NO MORE MUSIC Issue : NO MORE MUSIC feat. BIG LOVE RECORDS
NeoL / 2017年8月20日 18時0分
NO MORE MUSIC Issue : NO MORE MUSIC feat. BIG LOVE RECORDS
OKAMOTO’Sのニューアルバム『NO MORE MUSIC』発売を祝して、NeoLでは収録曲10タイトルにインスパイアされた10記事とイメージヴィジュアルを1ヶ月にわたって随時掲載していく。第6回目は“NO MORE MUSIC”をテーマに、世界中にコアなファンを持つ原宿のレコードストアBIG LOVE RECORDSの代表・仲 真史が登場。その独自の運営スキームから、音楽ビジネスの現状と今後をうらなう。
ーBIG LOVE RECORDSではほぼCDの取り扱いがなく、ヴァイナルがメインですよね。ヴァイナルの売れ行きが伸びていると言われていますが、実際はどうですか。
仲「いまはレコード・リヴァイバルの波がきていると言われていますよね。2008年に海外でRecord Store Dayが始まり、2011年に日本でもスタ—トしたのですが、当事者の僕らとしては、その恩恵を感じることはなくて。業界の人に聞いてもそういう意見が大半です。最近はカセットもリヴァイバルしていると言われていますが、どちらも日本ではビジネスにはならないというか、リッチなビジネスにはならない」
——それは意外でした。欧米も同じ状況ですか。
仲「いえ、日本とは比較にならないくらい売れていますね。欧米の友人のレコード屋は増築して2店舗目3店舗目と拡大していて、レコードを置いておくだけで売れていくという、日本では考えられないぐらいのムーヴメントになっています。うちに来るお客さんも海外の方が3、4割くらいなんですが、自国のレコードを買って行くんですよ。なぜかというと、自分の国ではすぐに売り切れて買えないから。でも通販で買うより店で買ったほうがいいじゃんって、ネットでは得られないリアルの経験値がどうとかという大げさなことではなく、すごくカジュアルにそう思っている。欧米の人の音楽の楽しみ方は、人生の楽しみ方や宗教観に繋がるものもあるかなとちょっと思ったりもします。でもそのリヴァイバルを後押しして広げている大本は、結局のところインターネットなんですよね」
——というと?
仲「いまは世界中の人がインターネットで情報を得るわけですが、無尽蔵にある情報の中でも人気が高いメディアやライターというのは質が伴っている。質が高いということは、つまりは音楽オタクということ。そういう人たちはフィジカルを出さないと紹介しないんですよ。実はピッチフォークも2000年代からCDやネット配信だけでは紹介せず、限定50本のカセットを出したら紹介するというような傾向がありました。もちろんR&Bではデータだけでも紹介したりとジャンルでの違いはありますが、フィジカルをニュースにする割合が高い。海外では、そういうプライドやこだわりを持ったプロフェッショナルたちがちゃんと影響力を持っていて、影響力のあるメディアを動かしている。彼らがインターネットを介して紹介することで、例えカセットを50本しかリリースしていなくても世界中で知られる。
海外ではストリーミングになるのが早かったし、違法ダウンロードもガンガンやっていたじゃないですか。一度音楽が無料になったから、リスナー同士で差をつけるとなると、もはやフィジカルを持っているか持っていないかだけなんです。それは当たり前で、僕らの時代でもラジオからエアチェックできたけど、本当のファンだったらレコードを買っていた。無料になるのが早かったぶん、欧米ではリスナーの格が明確になって一番のリスナーである音楽オタクの影響で色々と物事が動く。逆に日本は無料化が遅かったし、プロフェッショナルよりマスを大事にする市場なので、僕らのようなビジネスはまだおすすめできないし、大変だと思います。モノを持たないことや、安いほうが良しとされているので、無駄なレコードを買うことに拒否反応があるんですよ。単純に『かっこいい!』という雑貨と同じ感覚で買う子もいますが、全体としては多くない」
——なるほど。日本ではリッチなビジネスにならないとはいえ、世界的にはフィジカルの尊重が大きくなってきている。フィジカルがなくなるのではと言われた一時期からしたら大きな変化だと思います。
仲「そうですね。2010年あたりは本当にレコードが売れなくて、ビジネスを続けられないかもしれないと追いつめられたこともあったんですが、『潰れるくらいなら、好きなものを売ろう!』と思ったんです。それで当時まだ全然注目されていなかったAriel PinkやSalem、Nite Jewelなどを自分のレーベルで扱い出して、The xxもはやい段階でリリースして。そしたら他にどこも扱っていないものばかりだったから、逆に目立ってきたんです。更にそうしたレーベルのアーティストたちも大きくなっていって、いまに至るというか。海外のお客さんが多く来るようになったのはこの1、2年くらいですが、特に海外向けにプロモーションしたとか、なにかを大きく変えたということではなく、やってきたことは変わってない。日本に来やすくなったからというわけでもない。単純に、勝手にインターネットで知ってくれたんです。音楽に限らずですが、面白いことをやっていれば世界中で気づいてくれるので、好きなことをやれる時代にはなったんじゃないでしょうか」
ー情報過多だからこそ、オリジナリティを尊重するような流れになってきた。BIG LOVE RECORDSもマスに媚びるのではなく、個人のカラーを出したことが運営を好転させたというのはとても興味深いです。
仲「先日カニエ・ウェストのマーチャンダイズをすべて手がけて話題になったCali Thornhill Dewittとは10年以上前からの付き合いで、彼に頼んで今のBIG LOVEのロゴを作ってもらったんですが、当時は『地方のヤンキーみたいじゃない?』って言われていたんです(笑)。でもいまでは世界中でこのロゴTシャツを着てくれている人がいて、それは誰も予想もしていなかったことです」
——私もこの間ロンドンで学生の子たちが着ているのを見かけました。本当にすごいことだと思います。
仲「自分がやっていることはいつも3年くらい遅いなと思うけど、日本はともかく、世界が気付いてくれるスピードは早くなった。90年代は有名にならないと世界に伝わらなかったけど、今は勝手に伝わるし、趣味が合う人とすぐ会える。そうなると地位や名誉を求める必要もなくなるんですよね。そこは大きく変わった部分だと思います。90年代は店で1000枚売ったところで海外のミュージシャンに尊敬もなにもされなかったけど、今は向こうからやって来て、向こうから売ってくれと言ってくる。良い時代ですよね(笑)」
ー今後に関してはどうでしょう。シーン全体の俯瞰と、BIG LOVE RECORDSの方向性に関してと、双方のポイントからお聞きしたいです。
仲「個人的には日本も早く音楽が全部無料になるべきだと思うし、その方が音楽業界にも良いと思います。Spotifyなど、ミュージシャンにお金が回らないシステムに海外のアーティストも問題提議しているけれど、聴くには無料で良いんじゃないかな。ラジオだって昔から聴くのは無料だった。それが時代が変わって、好きな曲をラジオにリクエストしなくてももっと気軽に聴けるようになっただけ。そのかわりライヴではよりたくさん人が集まるようになったし、世界中にも知られるようになった。それは時代の流れだから、固定概念にとらわれるのは全ての物事においてよくないと思います。レコードを売ってる人間が言うなと批判されそうですが(笑)、あくまで個人の意見としてはそうですね。
BIG LOVE RECORDSとしては、やはりずっとコアなものでありたい。コアな音楽オタクを一番大事にするレコードストアでありたいですね。レーベル運営する立場としてもそう思います。全員にわかってもらう必要はない。うちで取り扱うミュージシャンにも、『おまえらにこれがわかるか!』という感じがあるのはむしろ良いことだと思う。僕らもお客は選んでいるし、そのぶん、良いお客さんが買ってくれるだけだから、無理に敷居を下げなくてもいいと思うんです。僕も自信がなかったりする場面もあるけど、やるからには誇りをもって、強がっていきたいです」
BIG LOVE RECORDS
http://bigloverecords.jp
3F-A, 2-31-3 Jingumae, Shibuya-ku, Tokyo JAPAN
Mon: 3PM~ 8PM Tue-Sun: 1PM ~ 10PM
Tel 03-5775-1315
E-mail order@bigloverecords.jp
仲 真史 (BIG LOVE RECORDS)
東京原宿の外れのマンションの3階にあるインディペンデント・レコード・ショップ「BIG LOVE」代表。独自にセレクトした、主にUS,UK,EUのインディペンデント・ミュージックのレコードとカセットの新譜を扱う。また、レーベル「BIG LOVE」を運営しており、Ariel Pink's Haunted Graffiti, Salem, Nite Jewel, Pearl Harbor (Puro Instinct), The xx, Stellar OM Source, Big Pink, Cold Cave, SFV Acid, Iceage, Destruction Unit, Lust For Youthなどをリリース。
http://www.bigloverecords.jp/big-love/
OKAMOTO’S
『NO MORE MUSIC』
8月2日発売
(Ariora)
https://www.amazon.co.jp/NO-MORE-MUSIC-初回生産限定盤-DVD付/dp/B072VKB8QQ/ref=pd_lpo_sbs_15_img_1?_encoding=UTF8&psc=1&refRID=8MR686V41KK8S9ZDA0PC
https://itunes.apple.com/jp/album/no-more-music/id1253780325
photography Takuya Nagata
styling Masako Ogura
hair & make-up Katsuyoshi Kojima(TRON)
model Leo(Be Natural)
interview & edit Ryoko Kuwahara
T-shirt ¥16,000/JOHN LAWRENCE SULLIVAN
pants ¥29,000/TOGA VIRILIS
Headphones ¥61,667/MASTER & DYNAMIC
JOHN LAWRENCE SULLIVAN
http://john-lawrence-sullivan.com
TOGA Harajuku Store
http://www.toga.jp
MASTER & DYNAMIC
http://www.aiuto-jp.co.jp/masterdynamic
*price excluding tax
関連記事のまとめはこちら
http://www.neol.jp/culture/
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