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Interview with MOUNT KIMBIE about『Love What Survives』

NeoL / 2017年11月17日 15時49分

Interview with MOUNT KIMBIE about『Love What Survives』




4年ぶりのニュー・アルバム『ラブ・ホワット・サバイブス』をリリースしたマウント・キンビーが、朝霧Jamへの出演を含むジャパン・ツアーを開催。東京公演ではサポート・アクトにヤイエルを迎えて、バンド・セットを擁したアグレッシヴな演奏と鋭利なエレクトロニクスが融合したスリリングなパフォーマンスを見せてくれた。ポスト・ダブステップ以降のUKクラブ・シーンを担う中心的存在と目されるマウント・キンビーだが、今回の『ラブ・ホワット・サバイブス』にはジェイムス・ブレイクら盟友ミュージシャンがゲストで参加。ジャンルレスでボーダーレスな変化と拡張を遂げたそのサウンドはどのようにして生まれたのか、ドミニク・メイカーとカイ・カンポスに話を聞いた。



——今回のニュー・アルバムですが、とてもオープンでボーダーレスという印象を受けました。ポスト・ダブステップ/ベース・ミュージック云々といった文脈や、そもそもどのような背景のアーティストなのかといった先入観がまったく必要ではないと思えるほどに。


カイ「アルバムのコンセプトとかって、自分で選べるものじゃない気がするんだよ。ただもうぶっつけ本番で、何が出てくるのか試すしかないみたいな。後になってから、本当はもっとこういう感じにしたかったのにって思うことも山ほど出てくるけど、そのときの自分にはどうすることもできないというか、現場ではただ流れに従っていくしかないみたいなとこがあるからね。ただ、自分達は音楽の作り手であると同時にファンでもあるわけで。自分が好きな音楽が自然に自分の作る音楽に影響してきたり、その逆もあるだろうし……そこは自分でコントロールできるものじゃないんだよ。時々、そのへんをきちんと自分でコントロールできるようになったらいいのにと思うこともあるけど、ただ、正しい流れに乗っかっているときこそ、抗えないものなんだよ」


——今回の制作は大変でしたか。それとも、現場での勢いに任せてスムーズに進んだ感じ?


ドミニク「出だしが大変だったね。前回のツアーが1年くらい続いて、そこから日常のペースを取り戻すのに時間がかかったし。だから結局、トータルで3年くらいかけて作ってることになるのかな。実際に本格的にエンジンがかかったのは最後の半年ぐらいになってからだよね。そこからいろんなものがバタバタと形になり出したというか」


——今回のレコーディングにあたっては、事前にふたりの間での話し合いだったり、何かしらシェアするようなものがありましたか。


ドミニク「言葉にこそしてないけど、お互いに共有し合ってる方向性のようなものがあって……ただ、バンドのもともとの性質として、何かしらの制約を設けるのが好きで。その一環として、一番初期にあったのは、アルバムまるごと同じドラム・パターンを使うってこと。それは最後まである程度貫き通せたんじゃないかな。あとは、このふたりでまた一緒に音楽を作ることに対して心から興奮して夢中になれるように、そのリズムを取り戻すのに時間がかかったんだよね」



——今作のプレス・リリースには、「これまで自分達の成功の基盤だったものをすべて払拭することから始まった」というカイのコメントもありましたね。


ドミニク「まあ、自然にそういう時期に来てたんだろうね。プライベートでもいろいろ変化があったりして。リセットというよりも、リフレッシュみたいな感じだよね。ベースになる環境が変わったみたいな。結局本質的な音楽的な部分については、そんなに変わってないし。昔の曲に関しては、前回のアルバムのツアーでさんざんやり尽くした感があったから、とにかく今までとは違うことがやりたいという気持ちで、また自分達のやってる音楽に対して興奮できるようになりたかったんだ」












——今回の制作にはアディショナル・プレイヤーとして5人ほど参加していて、レコーディングの担当者も複数クレジットされています。クリエイティヴな部分におけるふたりの関係性や、マウント・キンビーとしての組織の在り方みたいなところにも変化があったのではないでしょうか。


カイ「どうだろう? 今回、レコーディング前にライヴでプレイしてた曲が何曲かあって、その人達が関わってたりするんだけど、その曲にとって一番ベストな形で作品にしたかった。他のミュージシャンが入ったことで得たものだったり、新たに生まれたアイデアをそのままレコーディングのほうに反映させようというか。誰がどう関わってるかよりも、最終的にどういう作品になるかってことのほうが重要だからね。しかも今回、ヴォーカルだったりホーンだったり、自分達だけではカバーできない領域を他のミュージシャンに担当してもらうことで、新たな世界が開けた感じがあったし」


——曲作りのアプローチも変化した?


カイ「そうだね。どのミュージシャンもそうだと思うんだけど、同じことを繰り返すのはやっぱりイヤだ。ただ、アルバムを作るって、一応作品としての体裁を整えて、CDとして出して、みんなに聴いてもらえるように宣伝してというプロセスを前提にした上でのことなんで、そこにはリスナーとの関係が確実にあるわけで、リスナーに対してある種のコミットメントを果たさなくちゃいけない」


——ええ。


カイ「リスナーから自分達が何を求められてるのか理解した上で、一定の期待値に応えるというか、そもそもこのバンドに興味を持ってもらったポイントは押さえておかないと。でもそれはバンドのイメージとか作品を通じて自然に現れてくるようなものだと思うし、ある種のストーリーなりキャラクターみたいなものに自分達が乗っかってるみたいな。要するに、リスナーに敬意を払うってことだよね。この程度やってれば満足だろ?っていう上から目線の態度で接するんじゃなくて、毎回、今の自分達をぶつけて、さらに手を変え品を変え楽しませていくっていう」


——たとえばポップ・ミュージックの世界では、いまは一曲に何人ものソングライターやプロデューサーが参加し、アルバム全体ではそのクレジットが数十人に及ぶのは当たり前になっていますよね。もちろんマウント・キンビーの場合はそこまでではないですが、初期に比べると曲作りの環境はオープンなものへと変化してきたという実感がありますか。


カイ「そうだね、そういうアプローチを自分達のサウンドにも採用してるし、そのほうが自分達にとっても面白いからね。ただ、最近のメジャーなポップ・ミュージックって、あまりにも関わってる人数が多すぎて、逆に収集がつかなくなってるんじゃないかな。15人のキッズを同じホテルの一室に集めてリアーナのためにビートを作らせたりとか、継ぎ接ぎだらけのフランケンシュタインみたいで全然イケてないし(笑)。だから、ただ闇雲に片っ端からいろんなアプローチを試していけばいいってもんじゃない。全体のヴィジョンが見えてないとね」



——いまのマウント・キンビーって、デュオなのか、バンドなのか、それともコレクティヴに近いのか、どの感覚がいちばんしっくりきますか。


ドミニク「いまのところバンドかな……いや、どうだろう、わかんなくなってきた(笑)。参加ミュージシャンが増えるってことは、それだけ使える道具も増えるわけで、サウンドも面白くなるよね。外からミュージシャンを呼んでやるのにもだいぶ馴れたし、それなりに経験も積んでるから。実際に、生のサックスやトロンボーン奏者を呼んで演奏するほうが、サンプリングで作るよりもはるかに厚みがある音になるし」









——今回ゲストで参加しているジェイムス・ブレイクやミカチュー、キング・クルールといったミュージシャンたちは、曲作りの段階から関わっているんですか。


ドミニク「最初の曲作りの段階から関わってもらってるし、それぞれのアーティストの個性がモロに曲作りに反映されている。もともと、やたらとフィーチャリングしまくるのってそんなに好きじゃないんだ。音源だけ渡してここに歌を入れてっていうんじゃなくて、一緒にスタジオに入って直接コミュニケーションしながら曲を作ってる」


カイ「まあ、関わってるミュージシャンもそれぞれカラーが違うし、出方もいろいろなんだけど、製造元は一緒というか、自分達と一緒にスタジオに入って作るっていう意味で、ほぼ同じ条件のもとに作られてるんでね。それがバラバラの要素をひとつに繋ぐ鍵になってると思うけど」


——いま挙げた3人のなかでいちばん作業が難しかったのは?


カイ「いや、それぞれ違った意味で難しかったよね。今回参加してくれてるミュージシャンは、みんなアーティストとして自分なりのスタイルを確立してるわけで、人によって得意分野も苦手分野も違うし、それを尊重した上で共同作業を進めていかなくちゃならなかった。どのアーティストも自分の得意分野を活かしつつも、この組み合わせだからこそ、普段は行けない領域に一歩踏み出せたっていうような新たな面を見せてくれたと思う」


ドミニク「そう。そこをお互いにどうやって摺り合わせていくかってことだよね。それぞれ自分なりのアプローチやスタイルがあって、求めてるものも違ってたわけだし。最終的にはどの人ともすごくスムーズに作業できたと思うけどね」


——ちなみに、ミカチューとのコラボレーションはどのような経緯で実現したんですか。


カイ「去年頃からちょくちょく顔を合わせてたんだ。ライヴで偶然会ったり……まあ狭い世界なんで、友達の友達繋がりとかで、前から一緒にやりたいという話はお互いしてたんだよね。そしたらちょうど同じ時期に同じ場所にいることがわかった。すごくラッキーだったよ。こっちのスタジオまで来てもらってさ。まだ着想段階のアイデアを4つか5つ聴いてもらって、そこでピックアップされたのが“Marilyn”に繋がってるんだけど、すごく気に入ってくれて、実際にその場で音に合わせて歌ってくれたりしてね。ものの2、3時間くらいで雛形ができたっていう。彼女がその場で歌詞を書きたいってことになったけど、いまどき誰もペンなんて持ってないから紙とペンを探すのに20分くらいかかったり(笑)」


———そのミカチューとの“Marilyn”はトロピカルなヤング・マーブル・ジャイアンツを思わせるところがあるし、キング・クルールが歌う“Blue Train Lines”はまるでスーサイドのようでもある。仮に、今作のリファレンスを集めたプレイリストを作成するとしたら、どんな曲が入りそうですか。


ドミニク「キング・クルールとミカチューの曲は確実に入るだろうね。それに、ご指摘の通りスーサイドの曲も入るだろうし。あとはアーサー・ラッセルとか、ロバート・ワイアットも。他には、ディーン・ブラントとか……あの周辺の曲はどれが入ってもおかしくないだろうね。いま言った音がどれも今回のアルバムにいろんな形で反映されてると思うよ」


——カイはどうですか。


カイ「実は今回、スポティファイでスタジオ・プレイリストって形で発表してるんだよね。すごく多彩で ディープな内容になってるんだけど……ソウルとかジミー・トーマスとか」


ドミニク「今回、ソウル・ミュージックが重要な要素の1つだよね。あのオルガンの音とか。オルガンにドラムマシーンの音を組み込んで。プリセットでドラムマシーンの再生ボタンを押すと、ドラムマシーンで作った音がオルガンで再生されるという。それが今回うちのバンドとソウルを繋ぐ接点ってことになるんだろうね」


カイ「そう、スライ・ストーンのアルバムから面白いパターンを拾ってきたりして。それとさっき名前が出たスーサイドも、自分達の中では繋がってたりして。まあ、スライ・ストーンとスーサイドを自分達なりにミックスした中間点がちょうどこのサウンドってことで」


——ドミニクは去年、LAに移住したそうですけど、そこから新たな人脈が開けたりとかは?


ドミニク「基本的にはジェイムス(・ブレイク)とつるんでたね。ちょうど同じ時期にLAに移住したんで。ジェームスが一緒だったってことは今回のアルバムにも大きく影響してるよ。ただ、基本的にあんまり出歩かないんで、そんなに人と会ったりしてない」


カイ「ジェイZに会ったって言ってなかったっけ?」


——ジェイムス・ブレイクと一緒にジェイZの曲(『4:44』収録の“MaNyfaCedGod”)をプロデュースしたんですよね。


ドミニク「そうそう(笑)。あと、ジェムスと一緒にラップを作ったりとかよくしてたな。ジェイムスはまた自分とは違うサークルの仲間がたくさんいて、その流れで有名人とかにもちょくちょく会ってるみたいだけど。ジェイムスと共演したいってアーティストは山ほどいるだろうに、わざわざ自分のために時間を割いてくれてるって有り難いことだよね。ジェイムスはいろんな人達と一緒にスタジオに入ったり何だで常に忙しいからね」


——ジェイムス・ブレイクと言えば、去年はビヨンセのアルバムへの参加も話題になりましたよね。そうしたビッグ・アーティストとのコラボレーションにも興味があったりしますか。


ドミニク「そうだね。もし何かの縁があって、自分達がどうしてもやりたいって思えるような話があれば」


——対して、カイはいまもロンドンに活動の拠点を置いているわけですが、最近のイギリスのクラブ・シーン/ダンス・ミュージックについてはどう見ていますか。


カイ「うーん……どうだろう。自分達がロンドンに移り住んだのは2007年だけど、当時のサウス・ロンドンの音楽シーンはたしかに盛り上がってて、実際ロンドンの街の中を歩いててもそのエネルギーが伝わってきたし、いま一番新しくて面白いサウンドというのがそのままシーンに反映されてて、そこが刺激的だったんだよね。当時は完全にサウンドや音楽が主体で、どれだけ新しくて斬新な音が作れるかっていう、それがシーンの原動力になっていた。そのあとシーンが爆発的にデカくなって、世界規模で広がっていって……だから、絶対的なリスナー数は増えたかもしれないけど、初めてそういう音楽に出会った人が増えたっていうだけで、サウンド的にはずっと同じ場所に留まっているような気がしてね」


——なるほど。


カイ「シーンとしてはデカくなったかもしれないけど、内容的にはそんなに成長してないみたいな。新しいリスナーとシーンだけがどんどん広がってるだけで。それでちょっと興味が薄れちゃったみたいなとこはあるよね。自分にとっては昔を振り返るみたいな感じで。ただまあ、自分達ももともとUKのダンス・ミュージックの代表みたいな感じで、ガッツリとシーンに関わってたわけじゃないからね。もしかして音楽に限らず、ローカル・シーンみたいなものが失われてることも、シーンとして成熟していかない理由のひとつなのかもしれないけど、自分達はもともと何かのローカル・シーンみたいなものに属してやってきたわけじゃないからね」


——たとえばスケプタやストームジーに代表されるように、イギリスではグライムがいま再び盛り上がっているような印象もありますけど。


ドミニク「正直自分はそんなに聴いてないんだよね。ただ話には聞いてるって感じで」


カイ「グライムって、一応ロンドンの音ってことになるけど、最初に出てきたときロンドンではそこまで浸透はしなかったよね。一部のクラブでグライムのイベントが開かれたりって程度で、メインストリームまでは浸透してなかった。それがいったんアメリカに行って一気に火がついた。だから、最近のグライムとか正直、初期のUKグライムをアメリカ仕様に焼き直しただけのような気がしちゃって。たしかにグライムはUK版モダン・ポップみたいな感じではあるんだろうけど、一昔前の勢いみたいなものは感じないよね」


——ところで、マウント・キンビーの初期の作品においては、フィールド・レコーディングスやミュージック・コンクレート的な手法も特徴的でしたよね。たとえばブランク・ドッグや〈PAN〉のリー・ギャンブル、あるいはフローティング・ポインツやニコラス・ジャーもそうですが、そうしたアプローチを意欲的に取り入れていく流れが現在もアンダーグラウンドなエレクトロニック・ミュージックでは顕著だったりするわけですけど。


カイ「そうだね。けど、基本的にはむしろ、昔ながらのアプローチで普通に曲を書くほうに興味があるよ。作品として聴くぶんには刺激的だけどね。メレディス・モンクの作品とか、厳密にはミュージック・コンクレートとは言わないのかもしれないけど、あの斬新な発想とか自由な精神性みたいなものは確実に自分達の中にも受け継がれてると思うし、それをベースにより広く受けやすいタイプの表現にしてるというか。ミュージック・コンクレート的な発想も音楽史の中のイベントとしては面白いと思うんだけど、可能性が無限に開かれてるからこそ、逆にある時点を過ぎるとかえってつまんなくなっちゃう気がして」


——自由すぎるとかえって面白くない?


カイ「そう。ある種の制約があって、その限られた中で何とか自分なりの表現を形にしていくからこそ、面白いというか……そこに人間味みたいなものを感じるんだよね」


——ちなみに、そもそもフィールド・レコーディングスやミュージック・コンクレートのどんなところに興味を引かれたんでしょうか。


カイ「日常生活の中にある音を常に録音して、そこにある種のパターンや面白いリズムに繋がる可能性を発見して、それを自分の作品に反映させていくっていう。特別な機材やらバンドや、豪華なスタジオを使わずに音作りに挑戦する姿勢とか、既存の枠組みに捕われていない自由なところとかね」


ドミニク「ミカチューの初期の作品とか、まさにそこが斬新で面白かったわけでさ。まだ“ノイズ”として形になる前のノイズを利用した手法で、機材そのものの中に音楽を見出だしていく、みたいな。普通にそこらへんにある、それこそドライヤーとか掃除機を自前の楽器代わりに使ってね」


カイ「結局、どの道具をどうやって使うのかなんてルールはないわけだからね。その新しいアプローチが新しい発想に繋がることだってあるかもしれないし。ギターひとつを取っても、普通に弾く以外にも、いろんな弾き方が考えられるわけだし、それによって新たな可能性が開けることだってあるからね」


interview Junnosuke Amai





MOUNT KIMBIE
『Love What Survives』
発売中
国内盤特典:ボーナストラック追加収録/解説・歌詞対訳付き


beatkart: http://shop.beatink.com/shopdetail/000000002180
amazon: http://amzn.asia/hYzlx5f
iTunes Store: http://apple.co/2uiusNi
Apple Music: http://apple.co/2t3YEeV
Spotify: http://spoti.fi/2uiwx


アルバム詳細はこちら:
http://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Mount-Kimbie/BRC-553



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http://www.neol.jp/culture/

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