90s Memories : Generation X Movies
NeoL / 2018年2月28日 12時0分
今も数えきれない新作映画が誕生する中、最近では爆音上映や『午前十時の映画祭』などで過去作品が大きなシネコンにかかる機会も多くなっている。デジタルリマスタリング技術の向上もさることながら、映画が時代を振り返るためのツールとしても優秀である点も一つの要因だ。そこに詰まっている空気感や息づかいが、当時は当たり前で今はそうではない存在を思い出させて我々をハッとさせる。今回は、様々なテーマごとに沿った映画で90年代という時代を振り返ってみよう。
第一回「ジェネレーションX映画」
90年代はジェネレーションXと呼ばれる世代が青春時代を過ごした。彼らはヒッピー運動の衰退による「しらけムード」の中、パソコンやゲームの台頭と共にティーンを過ごし就職難に遭遇した層である。個人主義と内向性を秘めて政治や社会に対し冷めた傾向と評されることが多く、これまでの世代の特徴とは一線を画し新しい文化を築いた。「ジェネレーションX映画」とは、このような登場人物(10代後半〜20半ばまで)による群像劇が主であり、また個人主義や内向性を重視するためサウンドトラックも時代性は関係無く主人公の嗜好やバックグラウンドを表す曲が多く使用されたのも大きな特色だ。
まず初めに紹介する作品は、1994年公開『クラークス』。
うだつの上がらないコンビニバイト店員の「とにかくついてない一日」を全編白黒で描く日常劇だ。超低予算ながらウェルメイドな脚本で、コンビニの店内と言うミニマルな世界の中で繰り広げられる洒落ているが下らない会話が小気味良く楽しい。エンドロールにハルハートリー、スパイクリー、ジムジャームッシュがスペシャルサンクスとしてクレジットされていて90年代のオイシいところを抽出されたインディペンデント映画だということが分かる。何気なく漂う空気感、会話からも「あの頃」が感じられる体感型青春映画。
次に紹介するのは、1992年公開『シングルス』。
グランジロックに湧く'90初頭の文化の出発点、シアトルを舞台にしたロマンティック群像コメディ。この時代以前の甘くキラキラした恋愛映画とハッキリ区切りが着いた事が見て取れる、あくまで乾いた会話で進行する展開やヘヴィなグランジファッション、音楽のアクセントも楽しい。またまだフレッシュなMディロンやBフォンダは勿論パールジャムの面々など登場する面子でも目を見張る。当時のシアトルならではの、ファッショナブルでライトな物腰ながらもニューウェーブを起こすエネルギーに満ちあふれたグルーヴが生き生きと感じられる。
最後に紹介するのは、1999年公開『200本のたばこ』。
1999年公開作品であり、また大晦日の一夜を描いた作品とあって時代が終わり行く焦燥感と新時代への期待感が入り交じったあの頃の忙しなくも刹那的な空気をコミカルに詰め込んだNY群像劇。舞台は80年代で登場するジェネレーションX達は輪をかけて節操なくハチャメチャに大騒ぎするが公開年を考えると失ったこのエネルギーに対する羨望の眼差しも感じられ、90'sが振り返る80'sのミレニアム的視点というのも転換期を感じられて面白い。アフレック兄弟はじめKハドソン、Cラヴ、Cリッチ、そしてEコステロと90年代を象徴するキャストで構成されている。
前世代の物質的な豊かさを重視する価値観への不安や焦燥、憤りを表現したジェネレーションXカルチャーは先述した『200本のたばこ』が公開された90年代後期から転換期を迎え次の世代へバトンを渡す。しかし10年代も半ばを過ぎ再び、商業的に大きな影響力を持つ元ジェネレーションX当該者たちとともに、「マテリアルよりも繋がりや影響力」を重視するインターネットネイティブ世代によって再び支持を得る事になる。しかし、「個人主義」「内向性」は当時ともはや同義ではなく、人々の多様化によってより複雑化を増している。また、90sに群発したインディペンデント映画の手法は、カメラや編集ソフトがiPhone1台に内包され誰にでも映画が作れる様になった現在大きな影響力をもつフォーマットとして広く活用されるなど新たな形となって今も息づいている。
text Shiki Sugawara
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