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「自分にとって何が大切なのかを知ることができた」Jamie xx “In Waves”インタビュー

NeoL / 2024年9月16日 17時0分

「自分にとって何が大切なのかを知ることができた」Jamie xx “In Waves”インタビュー



The xxのJamie xxが9年ぶりとなるソロ・アルバム『In Waves』をリリースする。本人が明かすとおり、『In Waves』はジェイミーにとって音楽制作の原点に立ち返るようなモードから生まれた作品で、そこにはこの間のパンデミックで経験した生活や心境の変化が影響を及ぼしているという。4年の歳月が費やされた今回のレコーディングには、リード曲“Life”で歌うロビンをはじめ、ザ・アヴァランチーズ、ケルシー・ルー、アニマル・コレクティヴのパンダ・ベアなど多彩なアーティストが参加。また、前作『In Colour』に続いてThe xxのロミーとオリヴァー・シムも駆けつけ、ダンス・ミュージックの高揚感とベッドルームの内省が交差するサウンドに華を添えている。The xxの再始動の話も囁かれはじめるなど、次なる動向に注目が集まるジェイミーに話を聞いた。



→ in English



―先日(6/28)のグラストンベリーでのパフォーマンスはどうでしたか。新曲の反応もとてもよかったように見えましたが。


Jamie xx「すごく特別な体験だったよ。グラストンベリーはいつも楽しいんだけど、実は毎回プレッシャーを感じているんだ。なぜなら、僕は過去のグラストンベリーで何度もすごく良いパフォーマンスをやってきているから。今年は金曜の夜に出演予定だったから、残りの週末はプレッシャーを感じずにフェスティバルを楽しむことができたから良かった。お客さんも最高で、自分が期待していた以上の手応えを感じることができたんだ」



―新曲の“Waited All Night”でロミーやオリヴァーと抱擁しているシーンが感動的でした。3人の間でどんな会話があったのか、気になります。


Jamie xx「3人でまたステージに一緒に立つことはすごく素敵だったねという話をしたよ。2018年以来だから、かなり久しぶりだった。この3人で一緒にいると、どんな時でも心地よい感覚に包まれるんだ。ステージに立っていても安心していられる。彼らと一緒にステージに立つことがどれだけ心地よいのかを忘れていたよ」






―今回の『In Waves』はこの4年間、つまりパンデミックを挟んで制作されたそうですが、あの時期の経験が、人生観や音楽観、キャリアの将来形成についての考えに影響を与えたという声をよく聞きます。あなたの場合、あの経験は自身にどんな変化をもたらしましたか。


Jamie xx「たくさんの変化があった。その多くはプライベートな生活においてで、自分にとって何が大切なのかを知ることができた期間だったよ。この先の人生をどうやって歩んでいくのか、仕事とプライベートの時間とのバランスをどうやってとっていくのか、そういうことを考えていた。そのバランスを均等にしたいと思ったんだ。僕は17歳から30歳になるまで、ほぼ全ての時間を音楽に費やしていた。他のことはほとんど何もしていなかった。だから自分の新たな一面を発見する必要があったんだ」







―そうした変化は、今回のアルバムの制作にどんな影響を与えましたか。『In Waves』は、ダンスフロアの恍惚と、ベッドルームで過ごした内省的な時間の両方が綾をなすような、そのコントラストがとても印象的です。


Jamie xx「うん。その変化のおかげで、自分が昔作っていたような方法で音楽を再び作りたいと思うようになった。また、自分のためだけに作る、という正しい理由で音楽を作りたいと思うようになった。(パンデミック中は)この先、僕の音楽を多くの人に再び聴いてもらったり、ライヴをする機会があるのかの見通しが全くつかなかったからね。そのせいもあって単純に自分のためだけに音楽を作るようになって、そうしていたらまた音楽制作を楽しめるようになったんだ」



―音楽を作ることの原点に立ち返った?


Jamie xx「そうだね。このアルバムは長い期間を経て作られたものだから、試したアプローチも様々だった。アルバムとしてのまとまりを出すために、いろいろなアプローチを試みたこともあったけれど、結局そういうアプローチを求めて制作していたことこそが、今回のアルバムのサウンドを形作る要素となったと思う。だからこれほどまでに折衷的な作品になったのだと思う。自分が大好きな音楽の作り方に立ち返るために、数多くのアプローチを試した結果が今回の作品なんだ」








――今作の制作を通じて、ブレイクスルーとなったポイントを教えてください。アルバムの方向性や全体像が見えてきた瞬間のようなものがあれば。


Jamie xx「“Dafodil”ができた瞬間かな。この曲ができた時、僕としてはすぐにでも出したくてシングルとしてリリースすることをレーベルに相談したんだ。でもレーベルの人たちは、この曲を中心にアルバムを作ってから、アルバムとしてリリースする方が良いというアドバイスをくれて。今となってはそのアドバイスに感謝している。
“LET’S DO IT AGAIN”と“KILL DEM”をシングルとしてリリースして、この2曲が入るようなアルバムを作るんだろうと想定していたけど、時間が経つにつれ“Dafodil”を新しいアルバムのためにとっておいた方が得策だったということに気づいたんだ。“Dafodil”は、今回のアルバムのサウンドを築き上げていく支柱の役割を果たしてくれたと思う」



―“Dafodil”は、ケルシー・ルーと共作された曲ですね。前に彼女のアルバムにプロデューサーとして参加されたことがありましたが、あなたから見て、彼女の魅力はどんなところにありますか。


Jamie xx「とてもソウルフルでいい意味で変わってて、僕たちはお互いに似ているところがたくさんある。君が言ったとおり、僕は前に彼女のアルバム制作を手伝って、彼女と長い時間を一緒に過ごした。それから何年もたくさん一緒に遊んできた。一時期は彼女がロンドンで僕の家の近くに住んでいたから、一緒にクラブに行ったりして遊んでいて。だから彼女みたいに本当に親しい人と一緒に音楽を作るのは自然なことだと思った」






―その“Dafodil”では、アニマル・コレクティヴのパンダ・ベアがフィーチャーされています。これはどういった経緯で実現したのでしょうか。


Jamie xx「ケルシー・ルーと曲を完成させた後に、インストのパートをたくさんのアーティストに送って、「ロンドンの夏」というテーマでヴァースを書いてもらったんだ。たくさんのアーティストからたくさんのヴァースが届いたんだけど、パンダ・ベアのヴァースは曲のクライマックスにぴったりだった。アルバム・ヴァージョンはできるだけタイトにまとめたんだけど、いつか他のヴァージョンもリリースしたいな」



―あなたがパンダ・ベアの音楽、あるいはアニマル・コレクティヴの音楽にどう接してきたのか、興味があります。好きな曲やアルバムがあったら教えてください。


Jamie xx「僕は、アルバムの名前を覚えるのがすごく苦手なんだ……名前が思い出せないんだけど、ザ・エックス・エックスのツアー中と同じ時期にリリースされたアニマル・コレクティヴのアルバムは今でもノスタルジックな感じがする。それからパンダ・ベアがザ・エックス・エックスの曲をカヴァーしたものがあるんだけど、結局リリースされなくて。僕はそのカヴァーがすごく気に入っていたんだよね。ヴォーカルのプロダクションがすごく良くて。だから、遠巻きではあったけど昔から彼らのファンだったよ」



―“Life”に参加しているロビンとは、先日のグラストンベリーのステージでも共演されていましたね。あの曲で彼女に歌ってもらいたかったのはどうして?


Jamie xx「ケルシーと同じ理由からだよ。僕とロビンは以前から一緒に時間を過ごしていたし、知り合うずっと前から彼女のファンだった。自分が知っている人たちで、自分と似たような感性を持っている人と一緒に仕事をすることは、僕にとって良いスタート地点だった。ロビンのようなレジェンドと一緒にスタジオに入って作業できて非常に幸運だったと思う」






―ところで、今回のアルバムには、現実逃避の手段としてサーフィンをやるようになったことも影響を与えているそうですね。サーフィンのどんなところに面白さを感じますか。


Jamie xx「10年前くらいのことなんだけど、日本から、次の公演のためにトロントに行く予定だった。その途中でハワイに寄って、初めてサーフィンをしたんだ。初めて波に乗って板の上に立ったとき、波を別の角度から見ることができた。もちろん以前にも波を見たことはあったけれど、サーフィンをしているときは、波の動きを読んで、それに合わせて動くという物理法則が適応されるということに衝撃を受けたんだ。そういう風に自然界のものを新たな視点で見るという体験は、人生においてとても特別なことだと思う。新しい力を得たような気がしたよ。それに、音楽以外に没頭できるものが見つかって嬉しかった」



―今回のアルバムのタイトルはまさに『In Waves』ですが、例えば、サーフィンを始めたことで自分の中に生まれた変化を感じるようなところはありますか。


Jamie xx「人生における「静けさ」に対して恩恵を感じられるようになったと思う。サーフィンをしに行くと、僕は毎回嬉しくて、満たされた、落ち着いた状態になる。そして、サーフィンをしていない時間も、そういう状態でありたいと思うようになった。仕事をしているとそういう状態でずっといるのは難しいけれど、そこをベースに自分の行動を振り返ったり、近づけるように心がけているんだ」





―「静けさ」への気づきが、今作の内省に通じているんですね。同じくボードスポーツということでいえば、前のアルバムの『In Colour』に収録された“Loud Places”のMVで、ロミーと夜の街をスケートしてるシーンも印象的でした。サーフィンも誰かと一緒にやっているんですか。


Jamie xx「やってるよ。僕はサーフィンができる機会があればいつだって行く。そのタイミングでちょうど友達が一緒にいたら一緒にサーフィンをしにいくけど、特にロサンゼルスにいるときは、朝5時に起きて、車を運転して、1人でサーフィンをしに行くことが多い。友達と一緒に行っても、サーフィンは基本的に1人でするものだからね。時々他の人と会話をしたりするけど、基本的には1人のスポーツ。それが自分に合っている。自分の内なる世界に浸れるからね」



―ちなみに、今回のアルバムではどんなサンプリングが使われていますか。


Jamie xx「サンプリングで使った音源は自分が昔から持っていたレコードばかり。僕はよくレコードを買っていて、いつも頭のどこかで、自分の曲やDJセットに、サンプリングとしてどう取り入れられるかを考えてる。僕は一時期、自分が普段作っているような音楽とは全く違う類のレコードばかりを家で聴いていたことがあって。今作の音源はそのことが影響してるかな」



―実際にサンプリングしたアーティストや曲の名前を挙げてもらうことはできますか。


Jamie xx「そうだね……それぞれ僕にとって、違った意味合いを持っているレコードばかりなんだ。アルバムの最初のトラック(“Wanna”)は(UKガラージ・デュオ、ダブル99の)“RipGroove”をサンプリングしたもの。僕は60年代や70年代、それから80年代初期のレコードをサンプリングすることが多いから、あまり90年代の音楽はサンプリングしないんだけど、この曲はUKベースカルチャーの本質を表していると思うから、新たな形になって僕のアルバムに存在していることを嬉しいし、僕の人生の大きな一部を反映している曲でもあると思う」







―最後に、現在制作中というThe xxのニュー・アルバムについて、話せる範囲で構わないので教えてください。先ほどのパンデミックの話を受けていえば、あの時間をへた3人の関係性がどんな形で反映された作品になるのか、とても興味があります。


Jamie xx「オリヴァーとは、彼のアルバム制作の最初から最後までずっと一緒にいたんだ。パンデミック前と最中だね。そのおかげで僕たちの仲はさらに深まった。彼は最高なアルバムを作ったと思うし、僕にとっても思い入れのある作品になったよ。
その同じ時期にロミーのアルバム制作に関わる機会もあったけれど、僕とロミーではイメージしていた方向性が少し違ったから、彼女のアルバムでは数曲しか参加していない。
僕たちが各々でソロ作品を出すことの主な目的は、バンドとしての限界を押し広げるためだったんだ。そして再び3人で一緒に制作をすることになった今、各自で経験したことをバンドのための制作に活かすことができる。それは新たなチャレンジになるかもしれないけど、最終的にはより良い音楽ができると信じてるよ」


text Junnosuke Amai





Jamie xx『 In Waves』
(Beat Records / Young)

2024年9月18日発売
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=14157









―How was your recent performance at Glastonbury? We saw the video, and the crowd enjoyed your new songs.


Jamie xx:It was extraordinary. Glastonbury is very fun but it’s always a lot of pressure. Especially because I have had such good shows before. I am grateful that my show was on a Friday night, so I got to enjoy the rest of the festival without the pressure. The crowd was so great - it was better than I could have hoped for.


―It was moving to see you hugging Romy and Oliver during ‘Waited All Night’. Can you share what you three talked about after the performance?


Jamie xx:We talked about how nice it was to be back on stage together. It’s been a long time since 2018, and it never fails to be a personal experience. It felt so comfortable on stage together. I had forgotten how nice it is to be with them.





―The new album was made over four years, including during the pandemic.In our previous interviews with artists, many said that the pandemic had a big influence on their work and career direction. Do you think the pandemic impacted your views on life, music, or your career?


Jamie xx:Yes, a lot has changed, especially in my personal life. I learned what was important to me, in terms of how to live life and maintain a balance between work and personal life. Music came first to me since I was seventeen till my thirties. I had to discover a whole new side of myself in the pandemic.


― Your new album discusses the introspection of the time in your bedroom and excitement on the dancefloor. It is very striking. Did those changes from the pandemic influence your album?


Jamie xx:Yes, it made me want to go back and make music like how I used to. Which was all just for me. I didn’t know when people would be listening to my music again, or when I would be able to play a show again. It forced me to make music for myself. I started to enjoy it again.









―Was there a breakthrough moment while making this album? When did you start to see the overall picture?


Jamie xx:When I made ‘Dafodil,’ I initially wanted to release it as a single. My neighbour advised me to wait until I made a full album around it, which I was grateful for. I made ‘LET’S DO IT AGAIN’ and ‘KILL DEM’ and put them out as singles. I was working on an album that would include those but as time went on, it was nice to keep ‘Dafodil’ just for the album as informs more of what the album sounds like, compared to the other songs.








―The album title ‘In Waves’ is inspired by surfing.What got you into surfing, and what do you enjoy about it?


Jamie xx:I was in Japan about ten years ago. I had to go to Toronto for the next show and stopped in Hawaii. That’s when I went surfing for the first time. I caught the first wave and managed to stand up, and I saw the wave from a new angle, literally. I have seen waves throughout my life, but being able to move with it and seeing how physics works blew my mind. Seeing the natural world in a new light is such a special thing in life. It gave me a new energy and it was so nice to have something else that I am obsessed with, other than music.


―Did surfing change you, and how do you think it influenced your approach in making music?


Jamie xx:Surfing taught me the benefit of having calm in my life. Whenever I go surfing I feel so content, happy and calm. I guess I am striving for that in my life. It is much harder to do with work, but at least I have that as a base to reflect on and achieve.






―You were skateboarding with Romy in the track ‘Loud Places’. Is surfing something you do with friends too?


Jamie xx:I surf whenever I can. Sometimes I am lucky enough to have friends around. When I am in LA, I drive on my own at 5 am to surf on my own. Even when I am out there with my friends, it’s a quite a solo experience. Occasionally we talk to people, but it suits me very well being in my internal world.


―What ideas and concepts, would you say, shaped the sound of this album?


Jamie xx:The album was made such a long time ago, that so many approaches are involved. I was searching for a way to do something that would make the album feel like a whole. What I worked out is that this ‘search’ was what made the album. I had to try many different ways to get back to my love for making music.





―The track ‘Dafodil’ features Panda Bear. How did this collaboration come about?


Jamie xx:I sent the instrumentals to different artists to write verses based on summer in London. I got loads of different ones from different artists. The Panda Bear one just fitted the climax of the song so well. There are many versions of that song, maybe some others will come out another day, but this was the tightest album version I could do.


―Do you have any favourite songs or albums by Panda Bear or Animal Collective?


Jamie xx:There was an Animal Collective album that came out when we were doing our tours. That feels very nostalgic to me. Panda Bear made a cover of one of our songs, and it never made it to the world but I always love that. I love the vocal production of those tracks. So, I have always been a fan from afar.


―Kelsey Lu is featured on the track ‘Dafodil’. What do you find great about her?


Jamie xx:She is very thoughtful and we are similar in many ways. I worked on her album and spent a lot of time with her. We hung out a lot over the years. Kelsey lived in London near me for a long time, we used to go clubbing a long time ago. We just became very close. It made sense to me to do something with somebody that I am so close with.





―You performed on the Glastonbury stage with Robyn, who was featured on the track ‘Life’. Why did you choose for her to be in that song?


Jamie xx:The same reasons. We haven’t been out for a long time. I was a fan long before I knew her. I think it was a good place to start working with people that I knew and had similar sensibilities to me. I was lucky to be in a studio with her because she is such a legend.



―Can you tell us about the sampling on the album? Are there any notable songs or artists?


Jamie xx:All of these records were something I have had for a long time. I am always buying records and there is always some part of my mind thinking about where I could use them; either in DJ sets or sampling. It mostly comes from listening to music from home that was very different from the music that I was making. These ended up informing samples that I used in my record.

The first song on the album samples the Rip Groove vocals. I never thought about sampling a song from that era because I usually sample things from the sixties, seventies or early eighties. But that piece of music is so intrinsic to the UK base culture. I like how that exists on the album and it reflects a big part of my life.


―How has the pandemic influenced the xx’s new album, and how did it affect your relationship with Romy and Oliver?


Jamie xx:I got to make the whole album with Oliver, before and during the pandemic. We got even closer in that time. I got to spend so much time just with him. It was a real pleasure to get to do that. I love that album and it is really meaningful to me. I got to work on Romy’s album for that period too. Our ideas were slightly different so I only made a few bits for that album. The whole point of us going out, and doing the records was that we were pushing the boundaries of what we are as a band. Now that we are coming back together, we have a lot more to pull from. Maybe it will be more of a challenge but ultimately it will make the music better.








text Junnosuke Amai

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https://www.neol.jp/music-2/

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