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The xx『I See You』Interview

NeoL / 2017年1月8日 20時28分

The xx『I See You』Interview

The xx『I See You』Interview



昨年12月に行われた一夜限りの来日公演。あの、新旧ナンバーがひとつのストーリーを描くようにしてシームレスに並べられたセットが物語るとおり、The xxの3作目となるニュー・アルバム『I See You』は、かれらのこれまでと現在とが分かちがたく結ばれた一枚、としてある。そして、そのふたつを繋ぐ重要なピースとなったジェイミー xxのソロ・アルバム『In Colour』(2015年)のフィーリングを引き継ぐように、そのメロディやビート、ひんやりとした気配をたたえていたサウンドスケープは、鮮やかな色彩と力強い高揚感で躍動している。今回の『I See You』とは一言ずばり、The xxによる満を持しての「ポップ・レコード」。ダンサブルで、ロマンチックで、親密さに溢れていて、けれど刹那的。インタヴューに応えてくれたジェイミーとオリヴァーの言葉からは、そんな現在のバンドを満たしている充実感が伝わってくるようだ。


―昨夜のライヴ、最高でした。バンドの過去と現在が、ジェイミーのソロ・レコードを介してひとつに結ばれるようなストーリーが浮かび上がってくる構成というか。


オリヴァー「本当にそうだよね。今はアルバム4枚ぶんの中から曲を選べる状況になったからね。The xxとしてのアルバム3枚ぶんとジェイミーのソロと。だから、セットリストを組むだけでも楽しかったし、こんなにバラエティのある中から曲が選べるっていうのが初めての経験だった」


―ニュー・アルバムのリリースを控えて、現在のバンドがとても充実した状態にあるってことを示すライヴだったように思います。


オリヴァー「自信がついたってことだろうね。自分に自信が持てるようになることで、世界がまた今までとは全然違って見えてくるものだし。実は僕は長いこと、ステージに立ってパフォーマンスすることは半ば義務みたいに感じてたところがあったんだ。自分が本当にやりたいことはただ曲を書いてレコーディングすることであって、ステージで演奏するのはあくまでも曲をみんなに聴いてもらうための手段に過ぎないって考えていたというか。ただ、長い間ステージから遠ざかっていたときに、自分がどれだけステージで演奏するのが好きだったのか実感した。僕の仕事の内訳の半分はスタジオで曲を作ることで、もう半分はステージで演奏することだと思うんだけど、今、そのステージで演奏することがどんどん楽しくなってきてる」





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―その「自信」というところとも繋がってくる話だと思いますが、今回のニュー・アルバムの『I See You』は極端な言い方をすると、静から動へ、モノローグからダイアローグへというふうに大きな飛躍を感じさせるアルバムだと思います。


ジェイミー「今回、何も決めずに……自分達が何をしたいのかも、どういうサウンドにしたいのかもはっきりわからなかったけど、ただ今までとはまったく違う経験をしてみたいという気持ちがあって。それはレコーディングに関しても同じで、それで地元からできるだけ離れたところで曲を作ってみようってことで、今まで行ったところのない土地に行って、3人で一緒に生活した。そうやって長い時間を一緒に過ごすことで、お互いのことをより深く知り合ったり、お互いや自分自身について今までとは違う新しい発見があったりしてね。それまではスタジオに篭って、緊張感のあるピリピリとした空気の中でレコーディングするのに馴れてたから、それはそれで良い経験にはなったけど、逆に難しい面もあって、作品との距離があまりにも近くなりすぎて、かえって難しいと感じることもあったよ」


―「新しい発見」?


ジェイミー「どうだろう、新しい何かを発見したというよりも、むしろ元々自分達が持っていた性質に気づいたって感じじゃないかな。ステージの上でこんなに楽しめる自分がいるんだってこととか……前はステージで何かやるにしても、頭でっかちになってあれこれ気にしてたりしてたけど、今は余計なことを考えずに楽しめるようになった」


―今回のアルバムは、より自分達の本質、本来の姿に近い感じですか?


ジェイミー「というか、単純に大人になったんだろうね。それに年齢的なことも絶対にあると思うよ。この仕事を始めたときはまだ10代だったのが、今は30代に近くになったんだから」


オリヴァー「失礼な(笑)、僕はいまだに18歳のままだからね(笑)。気持ちの上では、永遠の18歳だよ(笑)」


―(笑)資料によれば、今回のアルバムの制作に臨むうえで大きなモチヴェーションのひとつになったのが、オリヴァーとロミーも参加した去年のジェイミーのソロ・レコードだったそうですね。


オリヴァー「一番感動したのは、アルバムよりもむしろステージのほうだよね。観客としてステージで演奏するジェイミーの姿を初めて観たんだよ。普段はジェイミーがステージで演奏してる姿を目にする機会なんてないからさ。ステージでは観客側を向いて演奏してるし、たまにジェイミーの様子をチラッと伺うくらいで(笑)。ただ、実際、観客としてステージの上で演奏する姿を観て、すごく不思議だったし、ものすごく感動して……しかも、ジェイミーってあんなに踊れる人だったんだって意外な発見もあったりしてね(笑)。ステージで堂々と演奏してるジェイミーの姿を観て、こんなに自信に満ち溢れた人だったんだって。それに感動して、僕もロミーも、その自信に満ちたジェイミーの姿をもう一度観てみたい、僕が観客席から眺めていたあのジェイミーと一緒のステージに立ちたいって気持ちになっていったんじゃないかな。あの心から幸せそうで輝いている、まさに僕達2人にとっての自慢のジェイミーと一緒にステージに立ちたいという気持ちと同時に、僕もロミーも曲を書きたい衝動に駆られたし、今の自分達にできる最高の曲を書いて、ジェイミーと一緒のステージに立つんだっていう気持ち……そこに今回ものすごくインスパイアされたよね」


―逆にジェイミーに訊きたいんですけど、あの『In Colour』というアルバム自体、あるいはあのアルバムを作った経験は、今回のニュー・アルバムの制作にどういうふうに反映されていると思いますか?


ジェイミー「個人的には、あのアルバムでツアーをした経験から学んだことが大きかったかな。それに技術的なことについても、ソングライティングについても色々学ぶことがあった。ソロ・アルバムを作ることで、それまでとは違う曲作りの方法を経験して、さっきも言ったように自分自身が前よりも少し成長したこともあったしね。それと今回のアルバムに関して言うなら、目標を設定しないで曲作りができたのがよかった。自分がソロを作ったときと同じように、ライヴで曲をどう再現するかとか意識しないで曲を作ることができて……そういう意味では、今まで以上に自由だったのかもしれない。単純に、何年もスタジオで一緒にレコーディングする機会がなかったこともあるし、また3人で一緒にスタジオに入って曲が作れるというだけでもすごく嬉しかった。今言ったすべての要素が折り重なって、今回のアルバムの音に影響してるんだろうね。スタジオに入って、ただ今のこの瞬間を楽しもうという。実際、作ってて本当に楽しかったしね」


―たとえば“I Dare You”みたいな高揚感のある曲って、これまでのThe xxにはなかったタイプの曲ですよね。


オリヴァー「そうだよね、本当に“I Dare You”はこれまで作った中で最高にポップな曲だと思う。3人とも大のポップ好きなんだけど、それまでポップ・ソングをやることに多少照れ臭さがあったんだよね(笑)。あの曲はアイスランドのレイキャビクに滞在中に書いてたんだけど、曲作りの合間にもラジオでずっと音楽を聴いてて、まさに今どきのヒット曲を大量に聴いてたんだけど、もともとポップ好きってこともあって、それで自然にああいう曲が生まれたんだろうね。これまでだったら、ポップ・ミュージックをやることに気恥ずかしさみたいなものがあったけど、今回それがなくなったんだよ」


―ジェイミーはどうですか?


ジェイミー「いや……もちろん、各セッションごとに自分なりにこういう形に持っていきたいっていうアイディアはあったんだけど、なかなか自分の思い通りにはいかないというか、あくまでも3人の共同作業で作ってるわけだから。曲も最初に自分が思い描いていた形とはどんどん変化していくし……ただ、あくまでも自然に変化していったもので、そのほうが曲にとっても一番いいと思ってる。あらかじめ決まった型に押し込むよりも、その場で一番いいと思ったアイディアを自由に出していくほうがうまくいくから」


―ちなみに、今回3人で共同作業していく中で一番変化した曲っていうと何になりましたか?
オリヴァー「1曲につき20パターンくらい違うヴァージョンがあるからなあ……しいて言うなら、“A Violent Noise”あたりかな」


ジェイミー「うん、そうかもしれない」


オリヴァー「あの曲は、もともとは『In Colour』用に作ってた曲なんだよね。まだ『Coexist』のツアー中で、思いっきりジェイミー色が強いんだけど、僕とロミーとがギターとベースのヴァージョンを作ったりして。その後もさんざん色んなことをやってみて、もうどうにもならないかもっていうくらい色んなヴァージョンを試して、最終的にはあの形に落ち着いた。まあ、今回のアルバムの中に入ってるヴァージョンが、現時点で自分の中で一番しっくりくる形にはなってるけどね」


―先ほど「成長」や「大人」という話が出ましたが、そうした変化は今回の歌詞の部分にも影響していますか?


ジェイミー「歌詞に関しては、自分達が歌っていたことを実際に経験するようになったことが大きかっただろうね。ファーストを作った頃は、それこそまだ10代だったし、その多くがラヴソングで、もちろんパーソナルな内容なんだけど、実体験をもとにしているというよりは、自分が頭の中で想像したこととか、こうであったらいいなという理想をもとにして書いている部分もあって。あるいは、自分じゃなくて、まわりの人達の経験をもとにしていたりね。その意味で言うと、『Coexist』はファーストよりも自分達の実体験が反映されてるんだろうね。で、今回のアルバムではそのさらに先を行ってるというか、歌詞を書くことで自分自身が癒されていくような、セラピー的な感覚すらあって……曲を書くことで、それまで自分自身が経験したことや、これまで生きてきた人生を、自分なりに整理してるんだろうな。そういう意味では、これまでの歌詞とは、そもそもの出所が違っているような気がする」






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―今回のアルバムでは、愛の始まりから終わりまでが、その光と影の両方を捉えるかたちで描かれています。


オリヴァー「今作は、今まで以上に喜びについて歌ってるのかもしれない。だからって、失恋を歌った曲がないわけじゃなくて、君がさっき言ったように光と闇の両方について触れていて、そこがいいと思ってる。この中で描かれている喜びにしても、何も無理しているわけじゃないというか、『つらくても元気出して頑張ろう』みたいな(笑)、とってつけたみたいなものじゃないし。むしろ、自然な感情から生まれたものであって……。そもそも、失恋ソングを聴いて必ずしも悲しい気持ちになるとは限らないというか、号泣することが一番の目的ではないからね。むしろ、悲しみや失恋について歌った曲を聴くことで、自分自身の中にある悲しみに気づいて、それを理解して肯定してあげることで、共感が生まれて癒されることだってあると思うんだ。そこが今回のアルバムのいいところだと思うよ。喜びをたたえつつも、そればかりではない……悲しみも同時に存在してるんだよ」


ジェイミー「今回、曲順を決めるのになかなか苦労したんだ。今はこの順以外には考えられないっていう気持ちだけど。そもそも、今回は曲数が多かったんで、20曲くらいある中から、本格的にレコーディングの段階に進める曲を選び出さなくちゃいけなくて、その作業からして相当辛かった。どの曲もきちんとした形にして、僕達3人だけの世界から外の世界に送り出してあげたかったしね。だから、3人でさんざん話し合ったし、まわりの人達からの意見も参考して、なんとか方向づけをしようと。今回のアルバムの形に至るまで、曲も順番も取っ替え引っ替えしながら、10パターンくらいの形を試してたんだよ」


―ちなみに、オリヴァーとロミーがふたりで歌うナンバーでは、互いに男性目線、女性目線を意識して歌っているんですか? というのも、聴いていると、その境界線が揺らいでいくような感覚にとらわれる瞬間があります。


オリヴァー「そうだね。対話形式で、ふたりの両方の視点から語られているんだけど、どちらが男性側で女性側なのかが限定されていないところがいいと思う。そのあたりは自分達でも意識している点のひとつで、例えば歌詞の中で彼女、彼という言い方はしていないし、時勢も特定していないから、誰でも自由に解釈できるんだ。今回、対話形式みたいな歌詞が増えてるのは、僕とロミーが実際に面と向かって、語り合いながら書いてる歌詞が多いからなんだ。以前はもっとコラージュ的な作り方をしていたけど、今回は語り合いながら、それをもとに作っている。“On Hold”なんかまさにそういう曲で、同じひとつのストーリーを両方の視点から描いてるんだ」


―“Lips”では、デイヴィッド・ラングの“Just (after Song of Songs)”がサンプリングされていますが、あの曲を選んだ理由ってあるんですか?


ジェイミー「もともとあの曲が好きで、空いてるスペースが合ったんで入れてみたんだけど、あんな曲が書けたらいいなって思いが自分の中にあったんだろうね。色々試しているときに、ある朝、あの曲をサンプリングしてみようって思いついてやってみたら、すごくいい感じになった。深く考えてたわけじゃなくて、本当に思いつきからなんだよ。それをスタジオに持って行って聴かせたら、ふたりともこれに歌詞を書いてみようって言ってくれて、すごく自然にああいう形になっていったんだ」


―その“Just (after Song of Songs)”ってそもそも、旧約聖書だかにある「Song of Songs (Song of Solomons)」という文章が引用された曲なんだそうですね。


ジェイミー「いや、全然知らなかったよ。へえー……『グランドフィナーレ』って映画を観たんだけど、その中でこの曲が使われてて、歌詞がすごくいいなと思って」 


―つまり、あの曲の中の「You」とは、永遠なる者、つまり神のことで、神への情熱を表現する曲だと。そういった背景を意識したうえでサンプリングされたのかなって?


オリヴァー「すごい話だな(笑)」


ジェイミー「いや、全然そんなの知らなかった。っていうか、そうなんだ、すごいね(笑)」


オリヴァー「うわ、なんかもう(笑)、ビックリっていうか」


―余計なこと訊いちゃいましたね(笑)。ところで、先日、“On Hold”のミュージック・ビデオを公開する際に、アメリカのファンに向けたメッセージを添えていましたね。


ジェイミー「今、色んな意味でアメリカが大変な状況にあるから、あのビデオ・メッセージは、それでも僕達はアメリカのこんなところが好きなんだよってことを伝えたかったんだ。僕たちはアメリカでかなりの時間を過ごしてるし、実際、今回のアルバムもアメリカでレコーディングしてるしね。それを伝えたかったんだよ。アメリカの良い面というか、まだまだいいところがたくさんあるよって。だからって、今まさに現実で起きている問題を無視することはできないし……だから、自分達がああいうビデオ・メッセージを作った背景について、何かしら伝えなくちゃいけないって気持ちだったんだ」


―それはやっぱり、「Bregret」を経験したイギリス国民として、アメリカの状況も他人事ではない、という思いがあったからなのでしょうか?


オリヴァー「そうだね……うん、そうなんだと思うよ。やっぱり、今世の中が厳しい状況にあるってことはどうしたって否定できないからね(笑)。ただ自分達と音楽との関係性でいうと、とくに音楽を作るっていうことになると、政治と音楽は完全に切り離して考えているし……むしろ自分達が音楽に求めてるものであったり、あるいは自分達の音楽を通して提供したいのは、現実との繋がりよりも逃避の部分だったりする。もちろん、政治をうまく音楽に取り入れて社会的なメッセージを発してる人達はいるし、心から素晴らしいと思うけど、僕達と音楽との関係性はそれとはまた少し違うというか……自分が今現在抱えている諸々の状況から少しでも解放されるための、まあ、言ってみたら、避難場所だよね(笑)。自分が心から安らげる安心できる場所。自分のまわりで起きている現実から一切切り離された完全に守られた状況に身を委ねて、すっかり気持ちが落ち着いた頃に、それまで気づかなかったけど、自分は今も誰かとこうして繋がっているんだってことに気づいてもらえたなら……それが自分達にとって最高の音楽との関わり方かもしれない」



photo Alasdair McLellan
interview & text Junnosuke Amai
edit & direction Ryoko Kuwahara





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The xx
『I See You』
(1月13日発売)
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商品詳細はこちら:
http://www.beatink.com/Labels/Beggars-Group/Young-Turks/The-xx/TYCD161J


The xx
http://thexx.info/

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http://www.neol.jp/culture/

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