親はジェイ・Zやナズなどニューヨークのラップミュージックをよく聴いていたから、その両方のブレンドを聴いて育った。それから年齢を重ねるにつれて、自分が気に入ったものも聴くようになっていったんだ。J. コールを聴いたり、初期のカニエにも大きな影響を受けた。それに新進気鋭のアーティストたちも。2016年くらいだと、ウージー（リル・ウージー・ヴァート）やジュース（・ワールド）、カーディ（・B）とか。そんな感じで、いろんな音楽を聴いていた」

――なぜ曲作りを始めたのですか？

イアン・ディオール「ただ自己表現の手段が欲しくて、常に耳を傾けてもらいたかったから。自分のストーリーを伝えるためのアイデアに過ぎなかったんだけど、誰かがその曲を聴いて共感し、孤独ではないのだと感じてくれたことが本当にうれしかった。だから、自分の声を世の中に出して聴いてもらうためには何でもしたいと思ったんだ」　　

――2019年にSoundCloudで曲を発表し始めて、いろんなことがすごい速さで起こったわけですよね。

イアン・ディオール「最初は『A Dance with the Devil』というEPを作ったんだけど、それを聴いたプロデューサー集団（インターネット・マネー）から連絡があって、LAに行くことになった。そこから2曲だけ発表したら、2曲目がすごいことになって。それをきっかけにいろんなレーベルと会うことになり、人生が変わったんだ。インスタグラムでDMをもらって、『君をLAに呼びたいんだ。いつまでこちらに滞在することになるかわからないけど、とにかく荷造りして』と言われて。それで荷物を詰めて、テキサスを去って、二度と帰ることはなかった」

――日本では2020年に発表された24kGoldnとのコラボレーション「Mood」をきっかけに、あなたのことを知った人が多いのではないかと思います。あの曲はTikTokでバズって世界中のチャートにランクインしましたが、あなたにとってはどのような経験でしたか？

イアン・ディオール「自分にとっては、その経験自体と人々と繋がれたことがうれしかった。よく一位を取ってプレッシャーを感じるかと聞かれたんだけど、そんなことはなくて。結局のところ、僕は音楽を作るために、ここにいるわけだからね。それが自分の仕事であり、後のことは心配していない。一位になった夜も、『気晴らしに遊びに行くのではなく、仕事をしよう』とスタジオに直行したよ。でも、日が経つにつれて実感が湧いてきて圧倒されたんだ」

――昨年はセカンドアルバム『on to better things』をリリースされました。

イアン・ディオール「僕にとっては、よりパーソナルなアルバムなんだ。ファーストアルバムでは伝えられなかったストーリーを伝えたかった。だから、それぞれの曲は自分が悩んだり、うれしかったりしたときの記憶なんだ。こんなにいろんなことがあると複雑な感情を抱くこともあるし、人生が現実のものだと感じられないときもある。だからこそ、そういった気持ちをすべて曲に詰め込んで、また同じような気分になったときに振り返ることができるようにしたかった。それにファンのためにもね。僕らはまったく異なる2つの人生を生きているわけだけど、みんなが同じような悩みを抱えているから、共感することができる。それは僕にとってうれしいことなんだ」

――アルバムの中でお気に入りの曲は？

イアン・ディオール「『obvious』は好きな曲の一つなんだ。一文字も書かずにスタジオ入りして、自分の感情を吐き出した曲だから。怒りや悲しみをすべて吐き出すことができて、とてもいい気分だったし、あらゆる感情を頭の中でまとめて曲に詰め込むことができた。あの瞬間の僕の気持ちそのものなんだよ。そういう曲は永遠に忘れられないんだ」

――さまざまなジャンルや国のプロデューサーやアーティストとコラボレーションされていますが、コラボレーターを選ぶ基準は？

イアン・ディオール「相手の音楽から得られるフィーリングで決めている。もし自分が耳にしたものや、その美学など、曲に関するすべてを気に入ることができたら、ぜひコラボレーションしてお互いの世界を一つにしたいと思う。大物だから一緒にやろう、とは決して思わない。それよりも、君の仕事が好きだから一緒に何かしようよ、という感じなんだ」

――昨年はK-POPのグループTOMORROW X TOGETHERと「Valley of Lies」でコラボレーションしていましたが、どのように実現したのですか？

イアン・ディオール「前作のプロデューサーの一人だったアンドリュー・ルースが彼らと仕事をしていたときに、僕とつながりたがっていると連絡してくれた。それで彼らが気に入りそうな曲をいくつか送ったら、『Valley of Lies』が選ばれたんだ。2年ほど前にレコーディングした曲だったから、ようやく日の目を見ることができて、彼らにもあんなに気に入ってもらえて良かったよ」

――実際に会うことはできましたか？

イアン・ディオール「一緒に2回ライブしたんだ。LAに来たときに彼らのライブに出たのと、ロラパルーザでも共演した。素晴らしかったよ。僕と彼らのファン層は全然違うから、まったく違った雰囲気を体験できて良かった。彼らのファンはとても礼儀正しいんだよね。僕のファンは熱狂的で、シャツを脱いだり、大騒ぎしたり、木に飛び込んだりするんだけど（笑）」

――今年はニューアルバムを予定されているそうですが、現時点で何かシェアできる情報はありますか？

イアン・ディオール「僕らはできる限りたくさんの音楽を作るべく集中している。しばらくの間、音楽が仕事のように感じてしまっていた時期があったんだ。そして、今は再び音楽に夢中になっている。ニューヨークにも行きたいし、LAでは新しい仕事場を探す予定。マイアミにも行きたいと思っていて、そこでアルバムの残りを仕上げる計画だ。もう2ヶ月ほど作業しているけど、たくさんの曲ができている。ファンの反応を見るのが楽しみだよ」

――ニューアルバムのプロデューサーは？

イアン・ディオール「アルバムの大半はインターネット・マネーと手がける予定。LAに最初に来たときから一緒にやっている人たちだからね。また彼らとスタジオ入りできてうれしいし、やりやすいんだ。でも、外の人たちとも絶対に一緒に仕事をしたいと思っていて、僕らの作品に彼らを招き入れたいと思っている。全体を通してまとまりが感じられるようにね」

――今後はアーティストとして、そして一人の人間として、どのように成長していきたいですか？

イアン・ディオール「とにかく自分の夢に集中するだけだと思う。それが一番大切なことなんだ。僕が音楽より他の何かを優先することは絶対にない。音楽は僕と一緒に成長していくだろうし、僕は自分の音楽と一緒に進化するんだ」

photography Marisa Suda (IG)
text nao machida

Iann Dior
New Single「do it all」
Now On Sale
https://virginmusic.lnk.to/doitall
新曲「do it all」は、より良い人間になるために自身の欠陥を認める様を描いた楽曲で、「Lemonade」が大ヒットしたプロデューサー・コレクティヴのInternet Moneyがプロデュースを手掛けている。イアンは、「この曲の背景には誰かのために自身を成長させるために努めることを歌っているんだ。俺達は完璧になれることはない分、他人の期待にそえることが出来ないでもがくことがある。そんな状態を自分なりに表現した曲なんだ。また、ファンのために、かつて自分がSoundCloudにアップロードしていた時代のHIP HOPのルーツに戻りながら、同時に幅広いサウンドを追求し続けていることを示したかったんだ」とコメントしている。

Iann Dior
1999年3月プエルトリコ生まれ、テキサス育ち。高校生の時に、友達から楽曲を作って欲しいと頼まれたことがきっかけで楽曲制作をしてはアップロードすると、口コミで広がり、Internet Moneyの創設者のTaz Taylorの耳に届く。LAへ渡ってはJuice WRLDやXXXTENTACIONの作品を手掛けたプロデューサーのNick Miraと「Cutthroat」のシングルを2019年2月にリリースすると、SoundCloud上で1,300万ストリーミングを達成し、メロディアスなlo-fi HIP HOPアーティストとして確立していく。2019年4月にはTrippie Reddや 6IX9NEなどが所属する10K Projectsと契約し、デビュー・アルバム『Industry Plant』をリリース。翌年には24kゴールデンと共演した「Mood」が大ヒットし、米ビルボード・チャートで累計8週に渡り1位を獲得することで、一気に知名度を上げる。また、ファッションアイコンとしても人気があり、2022年のMCM春夏ラインのアイコン、その他MarniやTommy Hilfigerなどともコラボしている。
日本公式アーティストホームページ：https://carolineinternational.jp/iann-dior/

――Welcome to Japan!

iann dior: Thank you. I'm so excited. I want to move here [laughs.]

――I think your fans here are very excited to see your stage finally.

iann dior : I'm so excited. I got goosebumps just thinking about it. I'm really just trying to soak in the experience at all.

――Could you tell us a bit about your background? Where did you grow up?

iann dior: I'm originally from Puerto Rico. I lived there till I was about five or six. My dad was in the Navy, so we kind of just bounced around a lot. So I went from Puerto Rico to Texas to Florida to Virginia, and then back to Texas. And then to LA finally.

――How did you get into music? Were you always musical growing up?

iann dior : I think it was more so like poetry, and then, just hearing artists that I love. I was in love with the music, just for the music. And then when I found out that I could tell a story in a song as well, that's when I really started to fall in love with it.

――What Kind of music did you grow up listening to?

iann dior: A lot of Spanish music on my mom's side. She listened to Marc Anthony and a lot of people in that nature. My dad was more like Jay Z, NAS, like New York rap music. So it's a blend of both. And as I got older, I just branched off into things that I love. So I listened to J. Cole and early Kanye was big for me. And then the up-and-coming people, like at the time in 2016, Uzi, Juice, Cardi and all those people. So it's kind of a blend of everything together.

――Why did you start writing songs?

iann dior: It was really just because I wanted a way to express myself and I wanted to be heard whenever I did. So it was just the idea of telling my story, and then somebody hearing that song and relating to it and feeling like they weren't alone when they heard it was something that really made me happy. So I really just wanted to do whatever I could to get my voice out there and be heard.

――You started releasing your music on SoundCloud in 2019, so I guess it all happened very quickly for you?

iann dior: I had made an EP and it was called “A Dance with the Devil.” And from that, I got hit up to go to LA because they heard the music and it was a group of producers [Internet Money.] And from there, I just put out two songs and the second one just went crazy. It led to all the label meetings and pretty much my life changed after that. They DMed me on Instagram like, “I want to fly you out to LA. I don't know how long you're going to be here. Just pack your bags.” So I just packed my bags and I left and never went back home.

――I think a lot of people in Japan got to know you through "Mood" with 24kGoldn in 2020. That song went viral on TikTok and became a chart success worldwide. How was it like for you?

iann dior: It was cool. For me, it was the experience and the connection with the people. But with the number one stuff, people were always asking me if I feel pressure, but no, at the end of the day, I’m here to make music. That’s my job and I’m not worried about what comes after. The night it went number one, I just went straight to the studio like, let’s just work and not go party and get distracted. But as the days went on, it just started to hit me and I was like, whoa.

――You released your second album “on to better things” last year. How was it making that album?

iann dior: The album for me was more personal. I wanted to tell a story that I didn't really get to in the first album. So each song was a memory of a time where I was either troubled or I was happy. Because with everything going on, you can still have mixed emotions, and sometimes you just don't even feel like life is real. So I just wanted to take all those feelings and put them in songs so that whenever I do feel like that again, I can look back on that. And even for the fans, it makes me happy to know that even though we live two completely different lives, you can still relate because everybody has similar problems.

――What is your favorite song on the album?

iann dior: I would say "obvious" is one of my favorites. Because I didn't write a single word, I just went in there and said how I felt. And it just felt so good to just release all that anger and sadness, and just all these emotions that I was combining in my head and put it on the track. That's just like how I was feeling in that moment. So those are the songs that always stick with me forever.

――You have collaborated with many producers and artists from different genres and countries. How do you select people that you want to create with?

iann dior: I go off of the feeling that their music gives me. If I love what I'm hearing and I love the aesthetic and I love everything about it, that's whenever I want to collaborate with them and put our worlds together. It's never like, oh, they're big, let me work with them. It’s more like, I actually like what you do, so let's do something together.

――You also collaborated with the K-Pop group TOMORROW X TOGETHER last year on “Valley of Lies.” How did that come about?

iann dior: One of the producers from the last album, Andrew Luce was working on some stuff with them, and they wanted to connect with me. So they talked to him about it and he called me. I just sent them a couple of songs that I thought maybe they would love and they picked "Valley of Lies."　I'd recorded that maybe two years ago now. So it was cool that it finally came out and they loved it as much as they did.

――Have you got to meet them?

iann dior: We did two shows together. When they were in LA, I went to their show. And then we did Lollapalooza together as well. It was amazing. Because my demographic is a lot different than theirs, so it was cool to just experience that from a whole different side, like their fans are very respectful. My fans are like maniacs, they'll take their shirts off and freak out, jump in the trees and everything [laughs.]

――We heard that you are planning to release new album this year. Is there anything you could share with us at this moment?

iann dior: We've been locked in just making as much music as possible. I feel like I'm in that stage where for a while, music kind of started to feel like work. And now I'm at that point where I fell in love with it all over again. We want to go to New York and work or for LA we’ll find new spots to work and stay. And we want to go to Miami and I think Miami is where we're planning on finishing the rest of the album. So it's been two months of working on it, but we're making a lot of songs. I'm excited to put this one out and see what the fans think of it.

――Who are some of the producers on the album?

iann dior: So majority of the album, it's going to be with Internet Money. Because those are the people that I first started working with when I came out here. So it's nice to just get back in with them and it's familiar. But we're definitely going to work with people outside and just bring them into what we're doing. So it still feels cohesive throughout the whole project.

――How would you like to evolve as an artist and as a person?

iann dior: I think just staying focused on my dreams. It's the most important thing. I never put anything else in front of my music. It's going to grow up with me and I'll evolve with my music.

photography Marisa Suda (IG)
text nao machida