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『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』 ポール・キング監督来日インタビュー

NeoL / 2023年12月4日 17時0分

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』 ポール・キング監督来日インタビュー

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『パディントン』シリーズでおなじみのポール・キング監督による最新作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』が、12月8日に全国で公開される。映画は長年にわたって世界中の子どもたちに愛されてきたロアルド・ダールの児童書『チョコレート工場の秘密』に登場する、エキセントリックな工場長ウィリー・ウォンカの“夢のはじまり”を描いた物語。
過去には『夢のチョコレート工場』(1971)と『チャーリーとチョコレート工場』(2005)という2つの名作で、ジーン・ワイルダーとジョニー・デップが挑んだウォンカ役だが、本作ではチョコレート店を開くという夢を抱いてチョコレートの町にやってくる若き日のウォンカを、『君の名前で僕を呼んで』や『DUNE/デューン 砂の惑星』のティモシー・シャラメが歌やダンスを交えてフレッシュに演じている。ここでは公開を前に来日した監督にインタビューを行い、作品への想いやキャストの魅力について聞いた。


――日本へようこそ! 『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』の公開おめでとうございます。『パディントン』シリーズが大好きなので、監督がウォンカの映画を手がけると知って楽しみにしていました。


ポール・キング監督「コンニチハ! どうもありがとう。ウォンカの映画を手がけることができたのは、私にとっても素敵な機会となりました」


――ロアルド・ダールによる児童書『チョコレート工場の秘密』は、世界中で多くの子どもたちに愛されています。その一方で、大人になってから読むと意外とダークな世界観ですよね。監督はこの物語に、どのような思い出がありますか?


ポール・キング監督「私自身、この物語とは子どもの頃に本を通して出会いました。『チョコレート工場の秘密』は、自分ひとりで読むことができた最初の本だったんです。大人のようにひとり読みできたことがうれしくて、ページがバラバラになるまで何度も何度も読み、その度に笑わせてもらったのを覚えています。私はワイルドな登場人物たちが大好きで、ウィリー・ウォンカやウンパルンパのような不思議なキャラクターや奇妙な子どもたちは、とてもカラフルでちょっとクレイジーだと感じていました」


――映画化したいと思った理由は?


ポール・キング監督「プロデューサーのデイビッド・ヘイマンから、若き日のウォンカを描く映画の構想を聞いて、本を読み直してみたんです。すっかり忘れていたのですが、こんなにも感情的な物語だったのか、と驚きました。まるでディケンズの文学のような、非常に貧しい家庭で育った男の子の物語なんですよね。最終的にチャーリーの夢が叶うと、思わず涙してしまいました。そして、ずっとロアルド・ダールの本が大好きだった自分にとって、喜劇と奇妙な登場人物と深い心の鼓動を組み合わせることこそが、『パディントン』シリーズでやろうとしていたことだったのだと気づいたんです。それまでは、過去にロアルド・ダールの本を映像化した偉大なフィルムメーカーたちに萎縮していたのですが、デイビッドが私を適任だと考えた理由がわかった気がして、ぜひ挑戦してみようと思いました」












――本作は、ウィリー・ウォンカがチョコレート工場を開く前の物語を描いています。“夢のはじまり”というテーマは幅広い世代に響くテーマです。子どもたちにとってはエキサイティングですし、大人にとってはちょっとほろ苦さもありますよね。


ポール・キング監督「面白いテーマですよね。ウォンカは“町に出てチョコレート店を始める”という、明確な夢の持ち主です。彼は最初の曲で、“才能があって一生懸命働けば、この町では誰だって成功できる”と歌うのですが、子どもなら誰もがそう考えるように、彼もそう信じているんですよね。私たち大人は子どもたちに、“学校で勉強をがんばって自分の心に従えば、素晴らしい人生が送れる”と教えるものです。とはいえ、人生は常に素晴らしいわけではない。子ども向けの物語でありながら、世界は時に残酷な場所だと伝えているところが興味深いと思いました。


また、ジーン・ワイルダーが(1971年の映画で)歌った『Pure Imagination』という曲には、“世界を変えたいって? そんなの簡単さ”という歌詞があります。でも、世界は美しいお花畑ではないので、人生でさまざまな挑戦をしても、常にうまくいくわけとは限りません。本作では若きウィリーの姿を通して、たとえ物事がうまくいかなくても、世界を少しでも良い場所にする勇気を持とう、と伝えています。私は観た後に、より良い人間になるためにもう少しがんばってみよう、と思える映画が好きなんです」


――ウィリー・ウォンカ役のティモシー・シャラメは、演技はもちろん、歌も上手で驚きました。


ポール・キング監督「とても繊細で誠実な美しい声の持ち主ですよね。ティモシーのすごいところは、ただ歌って踊れるだけでなく、それを通して感情を伝えることができるんです。その両方を同時にこなせるのは本当に特別なことで、特に最後の『Pure Imagination』は完璧だと思います」


――なぜティモシー・シャラメがウォンカ役に適していると思ったのですか?


ポール・キング監督「『君の名前で僕を呼んで』(2017)を観たときに、ティモシーにただただ魅了されたことを覚えています。本当にあの役の少年のように見えたのですが、それが素晴らしい演技によるものなのか、それとも完璧なキャスティングなのかわかりませんでした。でも、その年の後半に『レディ・バード』(2017)を観たら、ティモシーがまったくの別人として登場したんです。とても面白くて皮肉っぽいキャラクターを演じていて、彼が完全に演技を理解している、素晴らしい役者であることに気づきました。ウィリー・ウォンカは、若手の俳優にとっては難しい役だと思います。過去に2人の才能豊かな俳優(ジーン・ワイルダーとジョニー・デップ)が演じてきたわけですしね。本作はウォンカの人生の異なる時期を描いているので、ティモシーは自ら若き日のウォンカを形づくり、自分のものにする必要がありました。それをこなすには、かなり特別な才能が必要だと思います。でも、彼はとてつもない才能の持ち主なんです」


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――予告編にも『夢のチョコレート工場』(1971)を想起させる、ウォンカの「Scratch that, reverse it」というセリフが含まれていますが、ジーン・ワイルダー主演の同作や、ジョニー・デップ主演の『チャーリーとチョコレート工場』(2005)から得たインスピレーションはありますか?


ポール・キング監督「2つの作品には、それぞれに独自の魅力がありますが、本作には特に『夢のチョコレート工場』からのインスピレーションが含まれています。私はあの映画を観て育ったので、その対となる作品として存在しうる映画を作りたかったんです。それを基に時代も設定して、最終的に1948年から1949年頃に決まりました。私たちは突然、MGMミュージカルやハリウッドのミュージカルの黄金時代に連れて行かれたわけですが、それは私にとってエキサイティングな時代背景でした」 


――ウィリー・ウォンカは本の中でも謎めいたキャラクターですが、本作のウォンカはどのように作り上げていったのですか?


ポール・キング監督「興味深いことに、本にも若き日のウィリー・ウォンカの話が書かれているのですが、チョコレートで宮殿を作ったとか、真実かどうか見極めるのが難しいような内容なのです。私としては、ウォンカについての疑問にいくらか答えつつ、少しだけ謎も残したいと考えていました。ウォンカに関しては、すべてを明かさないことが重要に思えたのです」


――ティモシーとの撮影中に印象的だったことはありますか?


ポール・キング監督「現場でのティミーは驚異的でした。完全に自分をコントロールしていたのです。特に歌やダンスが含まれている作品では、ビートに合わせて演じたり、決まったタイミングで特定の動きをしたりする必要があって、かなりのコントロールが必要になります。ウィリー・ウォンカはいつでも何でもできる型破りな人物ですが、さらに本作では、感情的にも作品のハートのような存在なんです。彼がそのすべてを同時にこなすことができるのは、本当に特別なことだと思います。現場では1テイク撮るごとに私の隣に来て、一緒に撮影したシーンを見直して話し合いました。そうすることが苦手な俳優もいるのですが、彼は自分の演技を客観的に見て、どうしたらもっと良くできるか分析するのが得意なんです。ティミーは最初から最後まで真のコラボレーターでいてくれました。できることなら、常に私の隣に座って、どうするべきか教えてほしいくらいです(笑)」







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――本作にはチャーリーは登場しませんが、ヌードルという孤独な少女が登場します。あのキャラクターに込めた想いは?


ポール・キング監督「ウィリー・ウォンカは常に奇想天外なお菓子のアイデアで頭がいっぱいで、時にとても無責任に見える、まるで子どものような大人です。そこに、大人のような子どものキャラクターを登場させたら面白いのではないかと考えました」


――ヌードルはとても大人っぽいですよね。


ポール・キング監督「ですよね! それを表現することができる役者は、なかなかいません。ケイラ(・レーン)を見つけたときは、『やっと会えた!』という気分でした。彼女は本当に素晴らしいんです。子どもっぽい大人と大人っぽい子どものコンビは、本当に面白いと思いました。


それに、ヌードルは酷い大人たちに囲まれて、とても辛い人生を送ってきたんです。ウィリー・ウォンカが『世界は素晴らしい場所で、何だってできる』と信じて育った一方で、ヌードルの子ども時代は『黙って働け』というもの。だからもちろん、2人の人生観は大きく異なるわけですが、どちらも間違ってはいないのです。本作が描いているのは『パディントン』のような温かい世界ではなく、意地悪な大人たちも登場します。そして、それこそがロアルド・ダールの世界観だと感じたのです。ウィリー・ウォンカは世界の厳しさを学ぶ必要があり、ヌードルは厳しい世界の中にも優しさや素晴らしいことはあるのだと学ぶ必要がある。でも、もしウィリー・ウォンカに出会えたら、どんなことでも可能なのです」


――監督の作る映画は、子どもも大人も妥協せずに楽しむことができるのが魅力です。そのような作品を手がけるのは容易ではないと思いますが、映画作りにおいて、監督が大切にしていることは何ですか?


ポール・キング監督「どうもありがとう。私は誰もが楽しめる映画が大好きなんです。自分にとって大きなインスピレーションとなったのは、チャーリー・チャップリンです。チャップリンの作品は、いつ観ても本当に面白いと思います。『キッド』(1921)を観て涙を流さない人はいないはず。とても美しい作品ですよね。あのような作品には、子どもだけに向けたジョークも、大人だけに向けたジョークもありません。すべてがみんなに通じるのです。私が理想とする“家族向けの映画”は、子どもも大人も関係なく、誰もがすべてのジョークに笑うことができて、そして最後に泣けるもの(笑)。子どもだけでなく、自分自身も家族のみんなも友だちも楽しめる、そんな“家族向けの映画”を作りたいと思っています」


――最後に、映画を楽しみにしている日本の映画ファンに伝えておきたいことはありますか?


ポール・キング監督「ぜひ映画館で楽しんでください。ヒュー・グラントが演じたウンパルンパのおかしなダンスや歌もお楽しみに(笑)。素晴らしいですよ!」













text nao machida



映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』
12月8日(金)全国公開
公式サイト:wonka-chocolate.jp  
監督・脚本:ポール・キング(『パディントン』(16)『パディントン2』(18))
製作:デイビッド・ヘイマン(「ハリー・ポッター」シリーズ)
原案:ロアルド・ダール
出演:ティモシー・シャラメ/ヒュー・グラント/オリビア・コールマン、
サリー・ホーキンス/ローワン・アトキンソン(「ミスター・ビーン」シリーズ)

配給:ワーナー・ブラザース映画 
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