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門脇 麦+菅田将暉『二重生活』インタビュー

NeoL / 2016年6月25日 14時35分

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門脇 麦+菅田将暉『二重生活』インタビュー

哲学科に通う女子大学院生・白石珠(門脇 麦)が、ソフィ・カルによる『文学的・哲学的尾行』を実践、対象者である石坂(長谷川博己)の秘密を知ることにより、自身の感情や恋人である卓也(菅田将暉)との同棲生活にも影響を及ぼしていくーー。小池真理子原作の『二重生活』をドキュメンタリードラマで高い評価を得ている監督・岸 義幸が大胆にアレンジした本作。「理由なき尾行」という仄暗い扇情を掻き立てる非日常的な軸をより鮮明に浮かび上がらせるのが、同棲している恋人同士の日常を描いたシーン。初の共演となった同世代のふたりに、本作への向き合い方、現場で様子から今後の展望までを聞いた。


 

——まず、お二人が原作を読まれた感想を教えてください。

門脇「読み物として非常に面白く読ませていただきました。尾行のシーンが多かったので、映画ではどういう風に撮るのかなと想像もつかなくて」

菅田「僕は原作を読んでいないので、脚本の感想になりますが、自分目線で脚本を読んでいたからなのかもしれないですけど、尾行というとちょっと現実離れしている感じもあるじゃないですか。でも、人間同士のすれ違いであったり、なにかにのめり込んで周りが見えなかったり、それを自分でわかっていながらもちょっと嘘ついたりとか、その辺がすごくリアルで嫌だな、と。その両方をやろうとしているんだったらすごいなと思いました」

——俳優として今回の役柄を演じるにあたり、どのあたりが楽しみでしたか?

菅田「門脇さんとちゃんとお芝居するのが初めてだったので、それがすごく楽しみでした。噂で岸監督はテストをせずにそのままカメラを回すというのを聞いていましたし、そこも楽しみでした。役柄に関しては、久々にニュートラルというか、主要4人の中では真っ直ぐな性格に描かれている。描かれているだけで、もしかしたら他にもあるのかもしれませんが、そういう真っ直ぐな役柄が久々だったので、普通の生活を送る楽しみがありました」

門脇「私は岸さんの作品を拝見していて、いつか絶対ご一緒したいと思っていたので、お話をいただいたときは嬉しかったですね。キャラクターに楽しみというのは普段からあまりないんですけど、私は割と『……』な役が多くて(笑)。セリフが8割ないみたいな。今回は尾行ということもあって、台本がほぼほぼ『……』だったので、『……』を極めることが出来る作品になったのかな」

菅田「確かに、台詞があんまりないよね」

——言葉に頼れないというのは難しいですよね。

門脇「そうですね」




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——菅田さんもおっしゃっていましたが、岸さんの現場はカットをかけず回すなど独特だとうかがっています。実際に体験していかがでしたか?

菅田「本当に早いんです。メイク時間のほうが長かったりします(笑)。ありのままに体験したことをお話しますと、メイクを終えて衣装を着て現場に行ったら、卓也の机がある、珠の机がある。生活空間の説明というか、家賃がいくらなどの話と内見のようなことがあって。『回します、用意スタート』。20分後に『はい、オッケー』。これ、すごいですよね。カメラの画角が全く分からないですし、そんなところを気にしなくていいよと。カメラマンと演者にしかわからない距離みたいなものがあるんですけど、それが独特で、僕はすごく楽しかったです」

門脇「私もすごく居心地が良かったです。フレームを気にしないというのは常に目指しているところでもあるので。私は演技することにすごく恥ずかしさがあって、そこから逃れるために何をするかというのが普段の課題なんです。現場によってはこのやり方は通用しないので、いつも自分が言葉には出来ないけど目指しているものが、この現場にはベースとしてあったのが嬉しかったですね」

——今回は特殊な撮り方というのもあり、お二人が演じている恋人同士がすごく自然に見えました。食事や濡れ場という日常がちゃんと描かれてるのがすごくリアルだなと。リアリティを出す工夫というか、どんなやりとりでコラボレーションされたんですか?

門脇「特に芝居をああしようこうしようという会話をした覚えはないんですが、さっきの話にもありましたけど、『ここからここまでの画角で撮るのでここからここまでがこの世界です』というのではなく、『この家すべてで生活してください』ということだったので、演技だけではない、空気を映す撮り方もリアリティを出すうえで大きかったんじゃないかなとは思います。特になにかを頑張った記憶がないですね。無理も、違和感もなかった」

菅田「考えたら不思議なことだよね。テストなく濡れ場もやってるわけだし」

門脇「そうだね。でも何も思わないというか、ナチュラルでした」

菅田「普通の感覚で言えばありえないことが起きてるんですけど、あの空間だとキスしようとセックスしようと違和感がない」




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——アプローチの仕方が似てたりとか、そういうのは特に感じたりしませんでしたか?

菅田「お芝居とはいえ、どこかには経験から来ている自分みたいなのがあるんだと思うんです。ある種ト書き通りといえばト書き通りだし、決められていることがあるとしたら、途中で携帯を見るとかはあるけど、他はなにも決まってないですし」

門脇「インして初日から2、3日で菅田くんとのシーンを撮っているんですね。尾行に行くと、キャラクターというより尾行によって見えてくるものや、そこで行われていることがシーンの肝になるので、珠のキャラクターのベースは卓也とのシーンで提示しなきゃなというのは自分の中にはあって。だから二人の空気がマッチするというか、私も菅田さんもバロメーターの中でどのあたりが合うのかを無意識のうちに探っていたと思うんですけど、最初からピタッときた感じでした。私が菅田くんの空気に乗っかったところもありますし、逆に菅田くんも私の空気に乗っかったこともあるかもしれないし。具体的に乗っかろうとは思ってないですけど、そういうことはもしかしたら無意識にされていたかもしれないとは思います」

——お二人の生活の部分でキャラクターを出していかれたということですが、尾行することによって珠のキャラクターもちょっとずつ変わっていきますよね。その変化を浮き彫りにしてくれるのが卓也との生活だったと思うんです。キャストのほとんどが二重生活をしているような中で、唯一二重生活をしてない設定である卓也から見た珠、そしてその珠と向き合う自分というのを3日間でどう演じられたのかなと。

菅田「想像でしかない部分もあるんですけど、卓也として自然と身体が動く時というのはやっぱりありました。カットがかからなかったときに、珠が急いで出て行った後の脱ぎ散らかした服を見て、もしかしたら今までは普通に片付けて出かけて行っていた人がそうしているならば、なにかが起こっているんだなと想像はつくし、なんとなくその洗濯物を片付けてみたり。急にクラゲを観に行ったと大げさな動きをする珠に、無意識のうちに、なんか今までと違うなと頭の中に引っかかっていったり。その時に卓也もちゃんと言えればいいんですけど、そういうのが積み重なってカップラーメンのシーンに繋がると思うんです。最後にお互いの本心が出るというのはリアルですよね。なんなんですかね、あれは。恋人のあるあるですよね(笑)。あの時も『こういう賞を頂いたんだよ』『よかったね』と普通に話して、でも次の日には、ね」




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——あのシーンは切なかったですね。「理由なき尾行」というのは、その言葉だけでどんな映画なんだろうと気になってしまうし、強い印象を受けたんですが、お二人も尾行はしないまでも、人間観察が好きだったりしますか?

門脇・菅田「好きです」

門脇「街にいる人とか見ちゃうんです。小学、中学生くらいの時から気づいたら人のことを見ていたんですよね。誰がとか、どういう人かというのではなく、人間を動物として見た時に、いろんな思考や感情があるじゃないですか。それが動き方に表れたりするのが面白いなと思っていました。哲学書も好きでしたね。でも飽き性なので、面白いなと思って本を買ったけど読まないなんてこともよくあります(笑)」

菅田「東京はいろんな人がいて、この世界にいるといろんな人と出会えますし、なにか比較するというわけではなく、自然といろんな人が目に入ってくるのはあります。僕は哲学書は読んでなかったけど、占星術的な統計学は好きでした。月とか、母親が好きだったので読んでましたね」

——観察つながりで、今回の共演でお互いを観察しての感想をお聞かせください。

門脇「菅田くんはよく寝ます(笑)」

菅田「よくご存知で(笑)」

門脇「お弁当をすごい早さで食べ終わって、気づくと寝てたりとか、本番中も寝てましたよね」

菅田「寝たね(笑)。俺、寝たことに気づいてなかったもん。恥ずかしかったなあ。助監督さんがフォローしてくれたんだよね。ツンツンってつついたり、台詞を飛ばしたのを『すみません、僕です!』って謝ってくれたり。それくらい心地よかったんですーーという言い訳で(笑)。門脇さんは、体躯の動かし方というか身のこなしがすごく柔らかくて、キャッチーなんだけどナチュラルなんです。あれこれ考えていくと動線が硬くなってこわばっていくんです。自分はそうなりがちなんですが、一緒にお芝居しているとほどけだ瞬間が何回かあったんで、すごいなと」

——菅田さん自身もそれを取り込めた?

菅田「取り込めたというよりは二人で生活してるので、表面的じゃない感じで繋がっていたのかなと。あと、声がいい。聞きやすいけど変に高くなくて、すごく印象的でした」

門脇「菅田くんは柔軟性がある」

菅田「あれ、寝てるって感想だけでは物足りなくなってきたの?(笑)」

門脇「そう(笑)。良いも悪いも全部ひっくるめて、とりあえず一回飲み込むんです。いきなり『それはダメ』と拒絶しないのはすごいなあと思いました」

菅田「ちっちゃい頃からのクセなんですよ。拒否ってものがなくて。困る時もあるんですけど」

門脇「強みだよね」

菅田「そうなのかな。そうならありがたいけど」

——珠は尾行することで主体と客体が入り混じっていきますが、門脇さんは自分だったらそうはならないとおっしゃられてました。普段、役柄を作るうえでもはっきりと自分と役の線引きをされますか?

門脇「私、役を作るという感覚が本当にわからなくて。ひとつあるのは、普段の作品だったら悲しいシーンをやって家に持ち帰ることはないんですけど、今回はそれをしない方が面白いかなと思って、ずーっと珠の感情のままでした。私自身は心赴くままにしか生きてないので、尾行して人の何かを見たくらいで心のセンサーには触れないんですけど、珠みたいな状況で生きてきているとしたら心が動くのも分かるので、今回はその分かるという部分を使った感じです」

菅田「自分が主体だから、どっちの感情か分かるってことでしょ?」

門脇「そういうことだね。自分の中の感情を使うんですけど、その感情は私の感情ではないってことは分かります」




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——なるほど。では、改めて『二重生活』という映画の魅力を教えてください。

門脇「いろんなとこに視線を置いていて、決まった導き方をされていないので、本当にいろんな見方が出来る映画なんです。珠に感情移入できる人もいれば、それぞれのキャラクターを見る人もいれば、尾行している珠をさらに尾行してそこに出ている人たちを観察しているような目線でも見れると思いますし、哲学や思考的な部分でも新鮮で興味深い。卓也とのシーンでの珠の心情など感情的に動かされる部分もありますし、単純に尾行してバレるかバレないかというスリルもありますし、いろんなものがある映画だな、と。しかも乾いた空気なのかと思いきやそういう映画でもなくて、『なんなんだ、これは!?』という作品になったのかなあと思います」

菅田「試写会で観て、自分が出ている作品の中で初めて普通に楽しめたというか、ちゃんとお客さんとして観れたんです。大体いつもマネージャーと一緒に観に行って、その後二人で話す時間でどういう映画だったかなというのがわかるんですが、この作品はずっと話していたくなりました。すごく好きだったんです。それが今おっしゃってた通り、いろんなエンタテインメントが詰まっていて、想像を越えるような展開もたくさんあるし、あるあるも詰まってるし、静かでもなければうるさくもない多角的な魅力で。あと、本当に人の、心拍数をグラフにしたような心地よさがあるんです」

——お二人はほぼ同世代ですが、俳優さんの中でも特に同世代の方々を意識するということはありますか?

門脇「何年生まれ?」

菅田「1993年の2月」

門脇「じゃあ同じ学年ですね」

菅田「世代意識はあります。仲もいいし、それぞれがパイオニアになってアイコンになって、気づいたら面白い世代になっていたらいいなとは思いますし、もちろん嫉妬とか小さいことはいっぱいあるんですけど、特に意識しているかというと、どうなんですかね」

門脇「そうですね。いろんなことが一周しているのを見てきた世代だから、そろそろ新しいことをやろうよとみんなが思っているんじゃないかなと感じています。客観的にも、同世代で面白い人がいっぱいいると思います。菅田さんとも今回共演して、またお互いが違う風になった時にご一緒にするのもすごく楽しみです」

——将来的に、この世代で見てみたい風景や作品はありますか?

菅田「僕らの世代というのは、いい意味でも悪い意味でも、なんでもあるんです。メディアもたくさんあるし、映画、ドラマ、舞台もそう。例えばうちの父親とかもうちょっと上の世代だと、ラジオから聴こえてくる曲をその一回で耳コピして弾けるように頑張ったりしていた。今は選択肢がありすぎるからこそ紛れてしまいがちなんですが、そういう労力を使ったらすごいことになるんじゃないかという爆発力がある人がいっぱいいるんです。だからみんなが頑張って爆発できたらいいなというか。なんか、そんなことのような気がします。具体的になんだというのは分からないですけど」

門脇「5年後、10年後と違う形でいいものになっているとは思うんですけど、今、若い時にしか出ないパワーがあると思うので、そのパワーが集結してる作品を観てみたいですね。『青い春』とか、分かんないですけど、何年後かにこのくらいの年齢になった子が観て、強烈になにか刺さるような作品が作れたらと思います」

 

 

撮影 中野修也/photo  Shuya Nakano

企画・取材・文 桑原亮子/direction & interview & text  Ryoko Kuwahara

 


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『二重生活』


2016年6月25日新宿ピカデリーほか全国ロードショー R15+

原作:小池真理子「二重生活」(KADOKAWA/角川文庫刊)


監督・脚本:岸善幸「ラジオ」「開拓者たち」


出演:門脇麦/長谷川博己/菅田将暉/河井青葉/篠原ゆき子/西田尚美/烏丸せつこ/リリー・フランキー


配給:スターサンズ 公式サイト:http://nijuuseikatsu.jp/


(c)2015「二重生活」フィルムパートナーズ

http://nijuuseikatsu.jp

 

大学院の哲学科に通う白石珠(門脇麦)は、担当の篠原弘教授(リリー・フランキー)から、ひとりの対象を追いかけて生活や行動を記録する“哲学的尾行”の実践を持ちかけられる。同棲中の彼、鈴木卓也(菅田将暉)にも相談できず、尾行に対して迷いを感じる珠。ある日、資料を探しに立ち寄った書店で、マンションの隣の一軒家に美しい妻と娘とともに済む石坂史郎(長谷川博己)の姿を目にする。作家のサイン会に立ち会っている編集者の石坂がその場を去ると、後を追うように店を出る珠。彼の秘密が明らかになっていくにつれ、珠は異常なほどの胸の高鳴りを感じていくーーー。


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