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Ibeyi『Ibeyi』インタビュー

NeoL / 2016年4月8日 21時9分

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Ibeyi『Ibeyi』インタビュー

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにも参加したキューバを代表するパーカッショニスト、ミゲル“アンガ”ディアスを父に持つフランス育ちの双子姉妹デュオ、イベイー。中南米の伝統楽器を叩いたビート・メイク&プロダクションを担当する姉のナオミと、鍵盤のメロディにヴォーカルと歌詞をのせる妹のリサ=カインデ。ふたりのルーツであるヨルバの儀式音楽とヒップホップやR&B等のモダンなエレクトロニック・ミュージックを織り合わせた独創的なサウンドが評判を呼び、昨年リリースされたデビュー・アルバム『Ibeyi』はワールドワイドで高い評価を得た。そんなふたりは先日、初めての来日公演を開催。プリンスやボビー・ウーマックも惚れ込んだスピリチュアルでコンテンポラリーなイベイーの音楽の秘密、そしてふたりのバックグラウンドについて聞いてみた。


 

―日本に来ていちばん驚いたことは?

ナオミ「(フランス語で)あれ、何て言うんだっけ?」

リサ「カジノみたいな、ビデオゲームができるところで……(携帯で撮った動画を見せてくれる)」

―ああ、ゲームセンター。「太鼓の達人」ですね、それ。

リサ「しかも、すっごい子供みたいな子たちが遊んでるのよ!」

ナオミ「そう、みんなすごく若くて」

 

―いや、若いっていっても、たぶん18歳ぐらいですよ。で、ふたりは「太鼓の達人」やらなかったんですか?

ナオミ「ノー、ノー、ノー!!!」

―上手そうですけどね、「太鼓の達人」。ところで、これまで世界のいろいろな場所をツアーで回られてきたわけですが、そのなかで自分たちの音楽について新たな気づきみたいなものはありましたか? たとえば、自分たちの音楽のオリジナリティやアイデンティティに対する自覚がいっそう深いものになったのか、それとも、音楽性は違うかもしれないけどアイデアや考え方は自分たちに近いかも、みたいな発見があったりとか?

ナオミ「やっぱり、私たちはユニークだなって。すごくユニークな音楽をやってるって実感した。私たちの音楽の何がユニークかって言ったら、ミクスチャーっていう部分なのよ。それと同時に、いろんな音楽を耳にするなかで、いろんな音楽と自分たちの音楽との共通点も感じるのね。ただ、私たちの音楽は特別……っていうんじゃなくて、むしろ他とは違う点は、私たちがそれをガンガンにミクスチャーしてるってことなのよ。いろんな音楽をごちゃ混ぜにすることに何の抵抗もないの。だから、オリジナルというよりも、他とは違うってことなのよ」

―音楽的な刺激を受けるような出会いはありましたか?

ナオミ「もうたくさん!」

リサ「プリンスにも会ったし! すごくたくさんの魅力的な人たちに出会えた。有名な人もそうでない人も、すごく美しい人たちに囲まれていたなって感じ」

ナオミ「ただ、それと同時に意外だなって思ったのは……私は最初に音楽を始めたときに、みんなと繋がれると思ってたのね。去年から今までのあいだに、何百人何千人の人たちと出会ってきたんだけど、本当に心の底から通じ合えたって思えたような出会いは、本当にたまにしか起こらないの。本当に心から通じ合えたと思えた人は何千人中のたったの4人、って、それだけよ。でもその4人との繋がりは、自分にとって本当に特別なの」

リサ「JR(※『Inside Out』『Women are Heroes』等のプロジェクトで知られるストリート・アーティスト)に会ったし」

ナオミ「すごく仲良くしてて!」

リサ「昨日もチャットでメッセージを送ったばかりだし(笑)。うん、やっぱそんな感じよね。いろんな出会いを経験して、そこから通じ合うことによって、自分たちも変化して成長して行ったっていう感じ」

ナオミ「別に有名人でなくったって構わないのよ。それよりも人との繋がりを感じられるかどうかの方が大事」


 


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―ちなみに、プリンスとはどんな話を?

ナオミ「そうそう、ライヴに来てくれたんだけど、行くって言って来ないとか、気に入らなかったら途中で帰るとかいう話を聞いてたから、ものすごく緊張しちゃってて。でも最後まできちんと観てくれて、ライヴ終わりにも挨拶に来てくれたのよ」

リサ「そう、ナオミのことをベタ褒めしてたっていう。『またライヴ観に来るね』って言われたときには、2人揃って『お願いします!!!』って(笑)」

ナオミ「プリンスはミネアポリスに住んでるから、ミネアポリスでのライヴでの出来事ね」

―いつかプリンスとコラボレーションとか実現したら楽しみですね。

ナオミ「ほんとに!」

リサ「いつでも大歓迎よ! コラボレーションしたい人がたくさんいすぎて(笑)」

―そうした“他とは違う”イベイーの音楽が生まれた背景には、ルーツにあるヨルバの文化が大きなものとしてあるのはもちろんですが、加えて、ふたりが育ったパリでの暮らし――その異文化に対してオープンであるパリという環境も同じくらい大きなものとしてあったように思うのですが、いかがですか?

ナオミ「もちろん、パリに住んでいろんな種類の音楽に触れて来たことは私たちの音楽にものすごく影響してると思う」

リサ「実際、フランスからも影響を受けてるし、インスピレーションを受けてるし」

ナオミ「カルチャー的な部分でね。それは絶対にあるわよ。フランスに生まれ育って、フランスの音楽学校に通ってた経験があるからこそ、今の自分たちがあるわけだし。フランスって、いろんなカルチャーがミックスされてるのよ。それこそいろんな人種がいて、いろんな生活スタイルがあって、それが自分たちの音楽に影響してるってことは間違いないわ」

―たとえば「パリ・ミュゼット」なんかまさにパリ初のワールド・ミュージックであり大衆音楽だったわけですよね。そうしたフランス/パリならではの音楽風土が、ひいてはイベイーの多彩で自由な音楽を育んだのかな、と。

リサ「そうね、嬉しいなあ」

ナオミ「ありがとう!」



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―ところで、音楽学校ではどんなことを学んでいたんですか?

リサ「主にクラシック・ミュージックね」

ナオミ「もう10年以上も前よ」

リサ「ちなみに私はジャズと声楽も2、3年くらいやってたんだけど。そのあとイベイーがスタートして、そこから私達の冒険が始まったの」

―ちなみに、ふたりが覚えている一番最初の音楽の記憶は?

リサ「ベビーカーに乗って父親のコンサートを観てるところかな」

ナオミ「観客のなかで自分たちが一番若かったんだよね」

―ふたりで初めて音を出したときの記憶ってありますか?

リサ「憶えてないなあ。でもナオミが最初にカホンを演奏した時のことは記憶に残ってる。父親が亡くなった次の日のことで、そのときナオミが演奏してる姿の写真がたくさん残ってて」

―学校ではクラシックを学ばれていたということですが、たとえば思春期とかに初めて好きになった同時代の音楽っていったら、どんなものになりますか? 

リサ「キューバの女性シンガーのアイデー・ミラネス。キューバの次世代のシンガーで、本当に素晴らしいの」

―いわゆるポップ・ミュージックには関心ってなかったですか? 

リサ「彼女もれっきとしたポップ・ミュージックではあるけどね。キューバのポップ・ミュージックだけど。一番最初に好きになったジャズのアーティストでいったらニーナ・シモンかな」

―ヒップホップはどうですか?

ナオミ「私はヒップホップ大好き」

リサ「両親がヒップホップ好きだったから、その影響もあるよね」

ナオミ「エミネムとか、Jエレクトロニカとか、スヌープ・ドッグとか、本当にいろいろ」



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―フランス国内のヒップホップはどうですか?

ナオミ「たしかにフランスにもヒップホップ・グループはあるんだけど、何て言うか……」

リサ「(小声で)全部SHITだから(笑)」

ナオミ「でも、2つだけ好きなグループがあって、一つはオキシモ・プッチーノで、すごく有名で本当に好き。あとはオーレルサンね」

―日本ではホーカス・ポーカスとか人気だったりしますね。

ナオミ「あー、そうそう! いいよね! 熱心に聴いてるわけじゃないけど、すごくいいよね」

―フランスはそもそもヒップホップが盛んな国なわけですけど、とりわけ 2000 年代の半ば以降のフランス/パリでは、ラップやヒップホップがカウンター・カルチャー的な大きな盛り上がりを見せたと思うんですね。そうした動きを近いところで見ていた部分もあったのかな、と。 

リサ「ちょうどその時期、移民の人たちが多く入ってきたから、ヒップホップが盛り上がったんじゃないかってこと? というよりも、フランスがどんどんコスモポリタン化してるからじゃないかな。いろんな人種の人たちが出入りするようになったり、それにフランス人ってもともと海外に旅行するのが好きだから、それもあるんじゃないかな。フランス国外に旅するフランス人が前よりも増えて、そうした人たちが行く先々で新しい音楽を見つけて、それをパリに持ち帰ったっていう。今のフランスは人種のるつぼみたいなものだから、いろんな音楽が飛び交ってて、今までフランスになかったような音楽もどんどん親しまれるようになってて、そこからまた広がっていってるっていう」



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―そういえば去年、アルバムのリリースに合わせてミックステープを公開してましたよね? 『EE-BEY-EE』ってタイトルの。

リサ「あのタイトル、ウケるよね(笑)」

―もともとミックステープを聴いたり作ったりするのが好きだったりするんですか?

リサ「うん、大好き。自分たちの音楽がどういうもので、どういう音楽に影響を受けてるのかっていうのが伝わるし、自分の好きなアーティストがどんな音楽を聴いてるのか知って、そこからまた新たに好きな音楽を発見できたりするのって、すごくいいよね」

―ケンドリック・ラマーやディアンジェロに挟まれてケイト・ブッシュの“嵐が丘”があったのが面白くて。

リサ「えーっ、意外かな? 大好きなの。っていうか、ほんとに何でも好きなの。そこがミックステープの狙いでもあるわけでしょ? ヒップホップが好きだからって何もヒップホップだけに集中しなくちゃいけないってことじゃなくて、何だって自分の好きなものを聴いたらいいんだっていう。そのうち初めはちょっと変だなと思ったものも、次第に病みつきになったりして。その良い例がゴールド・チューンよ。最初にゴールド・チューンを聴いたときには全然理解できなかったの。それが何年か後に友だちからゴールド・チューンを歌ってって頼まれて、初めて真剣に聴いてみたんだけど、そこからもう見事にハマったて感じ。頭で理解しようとしたんじゃなくて、本当に感覚のレベルで理解できたのね。あの衝撃と感動は本当に忘れられないなあ……。だから、私たちも普段からインタビューで、何だって自分が好きだと思うものを自由に取り入れていったらいいんだよってことを伝えてる」

―なるほど。対して、ケンドリック・ラマーやディアンジェロの作品に代表される、生演奏やバンド・アンサンブルというものを捉え直すクリエイティヴな姿勢やプロダクションの追求、またそうしたなかでヴォーカルやコーラスをいかに機能させるか、みたいなアプローチは大いに刺激を受けるところだったりするのではないでしょうか?

リサ「うん、ケンドリックとは絶対にコラボレーションしたい(笑)! 本当に刺激を受けるし……アーティストのなかには、ものすごく奇怪なことをやりつつも、クールでみんなから憧れられてるような存在っているじゃない? 常人の感覚とはかけ離れてるんだけど、それでもコマーシャルで人気があるっていう。その両方を同時にやってのけてる人がものすごく好きで。普通とは違うことをやりながらも、みんなに愛されて親しんでもらえることは可能なんだっていう、ケンドリックやディアンジェロなんかまさにそのお手本みたいな存在だよね」

―それこそグラミーみたいな大舞台で表彰を受けながら、アンダーグラウンドでも支持されるような存在っていうのは、ふたりが理想とするところでもありますか?

リサ「もう、まさにそうよ」

ナオミ「私たちもその両方から支持されたい(笑)!」

リサ「すべてのミュージシャンが目指してるところはそこなんじゃないかな? 音楽通のクールな人たちからも愛されたいし、普通にそこらへんを歩いてる人たちにも楽しんでもらいたいっていう。アーティスティックな楽しみ方もできて、しかも、みんなに普通に歌ってもらえる曲とかになったら最高だよね」

―そうなると、次のアルバムが楽しみになりますね。どんな感じになりそうですか?

2人「(声を揃えて)ヒップホップよ」

―おお。

ナオミ「今以上にヒップホップ寄りにね!」

リサ「ファーストは今でも好きだし誇りに思ってるけど、新しくアルバムを作るからには1枚目とは違うものにしていかないとね」

ナオミ「今は踊らせたいモードなの。ファーストでは切ない想いをさせて泣かせたから、今度は踊らせたいっていう。次のアルバムではぜひ踊ってほしい! まあ、好きなように楽しんでもらっていいんだけどね。でも、とりあえず踊りは外せないわね(笑)」

―そのアルバムにケンドリックとプリンスが参加することになったら最高ですね(笑)。

リサ「いつか実現しますように!」



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撮影 永瀬沙世/photo  Sayo Nagase取材・文 天井潤之介/text  Junnosuke Amai企画構成・編集 桑原亮子/direction & edit  Ryoko Kuwahara

 



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Ibeyi『Ibeyi』


(XL / Hostess)


発売中


※ボーナストラック2曲、歌詞対訳、ライナーノーツ付


※最新アルバム『Ibeyi』iTunesにて配信中


https://itunes.apple.com/jp/album/ibeyi-bonus-track-version/id934736952?app=itunes&ls=1&at=11lwRX


Ibeyi


21歳のフランス/キューバ出身、ナオミ・ディアスとリサ-カインデ・ディアスの双子によるデュオ。キューバを代表するパーカッショニスト、ミゲ ル“アンガ”ディアスを父親に持つ。 英語とナイジェリアなどで使われているヨルバ語で歌い、彼女達のサウンドは自然を愛する彼女たちの伝統的要素とフランク・オーシャン、ジェイムス・ブレイ ク、キング・クルエルなどパリに住むティーンエイジャーらしいモダンな音楽など幅広い影響を受け、独自のミニマル・サウンドを築き上げている。 リチャード・ラッセルをプロデューサーに迎えたデビュー・アルバムを2015年2月にリリースした。

 

 








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http://www.neol.jp/culture/

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