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Jan Shotaro Stigter and Riki Eric Hidaka 『Double Happiness In Lonesome China』インタビュー(前編)

NeoL / 2015年5月16日 23時59分

Jan Shotaro Stigter and Riki Eric Hidaka 『Double Happiness In Lonesome China』インタビュー(前編)

Jan Shotaro Stigter and Riki Eric Hidaka 『Double Happiness In Lonesome China』インタビュー(前編)

 

甘いピロー・トークや笑いが飛び交う、夜明け前の大都会に潜むこぼれ話しと夢枕が出発点となっているような、気持ちのいいサイケデリック・ドリーム・ポップ・ミュージックがここにある。


そう連想させるJan Shotaro Stigter and Riki Eric Hidakaによる共同作アルバム『DoubleHappiness In LonesomeChina』が完成した。大きな音楽ムーブメント無き時代に、突然変異のように、突如現れた美意識と、その先にあるサイケデリックかつ内観的なダイヤの原石のような名曲の数々を集めた、全12曲収録のアルバムがStereo Recordsからリリースとなった。


まるでニール・ヤングのアルバム『Tonight's The Night』のように、アコースティック・ギターとエレクトリック・ギターが上手く自然と混ざり合ったりするフィーリングや、とろける虹色のアイスキャンディーのようなサイケデリックで甘いメロディーが、ジミー・ヘンドリックスのアルバム『Electric Ladyland』のようにスタジオ機材のエフェクトを通じて飛び交ったりするムードも、ニック・ドレイクのアルバム『Pink Moon』みたいにアコギ一本でのしっとりとした弾き語り楽曲までもが、バランス良くいっぱい詰まっている、聴きごたえのある内容のオリジナル・アルバムとなっている。


いい音楽には多少毒も必要だ。この『Double Happiness In Lonesome China』を聴いてみさえすればわかるだろう。この脳が気持ち良く揺れる音楽にきっと酔いしれるはずだからね。


実際に、ぼくも詞の朗読や12弦のアコースティック・ギターで参加させてもらっている収録曲の「Alain The Thinker Dub」や「Seven Gods of Tokyo」、そして、Jan Shotaro Stigterの弾き語りの「The Boy With Some Heroin In His Eyes」、Riki Eric Hidakaによる「天国への階段」へのオマージュにまでも少し聞こえて来る「ぶらぶらしていたい」などといった楽曲にどっぷりハマってしまっているくらいなのだから。


それでは、アルバム『Double Happiness In Lonesome China』の全貌を語ってくれたJan Shotaro StigterとRiki Eric Hidakaとのインタビューを、どうぞお楽しみ下さい。

 

 

―『Double Happiness In Lonesome China』はどういうきっかけで作ることになったの?

Jan「HIDAKAのアルバムを全部リリースしている『STEREO RECORDS』という広島のレコード屋兼レーベルの人が、スプリット・アルバムを作らないかって言ってくれて。スプリットだったはずがなぜか勘違いして、全曲一緒に作ったっていう」

―勘違いがきっかけなんだ(笑)。共作してみてどうだった?

RIKI「俺はアルバムを作るためにやったのはやったけど、そういう感じじゃなかったの。昔からやっていることをレコードにしたいっていうイカレた人が現れた。なんて素敵なことだろう、みたいな。それだけ」

Jan「昔から一緒に曲作って録音するみたいなのはHIDAKAの家でやったりしていて。それはリリースもしないでYouTubeにあげるだけだったり、あげてないやつもあるし。あれ、どうしたっけ? お前の家で録ったやつ」

RIKI「“メトロポリタン”?」

Jan「そう、”メトロポリタン2012”だ。そういうのがいっぱいあって、その延長線で今回も作った」

―レコーディングって全部日本でやったの?

RIKI「うん、地元の友達の家の地下室でやった」

Jan「スタジオ入って、ドラムとか録って」

―それはRIKIがNYに行く前?

RIKI「行く前」

―じゃあ結構早い段階でその話はあったの?

RIKI「1年前だね。前回のやつのリリースの直後くらい」

―そっか。昨日やっとアルバムを聴いて、レコーディングの時以外にちゃんと聴いて思ったのは、すごいピュアでインティメートだということ。例えばさ、普通にいつものバーで飲んで、こないだのゴールデン街みたいな感じで一緒に過ごしていて、その中で詞が降りて来たり、いわばエンターテイメントとしての音楽だけじゃなく、ベッドルーム・ミュージックってだけでもないし、もう少し自由があって、すごく近い仲での世界を覗きこめるみたいな感じはしたんだよね。

Jan「HIDAKAが録音物を作る時はいつもそういう音像があると思っていて。インティメートの、周りの空気を全部詰めるみたいな。一緒にやってもそういうことになったし。いつも遊んでる家や街で録ったっていうのもあるけど」

―でもありのままで、気張ってはないけれど、ちゃんとそこにはマジックがある。

RIKI「多分パッケージされた音楽みたいなものを作り出す前から目指している音には面白みがないというか。それこそマジックみたいなものがないって俺は感じちゃう。だから、この作品は自分たちが後から聴いても不思議だって思えるような、そういうものになったんじゃないかな。……難しいな、何て言えばいいかわかんないけど」

Jan「そう。普通に録音したのは丸々24時間で、出来た曲を、出来た瞬間にすぐ録音しちゃっている。そうじゃない曲もあるけどほぼそう。その生まれたばかりの赤ちゃんみたいな、生々しいけどソフトで、ピュアで、一番綺麗な状態なんだと思う」




janriki2


―その赤ちゃんを生み出すっていうことに参加したメンバーってRIKIとJanの他は?

RIKI「林くん(宏敏/踊ってばかりの国)とかMasahiro Oketa(Mirror Moves)とか白根さん(賢一/GREAT3)仲間も参加してくれている。結果的に参加してくれた仲間たちは今回のライヴでも一緒にやりたいと思ったし。ミュージシャンとしてかっこいいと思えるような、そういうのの前に、一緒にいるみたい奴ら。そいつらがたまたま素晴らしい音楽を作れる奴らだったっていう」

Jan「曲やり始める前からあいつ呼びたいね、みたいな案はもっていて」

RIKI「録ってもらいたい人ももちろんいたし」

―最初に2人がやろうと思っていたイメージも聞かせてほしい。もちろんピュアで、生まれたばかりの、パッケージとかではなく、一番綺麗な状態で封じ込めたってことなんだけど、それ以外に何かプラン的なものはあったのか聞きたい。

Jan「あのアルバムほとんどレコーディング進行表的な曲順になっていて。最初に録った曲からほとんどそういう順番」

RIKI「アルバム1枚まとめてそうなっている」

Jan「ある意味ライヴ盤と同じ」

―セットリスト的なね。

Jan「その中で微妙に少し並び替えたり」

RIKI「レコーディングのA面B面の音の入れられる長さとかそういうのでちょっと変わったのとかはあるけど」

―でもそこは相当こだわっているでしょ。映像もそうじゃん。プロモーションビデオもA面B面で、マスタリングですらレコーディングで繋がっているのしかないんだよねって。

RIKI「そうじゃなかったらおかしいじゃん。例えばMP3で聴いている時に、この曲が終わったから次この曲に飛ばそうとか、そういうのとかじゃないようにしようって。この曲が好きだから、この曲をとりこもうみたいなんじゃなくて、A面を聴いたあとにB面を聴く、そういう作品にしたかった」

Jan「その前の曲を聴かないと次の曲を聴く意味ないよって」

RIKI「そんなの、これに関係なく全部そうだと思うんだけどさ」

−−アルバムだったらそういうもんだよね。アルバムとしてのストーリーがあるはずだから。

Jan「そう。ストーリーとか、流れで感動させる。流れで快楽を与えるのって一番トリップ感が長い」

RIKI「感動させる、とかというのは俺はないけど」

―ある意味ミックスCDとか、そういう感じ。曲の流れがあって、でもDJものじゃなくて、ギターとか声、歌詞とか雰囲気があって、それは超新しい。

Jan「究極のミックスCD」

RIKI「言ってみればセルフブートみたいなものだから、全部」

―でも本当に嘘がない気がする。変な意味で作られすぎた感じとか、頑張りすぎてこだわったって感じがしないんだよね。

Jan「そういうのが一番大事な感じがするよね」

RIKI「普通に、無理だから。嘘つきは絶対地獄に堕ちる。これはマジで」



 

―ちゃんと自分の中から生まれてきたものを嘘なく出す。

RIKI「世の中の人達も最初はそうだと思うけど、それを人に届けたいっていう自分の欲求が勝っちゃうから、その間に色んなことが起きる。だけど今回のことに関してはすげー頭のイカレた大人に出会えた。広島の神鳥さんって人が、『音に関しては俺からは一言も何も注文はないから好きにやってくれ。それをヴァイナルにすることが俺の使命だ』って言って、何も言わずに全てのことをオッケーしてくれた。そんな人と出会えたっていうことが、何よりも俺たちの音を祝福してくれたというか。『そんなに素晴らしいことってあるの?』っていう」

Jan「ある意味このアルバムの核にある精神っていうのは、神鳥さんが作り上げた純粋な魂なんじゃないかなと思う」

―呼応し合うものだと思うけどね。神鳥さんがRIKIとかJanのことを好きだと思ったのも、そういうピュアさを感じたからだと思うし、2人がそこに預けようと思ったのも、神鳥さんにピュアさがあったからだと思うし。

RIKI「実際カタチになるとすごい嬉しい……」

―実感がこもっていたね(笑)。

RIKI「良かった、これでひと段落だねって」

―(チャールズ・)ブコウスキーみたい。郵便局員で新聞にちょっと書いていた人が、いきなりブラック・スパロー・プレスの人に『毎月500ドルしかあげられないけどとりあえず好きなもの書け』って言われて、そこから出版して酒飲んで好き勝手書いて、広がっていった。特に詩とは違って音楽って1人じゃないから、一緒に作っていくというのも大事だし、巡り会いは大事だと思う。

Jan「アランさんはそういう商業システムの中で仕事もするけどブレない芸術に対する信念を持っているということにおいてうちらの希望になっている」

―まあギリギリ続けられているところだけが唯一ほっとできるところだけどね。

Jan「朝4時の赤裸々な話(笑)」

―酒がだいぶ足りないじゃん(笑)。でも偶然は繋がっているよね。RIKIとはNeoLのブログをあんまり更新してない仲間なんで(笑)。たまたまCALLASで飲んでいる時にそういう話になって。

Jan「最初、それで2人は繋がったよね」

RIKI「そうだ」

Jan「『お前、あれ書いてんの?』みたいな」

RIKI「そうそう」

―いい奴じゃんって。その話をJanにして、たまたまそこから自然とね。頑張りすぎずに、いい感じに無理なくみんな楽しめることをしようよみたいな。そのまま色んなふうに繋がっていっているじゃん。二人とも基本ギターとベースで曲を作っている気はするんだけど、ギターでこだわったことはあったの?

Jan「最初の流れはHIDAKAがギター弾いて俺がベース弾くみたいな感じで自然と。前録った時もそうだった」

―でもそこからプラスアルファでギター弾いていたり。

RIKI「シンセをリヴァーブしたり」

Jan「その時めっちゃシンセにハマっていた(笑)」

―シンセいっぱい入れているよね(笑)。

Jan「入れている。HIDAKAはすごくギターにこだわっていたけど」

―シタールのやつも。

Jan「あれは長岡さん(亮介/ペトロールズ)のやつなんです。長岡さんがシタールギターを貸してくれて。入れると、っぽくはなるけど、ぽさなんてあれだけで簡単に出せる。だからルールだけわかっていれば」

―しかも、あれ、ぼくが詞の朗読をさせてもらった「Alain The Thinker Dub」の時も、テレキャスがレコーディングする前にいきなり弦切れたよね。で、シタールでいくってなって。それもすごい自然な感じだったよね。

Jan「あのレコーディングで一番楽しかったのがミックスの時で。リー・ペリーじゃないけど、ミックスダウンしながら三人でフェーダーを持ってっていう……(笑)」

(後編へ続く)

写真 依田純子/photo  Junko Yoda

文 アラン・ボスハート/text  Alain Bosshart


rikijan

Jan Shotaro Stigter and Riki Eric Hidaka


『DoubleHappiness In LonesomeChina』


(STEREO RECORDS)


2015年4月18日RECORDSTOREDAY2015オフィシャルアイテム


https://soundcloud.com/stereo-records/alain-the-thinker-dub


https://soundcloud.com/stereo-records/superjockey 

ヤンによるレコード全曲PVも公開!


A面全曲のPV:


https://www.youtube.com/watch?v=IiCmfvM8MfA

 

B面全曲のPV:

https://www.youtube.com/watch?v=q6cpMIg6sPw

 

★Jan


http://janphilomela.tumblr.com/


https://twitter.com/1930jan


1990年5月4日・東京都出身


GREAT3、jan and naomi、The Silenceなどのグループで活動中。


演奏、歌唱、作詞、作曲はもちろん、映像制作やアートワークも手掛けるミュージシャン。


jan and naomiはこれまで7inchシングル「A portrait of the artist as young man/time」、EP「jan,naomi are」を発表し、最新作にINO hidefumiと配信ライブアルバム「Crescente Shades (24bit/48kHz)」がある。米DRAG CITYレーベル よりThe silence 1st album 「THE SILENCE」が3月25日に全世界リリース。Stereo RecordsよりRiki Eric Hidakaとの共作 「DOUBLEHAPPINESS IN LONESOMECHINA」を4月18日にリリース。


★Riki Hidaka


http://rikihidaka.com


http://www.stereo-records.com/label/rikihidaka/


91年生まれ、ギタリスト。自主制作のアルバムを今までに3枚発表(いずれも非売品)。14年レコードストアデイにセカンド・アルバム「POETRACKS」の12インチを広島のStereo Recordsからリリース。2015年4月18日にはJan Shotaro Stigterとの共作アルバム「Double Happiness In Lonesome China」をStereo Recordsからリリース。


 

関連記事のまとめはこちら


http://www.neol.jp/culture/

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