写真を通じ「事物の記憶」を可視化する作家による、美術館での初個展。鈴木のぞみ 「The Mirror, the Window, and the Telescope」
NeoL / 2024年5月27日 18時0分
《The Rings of Saturn:舷窓-アイリッシュ海》2020年、北川正人蔵
写真:木暮伸也
ポーラ美術館(神奈川県・箱根町)は、HIRAKU Project Vol. 16 鈴木のぞみ「The Mirror, the Window, and the Telescope」を2024年6月8日(土)から12月1日(日)まで開催。美術の表現と美術館の可能性を「ひらく」という思いが込められた本プロジェクトは、観覧料無料で1Fアトリウム ギャラリーにて観ることができる。
HIRAKU Projectは、過去にポーラ美術振興財団の助成を受けた作家を紹介する展覧会シリーズ。第16回目となる今回は、写真の原理を用いて、身近な日用品や古い家屋に潜む記憶や光の痕跡を可視化し、オブジェとイメージによってインスタレーションを生み出す鈴木のぞみを紹介する。
大学で絵画を専攻していた鈴木は、独学で写真技術を学び始め、2012年に自身のアトリエであった築90年の古民家の木枠付き窓ガラスを用いて作品を制作した。その窓から見えたであろう風景を撮影し、感光乳剤を塗布した窓ガラスそのものに焼き付けたのだ。この邸宅のかつての住人が眺め、そして窓そのものが見つめてきた何気ない景色を、使い込まれた窓ガラスにおぼろげな像として現出させた。鈴木は、こうした日常のありふれたものに宿る「事物の記憶」を浮かび上がらせ、ものに直接定着させることを試みている。
《The Rings of Saturn:燭台付き鏡-蝋燭》2021年、沖一成蔵
写真:木暮伸也
2019年に渡英した作家は、船の窓や望遠鏡、ルーペといった様々な遺物や視覚装置を入手し、その来歴を調査した。そして、人類の視覚体験や近代化を切り開いてきた科学や技術の進歩、ある時代や社会が共有する感覚や嗜好性を反映したイメージをそれらに焼き付け、「大衆の記憶」を暗示するような作品へと昇華させている。
今回のタイトルにあるMirror(鏡)と Window(窓)は、絵画や写真の発展に不可欠だった要素であり、Telescope(望遠鏡)は人間の「見たい」という欲望を叶えた科学装置。それらが留めてきた記憶や痕跡と真摯に向き合う鈴木の作品は、写真表現の原初的な姿や、大きな 歴史の流れと私的な「個」のストーリーに潜む、去りゆく時間や消えゆく光景について思いをはせる機会を我々に与えてくれるだろう。
《The Rings of Saturn:眼鏡-クリスタル・パレス》2020年、村田真蔵
写真:森政俊
作家にとって美術館での初の個展となる本展では、窓を用いた最初期の作品から、2019年のイギリス滞在中に出あった様々な遺物や視覚装置に、近代の人間の思想や営みを重ね合わせて制作された「The Rings of Saturn」シリーズまで、新作を含む約20点の作品を紹介。
《Other Days, Other Eyes:田中邸2階寝室の窓》2021年、作家蔵
写真:木暮伸也
HIRAKU Project Vol.16
鈴木のぞみ「The Mirror, the Window, and the Telescope」
会期:2024年6月8日(土)-12月1日(日)会期中無休
会場:ポーラ美術館 1F アトリウム ギャラリー
観覧料:無料
主催:公益財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館
協力:rin art association、riverside farm.、横浜市民ギャラリーあざみ野
企画:山塙菜未(ポーラ美術館学芸員)
展覧会特設サイト:https://www.polamuseum.or.jp/sp/hiraku-project-16/
ポーラ美術振興財団の取り組みについて:
https://www.polamuseum.or.jp/about/pola-art-foundation/
■同時開催
「フィリップ・パレーノ:この場所、あの空」
※別途入館料が必要です
会期:2024年6月8日(土)-12月1日(日)
会期中無休
会場:ポーラ美術館 展示室 1、2、5、屋外
展覧会特設サイト:https://www.polamuseum.or.jp/sp/philippe-parreno/
ポーラ美術館
開館時間:午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:会期中無休
※2024年5月20日(月)-31日(金)、6月7日(金)展示替え休館、6月1日(土)-6月6日(木)常設展示室のみ開館
所在地:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山 1285
TEL:0460-84-2111
入館料[6月8日より]:大人¥2,200/大学・高校生¥1,500/中学生以下無料/障害者手帳をお持ちのご本人及び付添者(1名まで)¥1,100
※すべて税込 団体割引あり
公式Webサイト:https://www.polamuseum.or.jp/
鈴木のぞみ(すずき のぞみ) 略歴
1983年、埼玉県生まれ。埼玉県在住。2007年、東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻卒業。2015年、東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了。2022年、同大学院博士後期課程修了。2016 年、「VOCA展 2016 現代美術の展望―新しい平面の作家たち」(上野の森美術館)VOCA 奨励賞受賞。2018年度ポーラ美術振興財団在外研修員(イギリス)。
近年の主な個展に、「Words of Light(光の言葉)」 第一生命ギャラリー(東京、2024年)、「The Rings of Saturn / Mirror with a Memory」rin art association(群馬、2021年)など。
主なグループ展に、「セレンディピティ 日常のなかの予期せぬ素敵な発見」東京都写真美術館(2023年)、「潜在景色」アーツ前橋(群馬、2022年)、「無垢と経験の写真 日本の新進作家 vol.14」東京都写真美術館(2017年)、「NEW VISION SAITAMA 5 迫り出す身体」埼玉県立近代美術館(2016 年)などがある。作品は東京都写真美術館、アーツ前橋、ガトーフェスタ ハラダなどに収蔵されている。
関連記事のまとめはこちら
https://www.neol.jp/art-2/
外部リンク
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- 写真を通じ「事物の記憶」を可視化する作家による、美術館での初個展。鈴木のぞみ 「The Mirror, the Window, and the Telescope」
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- 磯村暖 、菊池遼、西頭慶恭、菅原玄奨、高橋直宏、米村優人によるグループ展「真実はそれが真実であるからでなく有意義であるから、我々の生活に価値がある」
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