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テクノロジーやメディアがいかに人々の心理に影響を及ぼしているか。アメリカを代表する作家の一人、トニー・オウスラーの個展「Transmission」

NeoL / 2024年9月10日 12時0分

テクノロジーやメディアがいかに人々の心理に影響を及ぼしているか。アメリカを代表する作家の一人、トニー・オウスラーの個展「Transmission」

Tony Oursler, a still of 《My Saturnian Lover(s)》2016-2017, Wood, foam, acrylic paint, flourescent paint, resin, 2-channel video, 13 min 41 sec



六本木のSCAI PIRAMIDEにて、10月4日よりアメリカを代表する作家の一人、トニー・オウスラーの個展「Transmission」が開催。
オウスラーは、テクノロジーやメディアがいかに人々の心理に影響を及ぼしているかを、絵画、立体、ビデオ・インスタレーション、パフォーマンスなど多様な活動を通して示し、「映像イメージを箱型のテレビから解放した」アーティストのひとり。長年ハル・フォスター、ノアム・M・エルコット、パスカル・ル ソー、アン=カトリン・ギュンツェルといった理論家たちによって学術的にも広く論じられてきた。
また、マイク・ケリー、トニー・コンラッド、コンスタンス・ディヤング、キム・ゴードン、デビット・ボウイなど様々アーティストとの協働も数多く行っている。
近年は、リバーサイド・パーク・サウス(NY) 、カルティエ財団(パリ)、南京眼歩行橋(南京)等でサイトスペシフィックなパブリックアートも数多く展開し、今後も、スイス、ハーシュホーン・スカルプチャー・ガーデン、台湾での展示が控えており、国際的な活躍を続けている。




本展は、90年代の貴重な作品から本展のために制作した新作、日本未公開の映像作品を中心に構成される。

本展の語り出しとなる《Blue Mood》(1992年)では、1990年代におけるアウスラー初期の実験世界へと誘う。スーツケースに収められた布製の人形に、その頭部だけが映像プロジェクションで映し出された本作は、人を驚かせ魔法のような体験を与える映像プロジェクションと、物理的な彫刻との稀有な結合といえるだろう。


2010年に始まったマイクロプロジェクション・シリーズに連なる《Noumana》(2024年)では、イメージや物語の断片を思わせる素材からなる多層的なレイヤーを取り入れ、不安から恍惚までデジタル時代における集合的無意識をあぶり出していく。プライバシーを侵害するスマートフォンカメラの視点で、ソーシャルメディアの不気味で覗き見趣味のような体験を捉えており、アウスラー作品に繰り返し現れる主題を反芻。



《My Saturnian Lover(s)》(2016-2017年)は、モダニズムの衰退期である1940年代後半を舞台にした没入型の映像インスタレーション。アウスラーが長く興味を寄せてきた大衆文化のアーカイブを反映した本作は、ジョージ・アダムスキー、 ルース・ノーマン、ハワード・メンジャー、マーラ・バクスターといった実在のUFO遭遇者たちのゆるやかな関係に基づいている。ぼんやりと浮かぶ白い円盤の写真は、テクノロジーと神話の衝突を描き出しており、現実とサブカルチャーの幻想の境界を曖昧にし、アウスラーが大きな関心を寄せるマスメディアが認識に与える影響を映し出していく。


また、本展では、近作となる「顔認識」シリーズもあわせて展示。アルゴリズムのパターンを利用して、デジタルメディアがアイデンティティ認識に与える影響を探索する本作において、アウスラーは、私たちの新しい人間の肖像が、画像だけでなく「統計や自動抽出したデータによって作られており、それが相互参照して私たちのすべての動きを予測するために使われている」と指摘する。一方で、そうしたデータが一般公開されれば、創造的な目的に応用することができることを、本作は示している。


《Wikkae》(2024年)は、映画や演劇でお決まりのステレオタイプな登場人物(ストックキャラクター)を取り上げ、彼らの表情を動かすデジタルレンズを通じて、キャラクターに生命を吹き込むシリーズ。本作では、ニューエイジ*思想の実践者に見立てた小さなフィギュアが、火山による廃墟を表す架空の風景に浮かび上がり、テクノロジーを拒絶する手段としての疑似科学やオカルトへの新たな関心をほのめかしている。アウスラーは、結晶構造の形をしたカラフルな壁面スクリーンの新作《Eu/An》(2024年)においてこの主題をさらに掘り下げている。デジタルスクリーンとポリクロームミラーを組み合わせた本作は、テクノロジーと自然が融合し、ニューエイジ思想が信じるパワーストーンとしての水晶と最先端技術のナノテクノロジーが交差することで、現在がふたたび「魔術化」されることを暗示している。


アウスラーは、私たちが盲目的に受け入れている支配的な通念を揺るがすことで、不安を引き起こすテーマに取り組んできた。創造性、テクノロジー、サイエンスフィクション、ポップカルチャーの要素を組み合わせて、心理的に不安を与えると同時に詩的に心を揺さぶる没入型の環境を作り出し、滑稽さと深遠さの間を行き来させる。その作品は、電気的でありながらもスピリチュアルであり、時にユーモアを交えてメディアを批判し、現実がどのように形作られていくのかを物語っている。 本展では、これらの問題について観客に省察を促すとともに、テクノロジーに向けた新たな創造への道筋を指し示している。


*ニューエイジとは、20世紀後半に、アメリカの西海岸エリアで発祥した宗教的思想潮流かつ自己意識運動。思想的には心霊主義(スピリチュアリズム)と神智学を源流とし、ユングの思想、東洋・「異教」(キリスト教以前のヨーロッパ多神教)・南北アメリカの先住民の文化などから引用した要素や自己実現、自己啓発の思想を織り込み発展


トニー・オウスラー
Transmission
会期:2024年10月4日(金)- 12 月21日(土)
オープニング・レセプション 2024年10月4日(金) 17:00-19:00
時間:12:00〜18:00(木・金・土)
   日・月・火・水・祝日休廊
会場:SCAI PIRAMIDE(東京都港区六本木6-6-9)
   TEL:03-3821-1144(SCAI THE BATHHOUSE)/03-6447-4817(SCAI PIRAMIDE)
www.scaithebathhouse.com

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