異なるように見える断片が一つの表面で共存することができるペインティングでの対話。クリスチャン・プーレイ 新作展「Geographies of Love」
NeoL / 2024年5月23日 14時0分
Image rights ADAGP, 作品名, 2024 Christiane Pooley
Gallery 38では、クリスチャン・プーレイの新作展「Geographies of Love」を開催中。
1983年生まれのプーレイは、南米・チリの中でもとりわけ植民地化による複雑な歴史を持つ土地で幼少期を過ごす。その後チリで絵画を学び、ロンドン、パリへと拠点を移しながら画家として高い評価を獲得してきた。自らが育った土地や家族のアーカイブ写真をベースに生み出される夢と現実の狭間のような情景は、イメージの大部分が抽象化されており、柔らかな印象の中でノスタルジーに陥りそうな鑑賞者に、大胆で力強い絵筆の跡とどことなく不穏な空気がふと緊張感を与える。
2021年に開催したGallery 38での初個展「Distance」では、パンデミック禍での他者との「距離」に着想を得、転位と不在の概念をテーマにした作品を発表した。新作ではより内省的な感情に突き動かされ、深い自己認識の世界に入り込んだというプーレイは、今回の制作を通し「Belonging(帰属する)」という感情、そして個人と「Home(家、故郷)」との関係性という一貫して思考し続けてきたテーマをさらに探求。「Home (家、故郷)」とは、個人、家族、国、地域が他との関係を理解するための最も基本的な社会的概念の一つ(『Home—So Different, SoAppealing.』展(LACMA Museum、2017年)より)。」離れているからこそ「Home(故郷)」はより概念化し、現実と想像が作り上げる産物となりながらも、地理的環境、文化的、社会的、感情的風景の集合体として知覚される「自分」を探求する上で、物理的な地図上の点ではなく個人史や感情の中にある「場所」としてむしろ重要さを増していると言う。「絵画上の架空の空間が本当の帰属感を創り出すことができるのか?」という問いに対し、彼女はシモーヌ・ヴェイユの言葉を引用する。「根ざすことは、おそらく人間の魂にとって最も重要でありながら最も認識されていない必要性である」(シモーヌ・ヴェーユ 「根をもつこと」山崎庸一郎 訳、春秋社、2020年)
作家は、異なるように見える断片が一つの表面で共存することができるペインティングという「言語」を通して、鑑賞者と対話することを意図する。本展覧会の作品「Geographies of Love」では、現実を見る別のレンズ、この場合は場所や人々への「愛」や「愛着」を用いて、異なる視点を組み合わせるという行為を促す。ある土地に根ざす感覚、特定の場所やコミュニティへの感情的なつながりは、個人の心理的風景と社会的アイデンティティを形成する上で重要な役割を果たす。観客が彼女の風景の前に立ち、風景に佇む人物が誰なのか、そこがどこなのか、自分自身の記憶と対話し、絵画の前を往復しながらさまざまな角度からその風景の奥を見つめようとする。紛争や混乱に満ちた現在の中で、自身の中にある折り重なる時間や記憶のレイヤーに触れながら絵画と向き合うこと。他者への尊厳に由来する対話こそが重要な世界において、その力は真伨に響く。
Image rights ADAGP, 作品名, 2024 Christiane Pooley
Image rights ADAGP, 作品名, 2024 Christiane Pooley
クリスチャン・プーレイ 新作展「Geographies of Love」
5月11日(土)〜6月30日(日)
Gallery 38
https://www.gallery-38.com/
住所:東京都渋谷区神宮前2-30-28
Tel:03-6721-1505
開館時間:12:00 – 19:00
休館日:Mon, Tue, Holiday
入館料:無料
関連記事のまとめはこちら
https://www.neol.jp/art-2/
外部リンク
- 特定の場所における俯瞰と実体験をめぐる思弁。ジャクリーン・サーデルの日本初となる個展「Bliss!」
- 写真を通じ「事物の記憶」を可視化する作家による、美術館での初個展。鈴木のぞみ 「The Mirror, the Window, and the Telescope」
- 未知の道の共有。俳優、プロデューサーとしても知られるNorman Reedus日本初の写真展「IN TRANSIT」
- 磯村暖 、菊池遼、西頭慶恭、菅原玄奨、高橋直宏、米村優人によるグループ展「真実はそれが真実であるからでなく有意義であるから、我々の生活に価値がある」
- 異なるように見える断片が一つの表面で共存することができるペインティングでの対話。クリスチャン・プーレイ 新作展「Geographies of Love」
この記事に関連するニュース
-
【LURF GALLERY】7名の実力派作家によるグループ展「CONCERTO II」を2024年12月21日(土)よりルーフギャラリー2Fにて開催
PR TIMES / 2024年12月11日 12時45分
-
物質と空間のはざまに漂う場の記憶を形に。鈴木基真による個展「あわいとあいだ」
NeoL / 2024年12月9日 17時0分
-
tHE GALLERY OMOTESANDOにて、12月14日(土)より、グループ展「未来予想図」の開催が決定。
PR TIMES / 2024年12月9日 15時15分
-
【銀座 蔦屋書店】梅本匡志の個展「ファンタを注ぐ時はちょっとずつ超ゆっくりね」を12月7日(土)より開催。自身の日常から“現代/今”を切り取る。
PR TIMES / 2024年12月2日 11時15分
-
近代から現代までの美術家たちが獲得してきた「色彩」とその表現から色彩の役割を考察「カラーズ―色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ」
NeoL / 2024年11月28日 12時0分
ランキング
-
1冬場に活躍! 「窓下ヒーター」おすすめ4選 ヒーターの熱で結露防止&冷気の侵入をシャットアウト!【2024年12月版】
Fav-Log by ITmedia / 2024年12月23日 13時33分
-
2東京湾アクアラインが値上げ!? 普通車200円、特大車1000円最大高く… 「困る」派「歓迎」派など賛否両論!? 来春から約1年限定実施の理由とは
くるまのニュース / 2024年12月23日 9時0分
-
317万603組…「離婚した夫婦の88.3%」は要注意、別れてから2年後に「取り返しがつかなくなること」【弁護士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月23日 14時15分
-
4葬送業界に激震、中国資本傘下の火葬企業が「葬儀事業」参入 暗黙ルール破り「利益偏重」 「侵食」~火葬(下)
産経ニュース / 2024年12月23日 8時0分
-
5お育ちのよい人はハンドバッグをどこに置くかご存じ?知らないと「地味に恥をかく」テーブルマナー
OTONA SALONE / 2024年12月22日 19時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください