Formation『Look at The Powerful People』Interview
NeoL / 2017年6月9日 12時4分
Formation『Look at The Powerful People』Interview
[caption id="attachment_57981" align="alignnone" width="571"] Photo : Tammy Volpe | Edit : Ryoko Kuwahara[/caption]
長らく低迷しているイギリスのバンドシーンの新たな光明となるか。期待を込めて、そう語られているのは、ウィルとマットからなる双子のリットソン兄弟率いるギターレスの5人組バンド、フォーメーション。LCDサウンドシステムやフレンドリー・ファイアズ、カサビアンらが引き合いに出される彼らのサウンドは、豊かな音楽のバックグラウンドをロックスピリットを宿したメロディと高揚感あふれるダンスグルーヴに集約。4月にリリースしたばかりのデビューアルバム『ルック・アット・ザ・パワフル・ピープル』では、ハウスミュージックの新世代トラックメイカー、レオン・ヴァインホールを共同プロデューサーに迎え、バンドシーンのみならず、ダンスフロアでの支持も高まりつつある。ロンドンが生んだ新たな才能集団は果たして何を語ってくれるのだろうか?
――まずはフォーメーション結成の経緯について教えてください。
ウィル「そもそも、フォーメーションはバンドをやろうと思って始めたわけではなく、僕とマットが何も考えず曲作りをスタートさせたことが最初のきっかけなんだ。そして、作った曲をライヴで演奏する際に、他のメンバーに加わってもらったことで現在の5人編成になったというわけ」
マット「さらにバンドに発展したことで、音楽性も変化して、新たに加わった3人それぞれのバックグラウンドが演奏を通じて注入されたし、楽曲もよりダイナミックでエネルギッシュなものになっていったんだ」
――この5人はプログレッシヴロックバンドのイエスやピンク・フロイド、ジミ・ヘンドリックス、ウータン・クランから影響を受けているということですが、作品にはラップも入ってなければ、ヒップホップ的な要素は感じませんし、そもそも、このバンドにはギタリストがいませんよね?
ウィル「どうしてギタリストが不在かというと、マットとこのバンドを始めた時、彼はベーシスト、僕はドラマーだったから、自然の成り行きでリズムセクション中心の曲を書いたというだけ。そして、ギタリスト不在のまま、今に至るんだ」
ジョニー「僕はベースだけじゃなく、ギターも弾けるんだけど、このバンドには今のところギターを必要としていないし、むしろ、そういう制限を設けることで発揮されるクリエイティヴィティを楽しんでいるんだよ」
マット「そして、今回のアルバムに関しては、メンバーが集まって作り上げた作品ではなく、大枠となるものをまずは僕とウィルで作って、それをスタジオに持っていって、みんなの演奏を加えて完成させたんだ。だから、作品自体、バンド感は希薄かもしれないけど、ライヴ経験を重ねていくことで、今後の作品制作のスタイルが変わる可能性は大いにありそうだね」
――バンドの成り立ちを踏まえて、フォーメーションはロックバンドなんでしょうか?
マット「好きに受け取ってくれて構わないけど、ロックバンドでは……ないかな」
ウィル「僕個人の話をすると、18歳の時にフレンチ・エレクトロに触発されて、DJを始めたことが大きくて。今の作品に与えた影響という意味では、セオ・パリッシュやレオン・ヴァインホール、テンダロニアスといったハウスプロデューサーには大いに触発されたね」
――今回のアルバムは、去年、DJで初来日を果たしたレオン・ヴァインホールがプロデュースを手掛けています。彼はアンダーグラウンドなハウスミュージックのトラックメイカーですが、彼と作品を作ることになったいきさつは?
マット「人の紹介でレオンと知り合って以来、一緒に遊びに出掛ける友達になったんだ。いいやつだし、作る音楽もクールで、音楽の好みも近かった。そして、彼はダンスミュージックのプロデューサーとして知られているけど、かつて、バンドで活動していた経験もあったから、アルバムのプロデュースをお願いするのは自然な流れだったんだよ」
――マシンで作られるハウスミュージックの影響はこの作品にどのように反映されていると思いますか?
ウィル「実はそんなに難しいことじゃないんだ。僕はフレンチハウスクリエイター、ペペ・ブラドックの「Deep Burnt」が大好きなんだけど、彼のトラックには生楽器のサンプルが使われていて、フォーメーションではそのサンプルフレーズをレコードから取ってくるんじゃなく、そのフレーズをプレイヤーが弾けばいいという考え方だね。実際に弾いたほうが自由度は高いと思うんだ」
マット「そうそう。例えば、ラップトップで組んだリズムトラックに演奏したフレーズを重ねていくというような、至ってシンプルなアプローチだよ。生ドラムにしても、かつて、無機質なドラムからダンスグルーヴを生み出したカンのようなクラウトロックバンドの簡素なアプローチもあるしね」
カイ「ただ、マシンビートのような無機質なドラムを叩いているつもりはなくて、僕としては、むしろ、生楽器らしいエネルギーを注ぎ込んでいるつもりなんだけどね。
マット:それに加えて、ライヴでは面白みがないラップトップでのパフォーマンスよりプレイヤーが実際に演奏するほうが見ていて楽しいし、場が盛り上がるよね」
――電子音を扱うシンセサイザー奏者のサシュはどんなご意見をお持ちですか?
サシュ「僕は“Pleasure”と“Ring”の2曲でモジュラー・シンセサイザーを使っているんだけど、モジュラー・シンセサイザーは他にはない自分だけの音を出せるところが魅力なんだよね。今はみんなコンピューターやデジタルシンセサイザーにあらかじめ入ってる既成の音(プリセットサウンド)を安易に使いすぎだと思うんだ。それによって音楽が似通ってしまう。だから、僕は新しいデジタルシンセサイザーを買ったら、まず最初にあらかじめ入ってる既成の音を消去して、自分が気に入った音をインストールするところから始めるんだよ(笑)。だから、フォーメーションがロックかどうかっていう質問だけど、僕のそのスタンスは誰よりもロックだと思っているけどね(笑)」
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Photo : Tammy Volpe | Edit : Ryoko Kuwahara[/caption]
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Photo : Tammy Volpe | Edit : Ryoko Kuwahara[/caption]
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Photo : Tammy Volpe | Edit : Ryoko Kuwahara[/caption]
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Photo : Tammy Volpe | Edit : Ryoko Kuwahara[/caption]
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Photo : Tammy Volpe | Edit : Ryoko Kuwahara[/caption]
photo Tammy Volpe
interview & text Yu Onoda
edit Ryoko Kuwahara
Formation
『Look at The Powerful People』
(Hostess)
発売中
※日本盤のみ独自パッケージ(スリップケース仕様)、ボーナストラック4曲、歌詞対訳、ライナーノーツ(小林祥晴)付
<トラックリスト>
1. Drugs
2. Pleasure
3. Powerful People
4. Back Then
5. On The Board
6. Gods
7. Buy and Sell
8. A Friend
9. Blood Red Hand
10. Ring
11. Love*
12. All The Rest Is Noise*
13. Under The Tracks*
14. Control*
*日本盤ボーナストラック
Formation
ロンドンの出身の双子の兄弟ウィル・リットソンとマット・リットソンを中心に結成された5人組バンド。ウィルとマットは幼い頃から両親の影響でノーザンソウル、ディスコ、ファンクなどを聞いて育ったという。メンバー全員ピンク・フロイド、フリー、ジミ・ヘンドリクスからの影響を公言している。2015年に『Under The Tracks EP』をリリース。昨年には「Pleasure EP」を発表。2017年4月にアルバム『ルック・アット・ザ・パワフル・ピープル』で世界デビューを飾った。5月に行われた来日公演でもアストロホールを熱狂の渦に巻き込んだ。
関連記事のまとめはこちら
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