藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#23 ホ・オポノポノ
NeoL / 2015年11月12日 2時25分
藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#23 ホ・オポノポノ
この連載でも紹介してきたように、ヒーリング方法にはいろいろある。精神からのアプリーチもあれば、身体からのアプローチもある。数多の方法がある中で、4つの言葉を唱えるだけで問題が解決へと向かうという「ホ・オポノポノ」。
その名前ぐらいは聞いたことがある人は多いと思う。4つの言葉を唱えれば問題が解決してしまう?まるで魔法ではないか。
では、まずその4つの言葉を挙げてみる。
「ごめんなさい」
「許してください」
「ありがとう」
「愛してます」
複雑なマントラを思い描いた人はちょっと拍子抜けするかもしれないが、実際たったこれだけだ。
詳しい説明は後にして、まず、この「ホ・オポノポノ」についてざっと見ていきたい。
もとはハワイに古代から伝わる問題解決方法で、当人を抜きにして、その問題について周囲の人々だけで話し合うという風習を起源としている。それが風習としてあったのだから、効果が認められていたのだろう。それを現代においてセルフで行えるように改良したものが、今「ホ・オポノポノ」と呼ばれているものだ。
そのユニークな点は、問題を解決するのは当人ではないということだろう。
私がそのホ・オポノポノを取り入れたきっかけは、ハワイ行きだった。せっかく本場に行くのだから御当地ヒーリング法に触れたいという軽い気持ちからだった。また、吉本ばななさんの著作や対談集からの影響もあらかじめあった。この二つのラインが交差するようにして誘われたのだった。
現代のホ・オポノポノのエッセンスとしてとても大切な考え方の一つは、現実に起こっていることは全て記憶の投影だということ。記憶の投影? つまりそれは思い過ごしのようなものだろうか? 幻なのだろうか?
(2ページ目につづく)
人間の記憶には、これまで生物として進化してきた記憶が全て保管されていて、今を生きるということは、その膨大な記憶のどこかを引用して投影しているに過ぎないというのがホ・オポノポノのベースになる考え方だ。例えば恋人が浮気をしているとする。それはかつてのそういう場面を人類の共有する巨大図書館から抜き出して読んでいるようなもので、それを現代の今の場面に投影していると解釈する。この辺りは、とても深遠で説明に一冊必要だが、ここでは、そういうことになっているんだと留めて話を進めよう。
その膨大な記憶の中から必要のないネガティブな記憶を消去することで、ネガティブな現実の場面に出会わなくなるという仕組みになっている。その消去、クリーニングのために使うのが、先に挙げた4つの言葉、ありがとう、愛してます、ごめんなさい、許してください、だ。
懐疑的な人は、馬鹿馬鹿しく思うかもしれない。理論的な人は、現実は記憶の投影に過ぎないという点に引っかかるだろう。
だが、物は試しである。これをやったからといって、高額な壺を買う羽目になるわけではないし、伝統と継承とアレンジがある分野には、何かしら得る物があるだろうと好奇心を持って接するのは楽しいと思う。
もう少し話を進めよう。
ホ・オポノポノのポイントは、全てのトラブルは記憶をクリーニングすることによってなくなるということだと先に述べた。
とにかく、4つの言葉を順番など気にせずに、心の中で唱える時間をより多く持つことによって、いつの間にかトラブルのない生活が送れていることになるのだと解釈し、いわば呪文のように使えばいいと思う。
自分の場合、最初の頃は「許してください」がすっと出てこなかった。いったい何か悪いことをしたのだろうか?何に対して謝っているのだろうか?
だが、そんな疑問は置いておき、思いを込めたりもせずに、ただ心の中で唱え、時には声に出して唱えたりしているうちに、自然と馴染むようになった。気づけば、この4つの言葉を唱えたあとは、なんだか心がすっきりしているのだった。マントラ的な効果と言えるだろう。謙虚で清々しい気持ちになれるだけでも、この4つの言葉は素晴らしいと思う。
個人的に感じた実際の効果としては、唱えている期間は確かに穏やかに過ごせているようだ。逆に唱えるのを忘れている時は、感情の起伏が激しかったり、ストレスに弱くなる傾向があることが分かった。やはりホ・オポノポノは何かがあるようだ。
またトラブルの原因を、他人に求めることがなくなるので(全ての原因は記憶による)、あくまで自分の記憶をクリーニングすることに徹することになる。それはとても平和的な問題解決方法で、当人を交えずにいつの間にか問題そのものが消えてしまうという古代ハワイの教えの素晴らしさを感じられる。
(3ページ目につづく)
当人を交えないという伝統の派生として、自分以外の対象に向けてのクリーニングにも効果が大きく、それこそがこのホ・オポノポノの実際使える特徴でもある。
例えば、トラブルを抱えた友人を思い浮かべて4つの言葉を唱えることで(この4つの言葉を唱えることを服部みれいさんは「ポノる」と呼んでいる)、友人が問題から解放されるとされているし、部屋などの空間に対しても同様にポノれば、そこには温かみと癒しが生まれる。
使い方は、工夫次第でいろいろ生まれ、人と会う約束がある時は、前もって待ち合わせのカフェを心の中でクリーニングしておけば、実際のミーティングも素晴らしい時間となるし、朝機嫌の悪かったパートナーをこっそりクリーニングすれば、夕飯の時には穏やかに過ごせるなど、生活全体を浄化するツールとしても効果はかなり期待できる。
また本人自身のクリーニングに話を戻すと、それぞれの個人の中には、内なる子供、インナーチャイルドがいるとされていて、その傷であるトラウマへのクリーニングにもこの4つの言葉が有効だとされている。自分のインナーチャイルドに意識を向ける時間は、それだけでも大きなセルフヒーリングだが、さらにクリーニングをすることは、いわば最も大切な自分の魂のお手入れだと思う。
さらに話を進めると、ホ・オポノポノで浄化されて透明に近づくと、高い次元の存在からインスピレーションとして多くのアイデアや気づきが降りてくる。ネガティヴな記憶がブロックしていたために、不通となっていた通路が開かれるのだ。
ホ・オポノポノでは精神世界は、上から、神聖な存在、超意識、顕在意識、潜在意識と分れていて、記憶を消去することで、神聖な存在からのメッセージがインスピレーションとして降りてくるとされている。そのインスピレーションによって、今、本当に必要とされていること、やるべきことが分かるという仕組みになっている。やるべきことというのは、楽しくできることでもあり、それはこの世に自分が存在している意味を知ることでもあり、それによって人は深く癒される。
思えば、多くの心の悩みは、「ここは何処?」「自分は誰?」「なぜここにいるのだろう?生まれてきたのだろう?」ということに集約されているのだが、ホ・オポノポノの教えはこれらの問いを問わずに済む場所へと連れて行ってくれる方法だと思う。
4つの言葉は、クリーニングツールとしては、ホ・オポノポノの教えの一つで、他にもツールは多くあり、そのうちで自分が使っているのは他に2つあり、ひとつはブルーソーラーウォーター。青い瓶に入れた水を30分から1時間ほど日光に当てた後で、飲むというもの。もう一つは「アイスブルー」という言葉。これを唱えながら、緑に触れると、精神的、物理的な痛みの記憶から解放されるとされていて、自分は庭仕事をしながらよく「アイスブルー」と唱えてみたりしている。
他にも専門書にはツールが掲載されているので、興味がある人はそれをフォローするのも良いだろう。
(4ページ目につづく)
まずは、4つの言葉を試してほしい。自分のインナーチャイルドへ。大切な人へ。大切な場所へ。
そういった個人的なことへのクリーニングを続けていくうちに、もしかしたら対象が、社会問題や、戦争、飢餓、虐待、不条理な出来事へと、向いていくかもしれない。それらは記憶の投影だとし、それらの記憶を消すためにホ・オポノポノをしているのに、それらを強く意識してしまうことの矛盾を感じるかもしれない。
ホ・オポノポノ的には、記憶というのは強固だから、ひたすら唱え続けることで消していくしかないとする。だが、それらの問題が現実の世界からすぐに消えないという事実がある以上、それらとどう取り組んでいけばいいのだろう?そういう悩みを持つ人がいるかもしれない。記憶を消すことだけで、果たして現実の痛みを受けている人々の存在は消えるのだろうか?
できることは、そういった巨大な負との関係を切っていくこと。それを波及させていくこと。個々の痛みを断つことを広めること。その総体が全体としての痛みからの解放へと繋がる。おそらく全てのヒーラーや、その数多のメソッドが目指しているのはそこだと思う。
マイケル・ジャクソンがかつて、そして今でも願っているように、「ヒール・ザ・ワールド」と。
ちょっと話が膨らんでしまったが、ヒーリングというのは、結局個人の枠に留まらず、世界全体へと繋がっていくことになるだろう。世界が癒されていないのに、個人だけが癒されるということはないと私は思うからだ。
まずは次の休憩時間にでもゆっくりと丁寧に心に浮かべてみてほしい。うまく言えない言葉に、今必要とされている何かがあるはずだ。
「ごめんなさい」
「ゆるしてください」
「ありがとう」
「許してください」
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