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Interview with !!!(Chk Chk Chk)about『Shake The Shudder』

NeoL / 2017年10月7日 9時24分

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Interview with !!!(Chk Chk Chk)about『Shake The Shudder』



チック・チック・チック史上、もっともダンス・オリエンテッドにして、ワイド・レンジなサウンドを誇るニュー・アルバム『シェイク・ザ・シャダー』。楽曲によって異なるプロデューサーやゲスト・ヴォーカリストを迎え入れる現在のチック・チック・チックは、単なる「バンド」という枠を超えてフリー・フォームにスタイルを変える「コレクティヴ」といった感さえある。そもそもボーダーレスで生粋のミュージック・フリークの集まりだったチック・チック・チックだが、『シェイク・ザ・シャダー』はまさにその極み。真夜中にライヴを控えたニック・オファーは、相変らずテンションが高かった。



——今回のニュー・アルバム『シェイク・ザ・シャダー』ですが、手応えはどうですか。


ニック「うん、めちゃくちゃいいよ。今回のアルバムって、今まで作った中でもとくにライヴでやってて楽しい感じの曲が多いっていうかさ。ライヴでの爆発力がハンパないし、今夜のライヴもきっととんでもないことになるよ。今回はツアーもガンガンにやってるし、バンドとしてはかなり強力なステージに仕上がってるよ」


——初期のチックでは、ライヴのエネルギーをいかにして音源に落とし込むか、という点を念頭に置いていたところがありましたが、ふたつ前のアルバム『スリラー』(2013年)あたりから、スタジオでできることとライヴでできることとを分けて考える方向へとシフト・チェンジするようになりましたよね?


ニック「今はスタジオとかライヴとか意識しないで、完全に自由にやってるね。たとえば今回の"The One 2"とか、スタジオで完全にコンピューターだけで作った曲で、アルバムがリリースされるまでライヴで一度も演奏してなかったんだけど、それはそれでオッケーだし。今回、本格的にレコーディングする前に、1週間ハコを押さえて、毎晩新曲をプレイするっていう作業をしてるんだけど、そのあとスタジオに戻ってライヴ感をそのまま音にすることもあれば、スタジオ仕様に作り変えたこともあったし、そのあたりは完全に自分達の気分次第なんだ。こうじゃなきゃいけないってルールはないし、曲が何を求めてるかなんだよね。曲に導かれるようにして作っているから曲がライヴっぽいサウンドを求めてたらそっちに流れていくし、よりコンピューター系のサウンドを求めてたらそっちに流れていくし」


——前作の『アズ・イフ』(2015年)から顕著ですが、今作では曲によってゲスト・ヴォーカルを呼んだり、プロデューサーやエンジニアを変えたりと、レコーディングのアプローチも自由で柔軟ですよね。


ニック「そうだね。どのアルバムも毎回、趣向や形を変えて進化していくもので、もっと前からその傾向があったんじゃないかな。最初の頃に出した『ミス・テイクス』(2007年)の“Heart of Hearts”のときに、初めてゲスト・ヴォーカルを呼んだんだけど、そのときだって『え、マジで、もう1人ヴォーカル入れてオッケーなの!?』って感じだったけど、『いや、それも大胆で面白いアイデアかも』と思って挑戦したんだ。そこからアルバムを出すごとに色んな要素を付け足すのが習慣になって、今はもう普通になちゃってるもんね。ゲスト・ヴォーカルを呼ぶにしたって、新しいギターの技を試すみたいなもんで、『この技を使って何ができるんだろう?』っていう、そういうノリだよね。サウンドによりバラエティを持たせるために、クリエイティヴなプロセスの一貫として普通にやってるよ」















——そうして複数のプロデューサーやプレイヤーがクロスオーヴァーしながらコラボレートしていくやり方は、いまのポップ・ミュージックやヒップホップではメジャーな手法ですよね。


ニック「ダンス・ミュージックなんかとくにそうだよね。基本サンプリングで作るから、誰の声を使ったっていいわけだし。自分達も日常的にそういう音楽を聴いているし、だったら自分達もいろんなヴォーカルを取り入れてみようぜっていうさ。いろんな音が描けたほうが面白いし。たとえばストロークスの音が5色だとしたら、うちのバンドの音は24色くらいあったらいいなと(笑)」


——ちなみに、いまってチックのメンバーは何人なんですか。


ニック「現状、ステージでは6人かな。ただ、ヴォーカルがイギリスで活動するときと、アメリカで活動するときの2手に分かれてて、だから7人になるのかな。ただ、今、ステージに立ってるのは6人だよ」


——感覚としては、固定された「バンド」というよりも、もっと自由なコレクティヴな感じに近い?


ニック「まあ、そんな感じだよ。一応、オリジナル・メンバーが3人残ってるんで。でも、いつ誰が出たり入ったりしてもおかしくないし、すごくフレキシブルにやってる。オリジナル・メンバーを中心にファミリーみたいな感じでやってるね」


——今回、メインのプロデューサーを務めるパトリック・フォードの他にジョアキンが一曲手がけていますね。これはどういう経緯で?


ニック「昔から好きなアーティストができると、その人と一緒にスタジオに入って間近で仕事ぶりを見て、勉強したいって気持ちがあるんで。あの曲(“NRGQ”)もパトリックと作ってたら全然違うものになってただろうし、これも作品により多くの色を取り入れるっていう発想から来ているから、新しいサウンドなり感覚に触れてみたかったんだ」


——たとえば最近のポップ・ミュージックの世界では、マックス・マーティン(テイラー・スウィフト、アリアナ・グランデ、ケイティー・ペリーetc)のようなプロデューサーに代表される分業制のソングライティングが多く見られますよね?


ニック「バンドのメンバー全員ってわけじゃないけど、とりあえずラファエル(B)と自分は(マックス・マーティンが)好きで(笑)。そもそも、ポップ・ミュージック自体がダメっていうメンバーもいるから(笑)。ただ、ラファエルと自分は好きだし、自分達の手法とも近い気がするんだよね。インストゥルメンタル・パートとか、あるパートを作ったら、それをみんなに送って、みんながそれにアイデアを足してまた返してきて、そのうちの誰かが歌った1フレーズのメロディが気に入って採用して、その人の名前を曲のクレジットに入れるってことをしてるし。だから、自分達ももともとそんな感じなんだよね。インストゥルメンタルって、聴く人によってまるっきり解釈が違ってくるじゃないか。マックス・マーティンのやり方って、モータウンとかあの時代の手法に近いのかもね。アリアナ・グランデとかテイラー・スウィストのアルバムなんて、ここ10年での最高傑作だと思うしさ」


——そうしたメインストリームのポップ・ミュージックから学ぶことも多いですか。


ニック「もちろん。ヒップホップが中心だけど、ポップ・ミュージックも聴いてるよ。マックス・マーティン関連なんかとくに好きだし」


——ヒップホップではどのへんが刺激的ですか。


ニック「ミーゴスとか、あの最新作(『カルチャー』)マジで最高だよね! あとはドレイクとか、フィーチャーとか、サグドッグとか、もちろんケンドリックも。家のキッチンではいつもヒップホップのラジオを聴いてるから、どうしても耳に入ってくるし、しかもニューヨークに住んでるから、生活の中に普通にヒップホップが溶け込んでるんだよね。メインストリームのヒップホップも聴いてるけど、アンダーグラウンドのも大好きだし、アトランタ周辺のダーティな感じのやつとか、クラウドトラップとかよく聴いてる。とりあえず、完成度が高ければいいんだよ。どんなに実験的だろうが12歳のお子様向けのポップだろうが、質が良くて完成度の高い音楽ならいいんだよ」












——ところで、このあいだビーク/ポーティスヘッドのジェフ・バーロウにインタビューする機会があったんですね。そこでジェフが、この前の〈レディング・フェスティヴァル〉を観ていた感想として、「この先、何万人という観客の前でギター・バンドがプレイすることは増々難しくなっていくんじゃないか」みたいなことを話していて。


ニック「たしかに。ただ、その時代で一番イケてる音楽を決めるのは若者世代だから。若者にとって間口が広くなったときに爆発的に人気が出るわけで、たとえばパンクが登場したときなんかがまさにそうだったよね。楽器が弾けなくたってアイディアだけでバンドができたわけで、そこに大勢の若者が飛びついたし、自分でもバンドを始めようって気になったわけだよね。それが今はラップトップ一台で音楽を作るのが一番手っ取り早い方法なんだよ。わざわざドラムやギターを弾ける友達を探さなくたって、部屋に友達を呼んで曲を作れちゃうんだから。それが今の若者が音楽を始める最初のきっかけになってるんだろうね。だから、ロックが死んだとは思わないけど、ただ、今は若干おとなしめではあるよね。それにはちゃんとそれなりに理由があるんだろうし。いまは少し休んでる状態であって、少し様子を見守っていく必要があるんじゃないかな。最近のロック・バンドって、どこからどう聴いても最終的にはやっぱり“ロック”だし、それがヒップホップの場合、『え、このビートってどうなってんの!?』っていう、そういう新鮮な面白さがあるしさ」


——ええ。


ニック「あと、やっぱり若者世代は、今の自分達の時代の音楽を求めてるわけじゃないか。そういう意味で、ヒップホップのトラップなんかはまさに今の若者世代の音楽なわけでさ。90年代のロックはどうしても今の若者の親世代の音楽というか、父親とか母親の聴いてた音楽っていうイメージが強いんじゃないかな。それに比べると、今のヒップホップはまさに今の若者の音楽だよね。まあ、他にもいろんな理由があるんだろうけど、ただ、音楽は時代と共に進化していくものだからね。今後、ストロークスとニルヴァーナを足して2で割ったみたいなバンドがあらわれるかもしれないし。実際、新しくて面白いロック・バンドはたくさん出てきてるけど、今の若者にとってはコンピューターで音楽を作るのが手っ取り早いんだろうね。音楽っていうのは、身近で手軽に始められるものでなくちゃ」


——実際、最近のロック・バンドを聴いて刺激を受けることもある?


ニック「パーケイ・コーツとか好きだね。あと、最近出てきたばっかりのバンドで、名前はど忘れしたけど、フィラデルフィア出身で、めちゃくちゃロー・ファイで、ほとんどヒップホップなんだけど、最高にロックなんだよね……あ、シア・マグだ!」


——最高ですよね。


ニック「めっちゃロックでさ! やったれー!!!!っていう感じ。あとパフューム・ジーニアスのアルバムも好きだし。っていうか、あれはロックじゃないんだけど、でも別の意味でロックだよね」


——ボブ・ディランの有名な言葉で「今の時代に何が起きているのか知りたければ、音楽を聴く必要がある」というのがありますよね。仮にもし同じことが今回の『シェイク・ザ・シャダー』にも当てはまるとしたら、何と答えますか。


ニック「さっきレコーディング前に1週間クラブを借り切って演奏したって言ったけど、ちょうど大統領選の時期で、トランプが当選した日にも演奏してたんだ。曲はもう事前に書き上げてたから、そういう意味では必ずしも時代を象徴してないかもしれない。実際、トランプが当選する前にはみんなが完全なジョークだと思ってたわけじゃないか。自分達もその時点ではまだそんなに危機感を抱いてなかったってことなわけだよ。それが今ではすっかり事情が違ってしまって、毎週のように信じられないことが現実になっている。今の時代を反映するアートが登場するとしたら、来年以降からじゃないかな。実際、トランプが大統領になるまでは、誰もそこまで危機的な状況にあるとは思ってなかったわけだから。だから、今の時点ですでに時代に追いついていないというか、アルバムを作ってるときはまさかこんなことになるとは思ってなかったからね。今回のアルバムにも世の中に対する恐怖とか危機感とか不安が反映されてるけど、いま自分達が直面している不安や危機感のほうがはるかにとんでもないことになってるから」





photography Shuya Nakano
interview Junnosuke Amai
edit Ryoko Kuwahara





!!!(Chk Chk Chk)
『AShake The Shudder』
国内盤CD:¥2,200+税
国内盤2CD+Tシャツセット:¥5,500+税
国内盤特典:ボーナス・トラック追加収録 / 解説書・歌詞対訳封入

D
beatkart:http://shop.beatink.com/shopdetail/000000002157
amazon:http://amzn.asia/1pkC7yM
tower records: http://tower.jp/item/4478117/Shake-The-Shudder
HMV: http://bit.ly/2rxTkvm


DIGITAL DOWNLOAD
iTunes Store:http://apple.co/2o3PE2A


商品詳細はこちら:
http://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Chk-Chk-Chk/BRC-545


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http://www.neol.jp/culture/

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