藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#41 ウォーキング
NeoL / 2017年4月26日 12時0分
藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#41 ウォーキング
歩いています、と答えることが最近増えた。何か運動をしていますか? という問いに対して。歩くことは果たして運動なのだろうか、という表情を質問者は浮かべながら次の言葉をうまく出せずにいることが多い。
ウォーキングと言えばなんとなくジョギングの次にくる運動に聞こえるが、散歩と言えば、お父さんのイメージが浮かんで運動からは遠のく。実際のウォーキングは運動を念頭においた早歩きであり、散歩は時々立ち止まって花を見たり、通りすがりの知人と話し込んだり、写真撮影も含むから、やはり違うものだ。
僕の「歩いてます」は基本的にウォーキングなのだが、時々スマホで写真も撮ったりするから、「ウォーキン歩」なのだろう。それでもちゃんと汗をかくので、ウォーキングの恩恵はしっかりと受け取っていると思う。
フルマラソンを二回走ったこともあるので、その準備であるジョギングやランニングも一時は趣味のように親しんでいた。風を切って風景を抜けていく爽快感、身ひとつで何処へでも走っていけるという自信は、僕をポジティブにしてくれたし、今でも時々は走っている。
だが身体に負荷の大きいハードな運動を続けるアスリートたちは寿命が短くなるということを聞き、そこを心配する程の運動をしていないにも関わらず、中年以降は弱火な運動がいいのではと思うに至った。
ネズミでも犬でも象でも、そして人間でも生涯の心拍数は同じくらいだという説を聞いたことがある。短命な種は鼓動が早く、長命では遅いそうだ。ならば、ジョギングなどのやり過ぎは良くないのでは?という仮定のもと、もうすこし遅いウォーキングを試し始めたら、これが心地良くて続いているという次第。
いろいろ調べてみると、ウォーキングは美容にも効果があるらしい。それを含む身体への効果としてはこういうことがあげられる。
・心肺機能の向上
・脳の活性化
・自律神経の調整
・脂肪燃焼
・血液をサラサラに
・免疫力向上
・こりの解消
・基礎代謝アップ
・ストレス解消
・発汗による皮脂分泌調整
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補足するなら、心肺機能は深い呼吸を意識することでより向上する。現代人は日常的に浅い呼吸で暮らしているので、老化と共に肺周辺の筋肉が落ち、いつの間にか深呼吸ができなくなっている。いざ深呼吸しようとしてもうまく出来ない人は要注意である。同じ時間を過ごしていても酸素の摂取量が減ってしまっては、各細胞が酸素不足で弱り、それは美容にも悪影響を及ぼすのは言うまでもない。歩くときにも深呼吸を意識し、出来れば腹式呼吸をすることで腹部の筋肉も維持されるだけでなく、内臓も刺激され、その機能を向上させられる。深い呼吸をするというのは、ジョギング中などよりもコントロールしやすいので、ウォーキングの大前提としたいところだ。
脳の活性化は、風景や気温、風、香り、音、などの予期しない刺激からもたらされる。また足裏からの刺激も同様に脳を活性化させる。歩いて移動している時に、良いアイデアがひらめくことがあるが、それは脳の活性化と関係がある。
自律神経の調整は、深い呼吸によってもたらされる。できたら吐く息を長めにとると副交感神経が優位になり、落ち着いてゆったりとした状態になれる。そのゆとりが自律神経を正常な状態へと戻してくれるのだ。生きていく上で意識しなくても整うようにオートマチックになっている機能が乱れてしまうと、身体全体のバランスが乱れてしまうので、とても大切なことだ。
20分以上歩き続け、酸素を沢山取り入れることで、脂肪が燃えやすくなり、肌の引き締め効果が期待できる。激しい運動だと20分以上続けることが難しいが、ウォーキングでは、その点でアドバンテージがある。
またコレステロールや中性脂肪が減少することによって血流が良くなり、肩こりや目の下のくま、くすみ、なども解消される。リンパ球やホルモンの分泌が多くなり、免疫力や肌の再生力も高まる。
こういった医学的な裏付けもウォーキングにはあるのだが、その効果はおしなべてジョギングと似ているというか、ほとんど同じと言っていい。なので、効果だけを考えたらどちらでもいいように思える。それぞれの身体に合わせて無理なく行えばいい。
(3ページ目につづく)
ジョギングがすでに定まっている人は過度にやることで老化を早めないようにすることに留意して続ければよく、ウォーキングは、どちらかといえば、これから何かを始めたい人にとっては気軽さが売りになるだろう。またジョギングが最近億劫になってきたという人にもいい。筋肉や心肺機能の維持はしたいけれど、習慣化するにはちょっとハードルが高いかなという人にはぴったりだ。最初は散歩から始めて、習慣化したら手をしっかりと振って早足にすれば、それがウォーキングとなる。
裏付けのない直感的なことを言うなら、人間は歩くことで健康を維持できると私は思っている。
進化の末に得た本来の動態を保つことで、備わっている本来の機能を保持できるというのが、この発想の根底にある。二足歩行ができるのだから、二足歩行を生活の中で不足させないでおく。それが各所のバランスを取ることの近道なのではないか、と思う。各所というのは、精神面でのバランスも含まれる。身体と精神は繋がっているというのも私の基本的な捉え方だ。
歩けば、足裏が刺激されるだろう。ジョギングなどに比べて大地との接地時間が長いために、その効用もより深まる。足裏には多くのツボがあることは周知で、その刺激は脳の活性化にも繋がり、それがもたらす仕事への好影響は簡単に想像がつく。血行が良くなることで、身体各所の滞りが解消され、肩こりや腰痛にもいいはずだ。ほどよい有酸素運動で呼吸も深まり、酸素が多く吸収され細胞も適度に活性化される。それによって老廃物の排出もスムーズに進むだろうし、つまりは美容に効果的だ。
美容とはつまり、代謝を良くして生まれ変わる能力を高めることなので、じっとして今の自分をキープするのではなく、積極的に動くことで、常に自分をリニューアルして古くなることを防ぐことだ。これは何も身体だけに限ったことではなくて、常に好奇心を持って心に刺激を与えることで老け込むことを避けるのが大切だ、ということに繋がる。
つまり多くの運動法の前提として十分な歩行を心がけるということが大切なのだが、案外都会に暮らす人は普段から歩いている。地方に暮らす人は、軽自動車などでの移動が多く、歩かない傾向にある。それに比べれば都会の人は圧倒的に歩いていると思う。歩くだけでなく地下鉄の階段まで使うのだから、実は田舎暮らしの人よりの足腰は強いかもしれない。
なので改めていつもよりも早く起床してウォーキングの時間を取るというよりも、普段の歩行をウォーキングに当てがえばいいのではないだろうか?
(4ページ目につづく)
とはいってもただ黙々と歩くのではなくて、姿勢を整えることを忘れてはならない。正しく美しい姿勢というのは対外的なポーズではなくて、正しい位置を作ることで、身体に本来の健康的な状態へとリセットさせる道筋を作ることだ。いくら沢山歩いていても、それが悪い姿勢であったら、身体がそれをデフォルトとして記憶させてしまう。猫背で歩く人はそれと気づかずに猫背であるということだ。それが固定化される前に、常にチェックする必要がある。
正しい姿勢などは、出かける前に家の鏡でチェックするのもいいし、街中でビルの窓に映った自分を見て正すこともできる。常に正しい美しい視線にこだわることが大切だ。
腕はしっかりと左右対称に振りたいところだが、片手にバッグでは難しいだろう。だが、心の中で手をしっかりと振っているイメージで歩けば、案外それに近いことになる。通勤や帰宅中に、心地よく歩ける5分、10分があれば、脂肪を燃焼するためには最低20分は必要とされるとしても、ウォーキングの基礎作りには十分だ。また脂肪燃焼という目的をはずせば、爽快に歩くことで自分が若々しく前向きになれることだけでも素晴らしく感じられるだろう。自分の体とのフィット感というのは、忘れられがちで、言葉は悪いが、生首状態で生活していることが多い。いつも首から上だけで生きていて、下との一体感を失なっている。下への意識が薄れると、体が生きていることを忘れてしまうのだ。放っておくと畑が荒れてしまうのと一緒で、気をかけてあげた分だけ潤う。余談になるが、これは人間関係にも言えるだろう。
心身との一体感というのは、基本なだけに忘れないようなきっかけとしての歩行という点からも価値がある。
普段の歩行のクオリティを上げ、休日などに出かけるときはリュックなどで両手の振って歩き、その先にウォーキングを日課にしてみるというが、スムースな取り入れ方だろう。
姿勢よく歩くことで、見えている世界の姿勢がピンと整う楽しさをぜひ味わっていただきたい。
※『藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」』は、新月の日に更新されます。
「#42」は2017年5月26日(金)アップ予定。
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