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「奈良美智論」の新たな地点、『奈良美智 終わらないものがたり』世界共同刊行

NeoL / 2023年4月14日 15時0分

「奈良美智論」の新たな地点、『奈良美智 終わらないものがたり』世界共同刊行




初期から近作までの作品から旅でのスナップショット、貴重資料など約400点の画像を収録。作品集としても充実の画期的モノグラフ「日本語版」オリジナルとして、新作9点を特別掲載。


奈良美智 終わらないものがたり 書影


青幻舎は、世界で活躍するアーティスト・奈良美智のアップデートし続ける表現・思考の変遷を、初期から近作までの作品を軸にし、長期におよぶ取材・関係者の証言・豊富な貴重資料を駆使しながら、奈良美智の原点から今日、そして未来を展望する、画期的モノグラフ『奈良美智 終わらないものがたり』を2023年4月下旬に刊行する。


ルーツとしての東北から、音楽に出会った少年期、愛知県立芸術大学、ドイツ修行時代、熱狂的支持を得た2000年代の葛藤、東日本大震災がきっかけとなった北への回帰、そして未来への想いを5章に分けて展開。

本書は、奈良美智とアジアと欧米をボーダーレスに活躍する美術史家との緊密なコラボレーションにより結実したものだ。


■ 書籍概要
本書は、イギリスのアート専門版元であるPhaidonが、2020年3月に世界に先駆けて英語版を刊行した『Yoshimoto Nara』の日本語版。
Phaidonの英語版は、サイズB4変形(縦290×横250ミリ)・クロス装ハードカバー・重量約2キロというボリュームで、価格も日本円で13,000円という高額なものだった。
日本語版については、奈良の日本の読者に向けての想いから、気軽に手にできるサイズと価格を目指した。デザインは、奈良の信頼が厚く、これまで多くの奈良の作品集を手掛けてきた山本誠が参加し、全面的レイアウト変更を実施。サイズは、B5に縮小しつつ、384頁を支えるハードカバーながら芯ボールの厚みを薄くさせ、丈夫さと軽量化を実現した。価格も英語版の半額の約6,000円に。カバーの作品も、英語版とは変更。

印刷は、山本誠とチームとして、奈良作品集の制作実績のあるアベイズム。本書では改めて色校正を重ね、奈良氏にもOKをいただいたものに仕上げた。


奈良氏は自身のツイッターで、日本語版についてつぶやいている。
「美術関係者に会うと自分のことに関して'00年代から何もアップデートしていない方が多くて、自分の美術界での存在はそんなもんなんだと妙に納得する。生まれてからどういうふうに美術に出会い関わってきたか、そしてつい最近のことまで語られている本です!アップデートされた奈良美智論をどうぞ!」


著者であるイェワン・クーンも、本書の中で次のように奈良を語っている。
「彼の美術は、自身が深く愛する音楽と同様にいつも新鮮で、今ここに必要とされ、流動的なものだ。奈良美智の美術は、常に前進するための新しい方法を模索し続けている。」




■ 内容
◆1章 それは音楽から始まった
奈良氏の原点をたどる。青森県・弘前という土地、家族、音楽との出会い、そしてアーティストになるための大きな転換点など
……8歳のときに自作した簡易なラジオは、自身がより大きな世界に存在していることを理解させてくれる大切な相棒となった。奈良はある晩、家のラジオから流れてくる聴き慣れない音楽に寝ぼけ眼を覚ました。彼には理解できない言葉であったが、メロディーとリズムが魅力的に感じられた。奈良は、同じ青森県内の三沢にあるアメリカ空軍基地内の音楽専門ラジオ局から流れてくる曲を偶然拾ったのだった。以後、深夜になるとこっそりとラジオを聴き、最新のアメリカのロックやカントリーミュージックの刺激に触れるようになった。(本書15頁)






飼い猫と奈良、弘前・1966年





公園でのライブで歌う奈良、 名古屋・1984年


◆2章 頭の大きなあの少女たち
あの少女たちの誕生と成長、そして奈良氏の変化。少女たちの独立した人格としての存在
……本章の締めくくりには、奈良が2001年以降に目指した新たな美術の方向性を紹介する。それは、あの頭の大きな少女たちが「成長する」ための舞台を整える一つの過程でもあった。1991年の手にナイフを持つ赤い服の小さな女の子が、いつしか一人で黙想する少女へと変わっていくのだ。(本書55頁)





頭の大きな少女を主題の始まりを示す金字塔的な作品  左:《The Girl with the Knife in Her Hand 》1991年  右:《The Girl with the Knife II 》1993年





瞳に細やかな表情を宿す少女たち  左上:《Twins I 》2005年  左下:《Twins II 》2005年  右:《Shallow Puddles 2004 》2004年


◆3章 他者との協働
ドイツからの帰国後、奈良を待ち受けていた過剰なまでの熱狂。その喧噪から逃れるように、他者と共同作業を試み、平静を取り戻していった頃
……彼いわく、それは自分自身から逃れること、より正確に言えば彼の成功に伴う種々の要求など、一連の喧騒から逃れる手段であった。こうしたプロジェクトの多くは厳密に言うとコラボレーションではなく、奈良がさまざまなアーティスト、デザイナー、ミュージシャン、陶芸家と密に関わり合うーー実際に横並びになって一緒に作業をすることもあれば、アーティスティックな共通項を持ちながら仕事をすることもあったーークリエイティヴなつながりを介した試みであった。うまくいくときもそうでないときもあったが、こうしたつながりによって奈良は再び心に平静を取り戻し、自身の作品や制作について熟考し、私的な世界と公的な世界との折り合いをつける機会を得たのであった。(本書133頁)





クリエイティブユニットgrafとのコラボレーション、金沢・2006年






イギリス人アーティストのデイヴィッド・シュリグリーとのコラボレーション、2000年~


◆4章 カメラを携えての旅
奈良氏の写真は、旅の先々で触れ合った人々や世界に対してどのように自分自身を位置づけているかを明らかにする
……手先を動かしていないと落ち着かない性分の彼にとってカメラは、頭に浮かんだ束の間の思いや、目の前を過ぎ去っていく世界の表情をとどめてくれるものなのだ。カメラでとらえたイメージは他の技法による将来の作品のために蓄えられ、一つのインスピレーションの宝庫を形成する。しかし、おそらくそれと等しく重要なのはレンズを通して何かを発見する感覚がもたらされることであり、それこそが奈良の想像力を刺激しているのだろう。(本書199頁)





旅先のアフガニスタンを描いたドローイング、2002年





島の人々のポートレイト、サハリン・2014年


◆5章 北への回帰
奈良は、東日本大震災をきっかけに、ルーツである北の地域に強い精神的つながりを見出し、それはいまもなお制作に大きく影響し、新たな地点がはじまっている
……2011年以降、奈良は北国の人々とともに、地域に根ざした小規模プロジェクトに以前にも増して関わるようになった。美術館やギャラリーでの展覧会に参加しなくなったわけではないが、近年は表舞台よりも、ますます自分と同じような考えをもつ人々ーーと出会える場所に赴くことが多くなった。(本書304頁)





原発再稼働への抗議デモのために使用を許可したドローイング、1998年






飛生の子どもたちを描いたドローイング、2017年



発売予定:2023年4月下旬
書名:奈良美智 終わらないものがたり
著者:イェワン・クーン
アートディレクション:山本誠
翻訳者:河野晴子
判型:B5変
製本:上製
総頁:384頁
定価:6,600円(本体6,000円)



■ 特設ページ
https://special.seigensha.com/sp-nara


■ プロフィール
奈良美智(なら・よしとも)
1959年青森県弘前市生まれ。美術家。1987年愛知県立芸術大学大学院修士課程修了。
1988年ドイツ、デュッセルドルフ芸術アカデミーに入学、卒業後もケルンを拠点に作品を制作。2000年に帰国、以後精力的に作品を制作し、国内外の展覧会で発表を続ける。


イェワン・クーン(Yeewan Koon)
美術史家。香港大学芸術学部人文学科芸術学系准教授。ロンドン大学学士、修士。ニューヨーク大学博士。中国や日本の美術および建築を専門とするかたわら、コンテンポラリーアート分野の評論家やキュレーターとしても活動する。

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https://www.neol.jp/art-2/

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