YONCE (Suchmos)「MINT CONDITION」インタビュー
NeoL / 2016年7月6日 0時8分
YONCE (Suchmos)「MINT CONDITION」インタビュー
Suchmosが本当にクールでストイックに日本の音楽シーンをひっくり返してやろうとしている気概がみながっている。いや、これまでも十分そういった攻めのアティチュードを提示しながら、本当にオーバーグラウンドでもアンダーグラウンドでも差異なくリスナーを自由に踊らせるグルーヴとはなんぞや、個々人が独立したステップを踏みながら口ずさめる歌とはなんぞや、ということを提示してきたバンドではある。それも踏まえて、さらに新作E.P. 『MINT CONDITION』ではレイドバックしたグルーヴでリスナーの感性と身体を揺らす1曲目「MINT」からネオソウルなフィーリングが漂うインスナンバーの4曲目「S.G.S.3」まで、どんな音楽的アプローチを施してもリスナーを巻き込めるし、忘れがたい爪あとを残せるという自負が、これまで以上に満々と通底している。ボーカルのYONCEとじっくり語り合った。
―—『LOVE & VICE』もそうでしたけど、バンドの絶好調ぶりがダイレクトに表出しているE.P.で。バンドの状態としては、スタジオに入れば曲がどんどんできるみたいな感じですか?
YONCE「そうですね。曲自体はポンポン生まれて、俺がちょっとリリックを書くのが追いついていない部分が多々あるんですけど(笑)。このE.P.からさらにまた新たな段階に入ったなと思う曲も生まれてます」
——だからもう、このE.P.も現在進行形のモードではないということですよね。
YONCE「そうなんですよね。リリースされるころには過去、みたいな(笑)」
——いろんなタイプのアーティストと対バンする機会もどんどん増えてるじゃないですか。アーティスト主催のイベントに呼ばれたり。それは他流試合をしているような感覚もある?
YONCE「いや、いまのところはガキのころから聴いてたりしていたバンドが多いし、ceroとかは最近の先輩みたいな感じで。そういう意味では親和性のある対バンが多いし、心の辻褄は合ってますけどね」
——RIP SLYMEとかも世代ではあるのか。
YONCE「小学生のときのよく聴いていたって感じですね。あと、ミュージシャンとしては、ああやってトップモデルや女優と結婚するのってやっぱいいよなみたいな(笑)」
——そこ重要だよね(笑)。
YONCE「重要っすね。夢を見させてくれる存在という意味でも」
——メイクマネーした証みたいな。
YONCE「そう。でも日本のバンドマンにはそういう人ってあまりいないじゃないですか。意外と慎ましいというか。スキャンダラスなことがあんまり起きないなって」
——上の世代のアーティストに声をかけられるのはしてやったりという感じもある?
YONCE「単純な話ですけど、いままでそういう先輩方のお眼鏡にかなう若手が出てこなかっただけなのかなって。Yogee(New Waves)とかネバヤン(never young beach)もそうだし、俺らの世代で先輩にお呼ばれするバンドが出てきたのかなと。音楽的に一周した気がするんですよね。『この文脈が通じる若手がやっと出てきた!』みたいな感覚で見てもらえてるのかなという気がします」
——ワンマンの規模もどんどんデカくなっていて。
YONCE「そうですね。自分で言うのもなんですけど、美しい流れで活動ができてるので。どんどん階段を駆け上がって、スタジアムサイズの会場にたどり着きたいですね」
——フジロックもかなり楽しみでしょう? 今後の試金石になるライブになりそうだし。
YONCE「かなり。おかげさまでホワイトステージに立つので。フジロックって、苗場は日本だけど、ステージが世界みたいな感じじゃないですか? 現に出演者は日本のアーティストのほうが少ないし。そういう意味では海外のフェスに出るような感覚に近いので、そこで通用するライブを披露できるかというところにいま照準を合わせていて。『フジロックでもベストアクト獲るぞ、オラッ!』みたいなスタンスというか。そういう意識で『MINT CONDITION』以降の曲が生まれてるんですよ。フジロックに関してはやっぱり近い将来にグリーンステージのヘッドライナーを狙いたいですよね」
——当然のように狙ってる。
YONCE「もちろんです。調べたら、日本人でグリーンのヘッドライナーを務めたのは2000年のBLANKY JET CITYとTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT以来いないんですよね。フジは海外のフェスっぽいと思う一方で、『なんだよ、日本のフェスなのに日本人がヘッドライナーやってねえのかよ、じゃあ俺たちがやるしかないっしょ!』とも思うので」
―—フロントマンとしての意識もどんどん向上してるんじゃないですか?
YONCE「いや、俺は高校2年のときからずっとバンドをやってきましたけど、当時からロックスター志向があったので。『テッペンまで行くしかねえ』って感じでバンドをやっていて、そこに関してはずっと一貫してますね。変化があったとしたら、自分の歌やノリをしっかり提示できるようになったことくらいですかね。いまだにメディアではSuchmosはブラックミュージックのバンドとかシティポップのバンドって紹介されてるけど、俺のスタンスやパフォーマンスはデヴィッド・ボウイとかカート・コバーンのつもりでやってるんでっていう」
——ロックスターのつもりで。
YONCE「そう。という感じなので、俺自身は自分の存在をSuchmosの音楽性に寄せているつもりはまったくなくて」
——なるほど。独立した存在感のあるフロントマンでいたいと。
YONCE「そうですね。メンバーがタイトでクールなヴァイブスのある演奏で俺のステージを作ってるくれてるみたいな。彼らもそういうスタンスで演奏してくれているので。俺は演奏の上でいい感じに泳ぐみたいな感じです」
——日本の音楽シーンに長らくあったスター不在の季節を経て、いまはあらゆるジャンルでスターが求められていると思うんですよね。
YONCE「『スターがいないんだったら、俺がなっちゃおうかな!?』みたいなスケベ心をもったやつが俺らの世代には多いのかもしれないですね(笑)」
——高岩遼(SANABAGUN./THE THROTTLE/SWINGERZ)だってそうだろうし。
YONCE「ホントにそうだと思います」
——やっぱりお客さんにもスターに対価を払ったほうが強い満足感を得られると思うんですよね。カネを落とす気持ちよさを覚えさせるのもスターに必要な力だと思う。
YONCE「なるほど。そうかもしれないですね。『俺らは所詮こんなもんですから』みたいなスタンスで音楽をやってる人が多い気がする。これは音楽に限らない話かもしれないですけど。それはもったいないなと自分に自信があるんだったらそう言えばいいし。Suchmosのメンバーみんなこのバンドを結成するまでにいろんなカタチで音楽と関わってきて、根拠のない自信を持ってきたやつらで。そんなやつらが6人集まってみたら根拠のなかった自信が『あ、やっぱりマジで間違いないなかったな!』という確信に変わって、それをいま証明できてるから。すごく痛快ですね」
——イコール、自分たちが各々のスキルを高め続けるというストイックさも持ち合わせてるということで。
YONCE「そうかもしれないですね。自分のパートに最大限の責任感を持つことがすごく大事だと思います。あれなんて言うんですか? DIYブーム?みたいなものがあると思うんですけど。いろんなクリエイティブに関わっている人がみんな全部ひとりでやっちゃうみたいな風潮があると感じていて。それはちょっと違うなってずっと思ってるんですよ」
——プロ同士のチームでありたいということ?
YONCE「そうです。俺はボーカリストとしてプロでなきゃいけないし、他のメンバーもそれぞれのパートのプロでなければいけない。それはライブのPAでもレコーディングエンジニアもそうだし、それぞれのプロとチームとして動きたいので。だから『俺は映像も作れるし、レコーディングでミックスもできちゃうんですよ』というのは違うと思うんですよね。いろんなことができても中途半端になるのは違うなと。そういう意味でも俺たちはそれぞれのプロとしてベストを尽くしたいと思ってます。いいチームになってるなという実感はこの1年でグッと高まりましたし」
——『MINT CONDITION』の1曲目「MINT」は、いまのSuchmosがこのタイミングでこのレイドバックしたグルーヴでアンセムを作ったこと、その曲でリスナーを踊らせることにすごく意義のある曲だなと思っていて。
YONCE「うん、そうですね。去年リリースしたアルバム(『THE BAY』)のころからひとつメンバー間で考えていたことが、『日本人はとにかく踊れないから踊れるようにしてやろうぜ』ということで。そういう提案をアルバムでできたと思うんです。で、その次にリリースしたE.P.(『LOVE & VICE』)では『STAYTUNE』で速いBPMでも横ノリで踊れる楽しさを提示して。『MINT』はそこからまたグッとBPMを落としてじっくり踊らせる感じじゃないですか。これは俺的に(MISIAの)『つつみ込むように…』以来の快挙だと思っていて」
——なるほど(笑)。
YONCE「今年に入ってギターロックのバンドが出るようなフェスとかイベントに出る機会が多くて。それはそれでありがたいんですけど、他流試合というか道場破りするような、もう殴り込みに行くような感覚で臨んでるんですけど。そこに来ているお客さんに『横に揺れながら踊るのも楽しいよ』って提示し続けるのも大事だなと思って。で、お客さんも飲み込みが早いからこれは大丈夫だと思って。そういう意味でも『MINT』という曲がこのE.P.で担ってる役割はなかなかデカいと思いますね。あとは、デカいステージに立ってるイメージができる曲でもあると思います」
——間違いないね。シンプルに音楽としてすごく強い曲だと思う。
YONCE「うん。Suchmosはビートミュージックとかブラックミュージックみたいな括られ方をよくしますけど、それってすごく乱暴だなと思っていて。確かにブラックミュージックの要素は強いけど、ロックンロールだし、パンクだし、オルタナだと思ってるので。ザ・ビートルズの時代からバンドの音楽って全部ビートミュージックだって俺は解釈してるから。あとはリスナーがそのバンドの音楽をどう捉えて、その音楽の並みに乗っかるかというだけの話だと思います。だから、俺たちは俺たちなりの気持ちいい音の波の乗り方をリスナーに提示できればいいなと思ってます。それを一番簡単に提示できる場所はやっぱりライブなので。だから、ちょっと畑が違うとされているバンドがたくさん出るフェスとかで俺らの流儀やマナーを突きつけられるのはすごくいいなと」
——横ノリでも縦ノリでも踊りたいように踊れというスタンスをね。
YONCE「そうそう、横ノリだけじゃダメで。それで思うのは、ちょっと偏屈なオヤジみたいなことを言いますけど、みんなライブハウスでバンドマンの指示に従いすぎっていう。『踊れ〜!』って言われても音楽がダサかったら『踊んないよ!』ってスタンスでいいんですよ。『俺はカッコいい音楽じゃないと踊らないよ?』という人がもっといないとバンドのためにもならないと思うんですよね」
——対価を払ってんだからもっとわがままでいいよっていう。
YONCE「そうっす、そうっす。仕事や学校で超ストレス溜めてるのになんでわざわざ金払ってライブを観に来て自分を解放しようとしてるのにそこでも人の指図に従おうとしてんのっていうことですよね。OASISのライブ映像とか観てると客は自由で歌いまくってるじゃないですか。俺だったら『歌うんじゃねえ!』って言っちゃうと思うんですけど、そこで『うるせえ!』って返すのも自由だし。そのおおらかさが音楽のよさでもあると思うから」
——「でも、油断はできねえぞ?」っていう緊張感も大事にしてると思うしね。
YONCE「そうですね。俺らが毎回ライブアレンジを変えてるのはそういう意味でもあるし。盤としてリリースしたからって曲が完成したなんてことはないと思ってますから」
——リリックはあらためてメンバーとの絆を確かめ合うような内容だなと思って。
YONCE「6人で音楽を作ってきて、いままで『これからどうなるんだろう?』って思うことも多々あったので。絶対に音楽でメシを食ってやるっていう6人ではあるんだけど、このタイミングで『おおっ、よかった、よかった。危なかったね!』って思えたというか(笑)」
——危なかったというニュアンスもあるんだ。
YONCE「やっと『この調子だったら無敵だよ! 優勝だよ!』ってやっとホントに実感できたというか。あとは、さっき言ったことともつながるんですけど、バンドがライブをするときにその空間を日常より豊かじゃないといけないと思ってるから。そういう思いもサビメロの歌詞に込めようと思って。歌詞にある“兄弟”というフレーズも俺にとって特別な感じがあって。去年の夏、俺的にデカかったのは高2のころからずっとやってきたバンドを解散したことで」
——OLDJOEですよね。
YONCE「そう。OLDJOEを解散して、あのメンバーたちに『いつかまたデカいところで一緒に音楽を鳴らそうぜ』って気持ちがあるので」
——2曲目の「DUMBO」はSuchmos流のファンキーなロックナンバーで。これは縦軸のグルーヴに横ノリを加えるという感じですよね。ライブではグランジみたいな響き方もしてるんですけど。
YONCE「ああ、そうっすね(笑)。この曲は去年くらいからずっとライブでやっていて、アレンジも変えまくって、ライブでは超ゴリゴリのロック感を出してますね。レコーディングではゴリゴリのロックで押し通すのは芸がないよってことで、音源を聴いてライブを観たときに裏切られたと思わせるような音源にしたいなと。俺ら的にはレイジ(・アゲインスト・ザ・マシーン)レッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)がロックのフィールドでヒップホップを解釈するアプローチの逆をやってみるみたいな」
——まさに。
YONCE「打ち込みにも思えるような一定のビートの上に全パートがユニゾンしたリフを気合で一発録りするみたいなメンバーを俺は『超大変そうだな〜』と思いながら眺めていたんですけど(笑)」
——こっちのリリックはかなり怒ってるよね。「え、おまえらアマチュアレベルなのにプロって名乗ってるの?」みたいな視点なのかなと。
YONCE「これはね、中途半端に片足だけ突っ込んでいるような人間について牙を向いていて(笑)」
——なるほど(笑)。
YONCE「『え、どっちのなの?』みたいな。何かの仕事に片足突っ込んで、『私、顔が広いんだ〜』って通用するような、そんな甘い世界なんてないよっていう感じですね。『だったら何かのプロになってみろよ!?』みたいな。そういうやつらにすげえイライラしていた時期があって。そういうモードで書いた歌詞です(笑)」
——現段階で言える、このE.P.を経て、現在進行形のSuchmosのモードってどんな感じですか?
YONCE「まずすでに超ファンキーな曲が何曲かあって。俺はプリンスがやったことって、ブラックミュージックをベースにしている人が正当にロックを昇華したことだと思っていて。ジミヘン(ジミ・ヘンドリックス)がギリギリやれなかったことを成し遂げた人だと思ってるんですよね。そういうニュアンスに近い曲ができて、『これはちょっとヤバいやつができちゃったな』と思ってます」
―—それは楽しみだなあ。
YONCE「早くライブでできたらいいですね。楽しみにしていてください」
撮影 依田純子/photo Junko Yoda
取材・文 三宅正一/interview & text Shoichi Miyake
編集 桑原亮子/edit Ryoko Kuwahara
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後日当選された方にはいただいたメールアドレス宛にNeoL編集部よりご連絡させていただきます。
Suchmos
「MINT CONDITION」
2016年7月6日(水)発売
[収録曲]
1.MINT
2.DUMBO
3.JET COAST
4.S.G.S.3
▷ suchmos.com
https://www.amazon.co.jp/MINT-CONDITION-Suchmos/dp/B01EP66EOU
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