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G.RINA『Lotta Love』インタビュー

NeoL / 2015年11月27日 18時0分

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G.RINA『Lotta Love』インタビュー


『MASHED PIECES #2 』以来、5年ぶりのアルバム『Lotta Love』をリリースするG.RINA。文中でも語られる通り、今作は彼女のベーシックといえる、80'sのブギーやディスコ、ファンクから、90'sのR&Bやアーバン・ソウル、ヒップホップ以降のクロス・オーバーしたブラック・ミュージックなどを基調にし、そのサウンドをG.RINAのリリックと歌声から生まれる大きな「LOVE」で包み込んだ一作。カラフルでいて繊細、タフで艶やかなこのアルバムの放つ表情は、あまりにも美しく、その圧倒的なクオリティは、聴きながら何度も鳥肌が立つ程の快楽と充足感を与えてくれる。一言、傑作。


 

——ベース・ミュージックをテーマにしたコンセプチュアルなアルバムだった『Mashed Pieces #2』からは5年、オリジナル・アルバム「大都市を電車はゆく」からは8年ぶりのアルバムとなりますね。その間の時間について教えて下さい。


G.RINA「生活の変化が大きかった時間でしたね。『Mashed Pieces #2』から、現在までのあいだに、子供が二人生まれたので、制作に集中する時間が纏めて取れなかったんですよね。なので、物理的にソロ作の制作が難しくて。ただ、全部を自分が制作するソロを作るのは難しかったんですが、フィーチャリングでは制作もさせて頂いて」


——コラボの部分も強かった『Mashed Pieces #2』からの流れにも通じると思いますが、客演作は多かったですね。


G.RINA「ヴォーカリストで、メロディや歌詞も自分で考えて、かつ自分で録音も出来る女性アーティストがそこまで多くないということもあると思うんですよね。だから、自宅でDTMや宅録が出来て、やり取りも速い人っていうスタンスの人に、客演に呼ばれる事が多かったと思いますね」


——確かに、“No.1 feat.G.RINA”を制作したtofubeatsや、“Lose Myself feat.G.RINA,藤井洋平”を制作したOMSBなどはそういったタイプではありますね。また、ZEN-LA-ROCKとのサマー・チューン“MOON feat G.RINA”という動きにも驚かされました。


G.RINA「私も驚きました(笑)。私自身、彼の音楽が好きだし、声をかけてくれたのは嬉しかったですね。もともと、90年代的なサウンドを基調にしたコンピレーションの企画を考えてたんですよ。それは自分が歌うんじゃなくて、興味のあるトラックメイカーや、MC、シンガーを組み合わせて、パッケージするっていう形態で」


——プロデュース・アルバムという感じですね。


G.RINA「その中で、90’s的な音楽にもアプローチしているZEN-LAくんが浮かんだので、それで声をかけたんですよね。実際、そういう価値観の部分でも意気投合することが出来て。そのプロジェクト自体は進まなかったんですけど、逆にZEN-LAくんから、彼の楽曲にオファーをしてくれて」


——トラックはYasterizeが手がけ、ヒップホップ・シーンでも気鋭の面子に、G.RINAさんが参加されるという流れも興味深かったです。OMSBとはコンピ「160or80」収録の“Love, Not For Sale”でもタッグを組まれてましたね。「160or80」はBPMが160か80で取れるというコンセプトで纏められた、ヒップホップやベース、JUKEを中心にした作品でした。ヴェテランではECDが参加されていましたが、Cherry BrownやMvjimob、あべともなりなど、新進かつアンダーグラウンドの香りも強い作品でした。 


G.RINA「私自身、DJ活動の初期には、ドラムンベースとヒップホップを繋いでたりしたんですよ」


——BPMを倍加したりハーフでとると繋げますね、確かに。


G.RINA「それで、『日本語ラップでもこういう感覚があったらいいのに』ってずっと思ってたんですよね。『160or80』はまさにそのコンセプトが形になったアルバムだったし、ネット・リリースされた時に『これこれ!』って(笑)。それで『やった人は偉い!』って言ってたら、『そのCDバージョンに参加して貰えませんか』ってオファーを頂いて、それで参加したんですよね」





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——『MASHED PIECES #2 』でも、当時はまだ流行の入り口だったベースをテーマにしていましたね。


G.RINA「ベースミュージックは、先述のドラムンベースしかりUKのものをずっと追ってきていたので、歴史もふまえて楽しんでます。それとはまた別に音楽シーンの先っちょの方で蠢いている音楽には昔から強い興味があって、そこに影響を受けるのは、自分では自然な流れなんですよね。それに、ジャンルが開かれて、交差してる感じが面白いんです」


——今の音楽シーン全体の風通しの良さが、音楽的な自由に繋がっている感じがありますね。新人もベテランも関係ないっていう。 


G.RINA「それが楽しいですよね。刺激的です。日本だけじゃなく、まだ無名でもユニークなビートメイカーは結構チェックしてる方かなと思います」


——その「ユニーク」を具体的に言葉にするとどうなりますか?


G.RINA「自分の好みで言うと、ただ変わってる、ただアバンギャルドなだけじゃなくて、そこにポップ・センスがあるものに、やっぱりピンときますね。実験的過ぎず、新しいものと、オーソドックスな価値観ーーそれは『ポップス』って事にも通じると思うんですけどーーを上手くミックスしてるような人が、やっぱり気になりますね」


——人に聴かせる音楽であるかどうか、という。


G.RINA「それは絶対に必要な要素だと思いますね」


——では「『Lotta Love』について話を伺うと、制作期間はどれぐらいでしたか? 


G.RINA「具体的なアルバム制作という意味では、結構ギュッと作りました。最終締め切りから考えると、3ヶ月前ぐらいですね」


——それは相当タイトですね。


G.RINA「活動を半ば休んでいた時期も、曲作りはしてるんですよ。でもパーツは作るけれど、フィニッシュさせられないというか。そういう、最終形にまでは至らないデモやパーツが、いっぱい溜まってて。今回アルバムを作るって決めて、こういうコンセプトで、こういう内容で、こういうゲストで、っていう外側を決めたら、その内側を埋めていくには何が必要かが見えて、そこからの制作はスピーディーに進んだ感じです」


——今回は80年代的ブギーやディスコ、ニュー・ウェーヴ、90年代的なクロスオーバーしたブラック・ミュージックがコンセプトになっている作品だと感じましたが。 


G.RINA「そうですね。そのエッセンスを入れながら、そのままではなく、どうしたら今の音、じぶんらしい作品が作れるかなって。自分のルーツは、80年代的なブギーやディスコ、90年代ではヒップホップやR&Bになるんですが、そういった音楽は結構、様式美の部分があると思うんですね。昔は、そういった様式美に自分を寄せていく事にスゴく抵抗があったし、もっと独自性を追求したいと思っていたりして。でも、キャリアを重ねるうちに、そういったルーツの部分と、自分の個性みたいなものが重なる絵が見えたっていうか。それを併せた作品が今なら出来るかもしれないって思ったんですよね」





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——好きだからこそハードルにしてた、様式美だからこそ離れたいと思っていた部分を見つめながら、それを自分のモノにしていくのが今回のアルバムだったと。サウンドの温度としては非常にメロウな雰囲気が強いですね。


G.RINA「デモの中にはもっとファンキーなものもあったんですが、それは自然に淘汰されていったというか。今回の流れには入りませんでした」


——ただ、非常に意地悪な言い方をすれば、ブギー的なモノが流行っているので、その流行りに乗ったんじゃないかという風に、思ってしまう部分もあります。勿論、それが悪いと言うわけではないのですが、この選択は、そう思われる危険性もあるのかなって。 


G.RINA「そういう事は考えて無かったですね、全く。このコンセプトは自分の中では3枚目のアルバム『大都市を電車はゆく』のリリース・ツアーの最中に思いついたんですよ。そのツアーでは2人編成なのに『G.RINA&ミッドナイトサン』っていう架空のソウル・バンドを結成して、アルバム曲をソウルやファンクにリアレンジして、披露したりしてたんですね。そのアプローチの延長線上で、そういう音、日本語、バンドでアルバムを作ろうって、その時に思いついたんです。だから、このアルバムのアプローチは、実は8年越しの計画なんですよ」


——そうだったんですね。 


G.RINA「今回のアルバムの1曲目の“ミッドナイトサン”も8年前に出来てた曲なんですよね。(流行の)ブギー的なアプローチに対して、確かに『あ、やられちゃった』っていう思いはあったけど、良い曲もたくさんあるし、なるほどって思う部分もあって。だから、むしろ参考になりましたね。ただ、8年前はもっと、“ミッドナイトサン”や“音に抱かれて”みたいな曲ばっかり作りたいと思ってたんですが、今回はもっとメロウな歌モノも含めや、広義のソウル・ミュージックのアルバムになったと思います」


——だから、僕が言ったような事は、単なる謗りであって、作品を聴けば非常にタイムレスな作品になってることが分かると思います。そして、そのタイムレスな感じは、今までの作品以上に強いと感じました。 


G.RINA「日本語で作ってる作品については、常にそういうことを考えてますね。最先端のものや、DJでかけるようなものは、リミックスなどでやりきればいいかなって。ただ、制作が出来なかった時期は、音楽メディアの進化も早くなっていたので、「CDというメディア」で残せる機会は、もしかしたら、もう今回で終わりなのかも知れないって思ったんですよね。そういった事も踏まえて、聴いてくれた人が前向きになったり、その人の活力になるような音楽を形として残したいっていう気持ちは、前より強くなったと思います。だから、プライベートな作品というより、聴いて貰った人の生活にどれだけ貢献できるかなって事を、以前よりもっと考えているかも知れません」





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——ただ一方で、興味のある人だけ聴いてくれればいい、もっと言えばリスナーは関係無いという考え方をするアーティストもいますよね。それ自体は昔から珍しい考え方ではないですが、音楽で生計を立てるのが難しい、且つ発信がネットなどで簡単に出来る現在では、ある種、必然の帰結なのかなとも思います。その意味では、観念的な質問ですが、G.RINAさんが、ご自分の音楽を人に伝えたい、届けたいと思うのは、なぜですか? 


G.RINA「音楽って、バトンを渡していくようなものだって思うんですよね。自分が音楽に助けられたり、音楽に刺激を受けたりした経験があるから、自分の音楽もそうであって欲しい。そのバトンを渡したい。それだけだと思いますよ。うーん、あとは音楽を通して『友達になりたい』のかな…。それはDJでもそうなんですけど、時間を共有して、音楽を通して聴いてくれた人と、友達になりたい。だから、音楽を作る時は丸裸になるような感覚もありますし、満たされない気持ちがあるから、作品を作って、誰かとコネクトしたいんだと思いますね」


——今回の歌詞のトーンは非常にカラフルで、テーマとしては「愛」が背骨として貫かれていますね。それは今の言葉にも通じるのかなって。


G.RINA「自分をとりまく色々な形の愛、性とか、郷愁、人生……そういう色んなモノを『愛』で包み込みたかったんですよね」


——そう思われたのは?


G.RINA「いま、作品として形に残せる機会があるなら、肯定的なモノを作りたい、そういうものを聴いてもらいたいって思ったんですよね。肯定を届けたいって。そしたら『LOVE』は『生きる事の肯定』でしょう。子供がいることが作品に影響してるとしたら、そういった感情を形にしたいって感じた事だと思います。子供がこのアルバムを聴いて意味が分かるようになった時に、その背中を押せるような音楽になったらいいなって。どんと押すんじゃなくて、それとなくそっとね。それは子供だけじゃなくて、聴いてくれる人の背中も。そのひとそれぞれのタイミングで」


——客演の人選もバラエティに富んでいますね。


G.RINA「どのアーティストも雑食な感性のある方々だと思っていて、勝手になにか通じるものを感じていたんですよ。LUVRAWくんに参加して貰った“Sweet Juicy Luv”はエロティックな雰囲気でつくりたかったので、トロトロな感じで、エロス表現を良い温度で出来る男性ヴォーカリストは、やっぱりLUVRAWくんしかいないなって。恋愛と音楽を準えた“Back In Love (Music) feat. PUNPEE”は、そのテーマを振ったら、PUNPEEくんはああいった形で返してくれて」


——「I Used To Love H.E.R」と言ってるように、暗喩的な内容になってますね。


G.RINA「いろんな意味にとれるように作れたと思います」


——そしてtofubeats“No.1 ”のアンサーとも言える“愛のまぼろし”にはtofubeatsを迎えられましたが、彼とのコラボは3作目になりますね。


G.RINA「先ほどの話にも通じると思いますが、彼も開いてるんですよね。本人は一見控えめな感じだけど、伝えたいって気持ちとか、音楽で形にしたいものに対して本当に情熱を持ってるなって。『人に聴いてもらってこそ』っていう意識とその為の試行錯誤をいつもしているなあと。そういうところは逆に刺激をうけます」


——ミキシングはILLICIT TSUBOIさんが手がけられていますね。


G.RINA「自分の伝えたイメージをバッチリ形にして頂いたので、このアルバムにはTSUBOIさんのミックスの力も大きかったですね。ヒップホップのスペシャリストでありつつもTSUBOIさんの耳もスゴく開かれてると思います」


——最後に、これからの動きを教えて下さい。


G.RINA「12月2日の恵比寿NOSでのリリース・ライヴでは、このアルバムを全部バンドで再現する予定です。それに加えて、このアルバムで表現したかった、80年代、90年代へのオマージュを、ステージ上で、今の感じで、生々しく表現したいと思ってますね。制作に関しては、客演や提供など依頼があれば積極的にやりたいですが、ソロについてはまずはこのアルバムを広げていきたいと思ってます」



撮影 吉場正和/photo  Masakazu Yoshiba


取材・文 高木"JET"晋一郎/interview & text  Shinichiro"JET"Takagi


企画・編集 桑原亮子/produce & Edit  Ryoko Kuwahara



lottalove


G.RINA


『Lotta Love』


発売中


http://www.amazon.co.jp/Lotta-Love-G-RINA/dp/B015D63318


http://tower.jp/item/4015529/


https://itunes.apple.com/jp/album/lotta-love/id1048938730


G.RINA


シンガーソングビートメイカー・DJ


レーベルMelody&Riddimを運営。これまで5枚のオリジナルアルバム他、国内外・ジャンルを問わず幅広いアーティストへの歌詞/楽曲提供、リミックスや客演など多数行っている。(土岐麻子、南波志帆、坂本冬美、Dorian、RSD、DjMadd、tofubeats、OMSB 他)またDJとして、ミックスCD:Destination1-5、Strictly Rockers14、Jazzz Time2、Terra Disco 他。全編現地のダンス音源にこだわったミックスシリーズ、『♡♡India』、クワイト/クドゥロなどを集めた『♡♡Africa』、2014年にはブラジルのアンダーグラウンドダンス音楽を集めた『♡♡Brasil』をリリース。2014年8月27日シングルEP『空蝉Utsusemi』iTunes配信。2015年10月21日5年ぶりのニューアルバム『Lotta Love』G.RINAをリリース。


http://melodyandriddim.tumblr.com

http://lottalovegrina.tumblr.com

 

 

-Culture Party-


SETSUZOKU Presents


G.RINA”Lotta Love”Release Party


Suported by TOWER RECORDS


2015/12/02 (Wed) @ NOS EBISU


OPEN / END 19:00~24:00


Admission


※ 立見 ¥3,000 (1D)


*着席 SOLD OUT


特典


※着席・立ち見のお客様に先着順でG.RINAからのおたより & スペシャル音源「Midnight Sun feat. ZEN-LA-ROCK」をプレゼント。 ※特典はお帰りの際、入り口にてDLパスワードをお渡し致します。


予約受付はNOS EBISUオフィシャルHP予約フォームにて先着順でお受け致します。


お名前、電話番号、予約人数、最後に「G.RINAリリパ希望」と必ず明記の上、お申し込みください。当日券もご用意する予定でおりますが、規定人数に達した場合は販売しない場合がございますので予めご了承下さい。


PARTY LINE UP


LIVE


G.RINA & MIDNIGHT SUN


guitar:KASHIF (PPP)


keyboard:Ig-arashi


Bass:厚海義朗 (藤井洋平 & TVSCOT / cero)


drums:光永渉 (cero / Alfred Beach Sandai)


trumpet:高橋一 (思い出野郎Aチーム)


Baritone Sax:増田薫 (思い出野郎Aチーム)


Dancer:Yacheemi (餓鬼レンジャー) / FUMI / NAMImonroe


GUEST


tofubeats / PUNPEE / やけのはら / LUVRAW


DJ


DJ JIN (RHYMESTER)


MAL (PART2STYLE)


やけのはら


MC


ZEN-LA-ROCK


VJ:VIDEOGRAM (Tajif・RTR・de-sheevo) / Kazuki Homma / Photographer:Tsuneo Koga / Flyer Artwork:Oumi Futagami / Shooting & Editing:Do.Stock Works


主催・企画・制作:SETSUZOKU LLC / Melody And Riddim


特別協力:TOWER RECORDS / NOS EBISU注意事項


※着席のお客様はメニューから¥2,000以上のご飲食をお願いしております。


※着席のお客様はスタッフがお席まで誘導、ご飲食に関してご説明致します。


※当日は安全上の理由により喫煙はバーカウンター・入り口デッキのみとなります。


Infomation:NOS EBISU


東京都渋谷区恵比寿南2-3-14 コンツェ恵比寿B1


TEL:03-5773-1724

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http://www.neol.jp/culture/

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