Dinosaur Jr. 『Give a Glimpse of What Yer Not』Interview
NeoL / 2017年4月11日 20時2分
Dinosaur Jr. 『Give a Glimpse of What Yer Not』Interview
昨年8月に約4年ぶりのニューアルバム『Give a Glimpse of What Yer Not』をリリースしたダイナソーJr.。本作は絶対的にダイナソーJr.にしか鳴らせない、不可侵なオルタナティブロックの美学をあらためて強く感じさせてくれる。オリジナルメンバーで再結成した2005年以降、なぜダイナソーJr.はこんなにもフレッシュであり続けられるのか? インタビュー時間は約20分。中心メンバーであるJはやはり寡黙だったが、ルーとマーフがJの言葉を補足するようにして語ってくれたのも、バンドの良好な関係性が窺えてとても印象的だった。
——日本の20代の若いアーティストと話していると、ダイナソーJr.をフェイバリットに挙げる人が多いんですよね。印象的なのは彼らがやっている音楽の振れ幅が広いことで。なかにはラッパーもいたりするんです。
ルー・バーロウ「ホントに!?」
——ホントに。彼らはダイナソーJr.の音楽から自由なインスピレーションを得ているんだと思います。
ルー「それはうれしいけど、不思議な感覚だね」
——思い当たる要因はない?
J・マスキス「ノー!」
一同「(笑)」
ルー「アメリカだと全然違って。アメリカの若いラッパーなんかはきっと『ダイナソーJr.? あんな年寄りのバンドなんて興味ねえ』って思ってるはずだよ(笑)」
——でも、ニューアルバム『Give a Glimpse of What Yer Not』もすごくフレッシュで、あらためてダイナソーJr.の壊れようのないオルタナティブな美学が貫ぬかれていると感じました。
J「ダイナソーJr.でもソロでも自分が作ったアルバムは全部大好きだけどね。ただ、今作はリスナーからのリアクションがすごくいいのは感じてる」
ルー「この3ピースバンドにしか出せないダイナミズムでありケミストリーがあるんだよね。それこそが、ダイナソーJr.にしか出せない独自のエネルギーを生んでいて。そのエネルギーを俺たち自身が信頼しているんだ。たとえば俺がガキのころ大好きだったラモーンズにはラモーンズ以外のサウンドを鳴らしてほしくなかった」
——最初から完璧なスタイルを構築してるから。
ルー「そう。だから、リスナーとしてはラモーンズには(『END OF THE CENTURY』で)フィル・スペクターをプロデューサーに迎えてなんてほしくなかったんだよ。純粋なラモーンズのサウンドだけしか聴きたくなかったから。それは今のダイナソーJr.にも共通している思いなんだ。ファンが信頼してくれているダイナソーJr.のサウンドを裏切りたくないと思ってる。ダイナソーJr.以外のプロジェクトではどんな曲を作ってもいいし、どんなプロデューサーとやってもいいんだけど、ダイナソーJr.には“これ”しかないんだよ。だからこそ、俺たちにとってはフォーミュラにこだわるのは悪いことではなく、バンドの力強さだと思ってる」
——ダイナソーJr.のサウンドやJの佇まいからは、時代の変化に流されないフィロソフィーを感じます。
J「結局、好きな音楽の好みが変わってないだけなんだ。自分が一番好きな音楽を作り続けたいと思って実践している結果として今がある。それだけだよ」
——Jにとっては、ダイナソーJr.の作品とソロ作品をクリエイトする際のモードはどのような変転があるのでしょうか?
J「う〜ん」
ルー「マネージャーに(ダイナソーJr.のアルバムを作ってほしいと)言われたとき?」
一同「(笑)」
マーフ「Jのなかで一つのサイクルができあがってるんだよね。そのサイクルがきたときにそれぞれのプロジェクトにアプローチしていくという感じなんじゃないかな」
J「あとは、ダイナソーJr.としてツアーをしたいと思ったときにアルバムを作るという感じかな」
ルー「ダイナソーJr.で1年半とか2年くらいかけて長くツアーをやると、その隙間を埋めるために静かな曲を作りたくなって、そのモードがソロ作品に結実するというのもあるんじゃないかな」
——ルーもソロ作品のクリエイティブがダイナソーJr.の楽曲のコンポーズにフィードバックされているところもありますよね?
ルー「2005年の再結成以降はそうだね。毎作、2、3曲のコンポーズを担当していて。最初からそうあるべきだったのかもしれないけどね(笑)。ようやくそれができるようになったということだね。再結成したときに自分の曲をダイナソーJr.でやるのはちょっと怖かったんだ。でも、結果的に上手くいったし、Jもマーフも自分の曲を受け入れてくれて、期待してくれるようになったから。今はそれがスタンダードなあり方になってるのがうれしいよ」
——そもそもJはダイナソーJr.の再結成以降、オリジナルメンバーで今もなお活動を続けることは想像できてました?
J「ノー!」
一同「(笑)」
——でも、今もこうしてダイナソーJr.の活動は活き活きと続いている。
J「自分たちのなかでダイナソーJr.で鳴らすべき音楽の価値があることがわかったのかな。だから続けられてるんだと思うよ。自分たちのなかに生まれるいいエネルギーがあるから。それが一番大きいね」
——活動休止中はどこかで大事なピースが抜け落ちていたような感覚もあったのでしょうか?
J「う〜ん、どうかなあ?」
マーフ「その質問を俺が答えさせてもらうなら、今君が言ってくれたことはすべて正しいと思うよ。俺自身にとっては大きな喪失感があった。それはなぜかというと、Jやルーにはソロのプロジェクトがあったけど、俺はダイナソーJr.がずっとメインだったから。活動休止中は喪失感があったね」
J「俺は人生ってつねに喪失感があると思う。すべては何かを得て、何かを失うんだ。それは活動休止がどうとかじゃなくて、人生がそういうものだと思ってる」
photo Akihito Igarashi(TRON)
interview & text Shoichi Miyake
edit Ryoko Kuwahara
Dinosaur Jr.
『Give a Glimpse of What Yer Not』
(Jagjaguwar / Hostess)
発売中
Dinosaur Jr.
米マサチューセッツ州出身、J・マスキス(G,Vo)、ルー・バーロウ(B)、マーフ(Dr)の3人組バンド。85年にデビュー。89年『バグ』発表後ルーが脱退。91年の『グリーン・マインド』が世界的に大ヒットしニルヴァーナ等と共にシーンを牽引。その後マーフが脱退。バンド解散の97年までに通算 7枚のアルバムを発表。07年に再結成アルバム『ビヨンド』を発表、09年には9作目『ファーム』を発表し話題となる。12年には通算10作目となるニュー・アルバムをリリースし、Hostess Club Weekenderにヘッドライナーとして出演。来日時には同じくHCWに出演したサーストン・ムーアと共に単独公演も開催し、グランジ / オルタナ界を代表する2組の共演はここ日本のファンを熱狂の渦に巻き込んだ。2016年のHostess Club Weekenderには4年ぶりの新作『ギヴ・ア・グリンプス・オブ・ホワット・ヤー・ノット』を引っ提げてヘッドライナーとして来日、2017年には東名阪のジャパンツアーを敢行したことは記憶に新しい。
http://hostess.co.jp/dinosaurjr/
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http://www.neol.jp/culture/
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